小小説 第9話 石段の文句

 ある山の奥に1つの大きな石が静かに眠っていた。ある日、一人の若い僧侶が薪を切りに山に登った。
帰る途中、彼は何気なくその石に目をとめ、
「なかなか良い石のようだ。
寺へ持ち帰ったら何かの役にたつかもしれない」
と思った。
 しかし石は重く大きいため、何度試してもびくともしなかった。仕方がないので、僧侶はノミと槌とでその石を2つに砕き、1つずつ寺へ運んだ。
 寺の住職は運ばれたその石を見ると石職人を呼んで、1つで石仏を、もう一つで石段をつくらせた。
3カ月が経ち、それら2つは出来上がった。
 石仏は雄大な仏堂の中の華やかな仏壇の上に置かれた。
石職人の腕がいいため、石仏の姿や目は生き生きとまるで命があるように出来上がった。
さらに仏壇は金メッキが施され、その立派な様子は言葉に言い表せないほどだった。
ただでさえ有名なお寺は更に有名になった。
 毎日付近から大勢の参拝客が訪れ、寺はとても賑わった。
周りの人に押されたり足を踏まれたりしても気にせずに、家内安全や豊作、学業成就などを祈願して静かに手を合わせて祈って行った。
それだけでなく、仏壇の前は蜜柑やりんごや菓子など、いろいろな供物が毎日たくさん置かれていった。
 その一方で、石段の方は当然ながら仏堂の前に階段として設置されて、毎日人々に石仏を参拝する人に踏まれることとなった。
時折、悪い天気の日は、訪れて来る参拝客は平素より少ないけれど、冷たい雨で濡れるのも、感じがいいとは言えない。
また掃除の時には、石仏は僧侶らにきれいな雑巾で何度もじっくり拭かれ、まるでそいつは豆腐で作られたように丁寧に扱われた。
逆に、石段を清掃する時には、荒く彼の体の上で大きな竹帚を振り回しがちだ。
 次第に石段は不満になってきた。
「君は何様? 何故全ての幸運が君に訪れるのか。
この世界は本当に不公平だ」
と石段は石仏に文句ばかり言った。
「私たちはもともと一体だった。
出身も質量も成分もいずれも同じなのに、2人の運命は雲泥の差だなんて!
人々は毎日私を踏みながら、お高くとまる君を参拝するとはけしからん! なぜか、答えてみろ」
 石段の文句を聞き、石仏は目を閉じて口を開く。
「なぜかというと、君は石材から石段になる前にただ何度か槌とノミとの鍛錬を受けただけだが、私は石材から石仏になる間に幾千幾万にも達する鍛錬を我慢したからだ。
出身であろうと、質量であろうと、成分であろうと、平凡でも構わない。
数え切れないほど厳しい鍛錬を我慢し、七転び八起きしさえすれば、早かれ遅かれ立身出世できるはずだ。
覚えろ、天は石の上に石を造らず、石の下に石を造らず」
 その話を聞いた石段は言葉をぐっと詰まらせた。

~上海ジャピオン3月13日発行号より

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