小小説 第21話 人間五十年

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「人間五十年、下天の内を比ぶれば夢の如くなり、一度生を享け、滅せぬもののあるべきか」
 これは織田信長が最も好きな歌だった。
信長は安土桃山時代で一番の奇人だったと言っても言いすぎではないだろう。
1534年に、ひとつの危機が押し寄せていた小さな国で生まれた。
 1560年に桶狭間で今川義元を殺した。
 1573年に室町幕府の十三代目将軍である足利義昭を追放して、200年余りの室町時代を終わらせた。
 1575年に長篠の戦で徳川家康と連合して、武田勝頼の軍隊を打ち倒した。
 こうして、日本を全て征服する野望に次第に近付いてきた。
残念なことに、「天下布武」の目標まで、あと一歩の距離を残すばかりのところで挫折してしまった。
 1582年に、「本能寺の変」は織田信長の人生の最終章だった。
彼は明智光秀という部下に反逆された。
本能寺に包囲されて、どうしようもなくなり、彼は自ら火をつけて自害した。
 信長が死んだあと、明智光秀は自分が天下を奪ったと思っていたが、やがて「山崎天王山の戦い」で、豊臣秀吉に打ち倒されて、命を失った。
後世の人々はこれを「三日天下」といって、明智光秀のような人に対し、皮肉を込めてこう言うようになったという。
 人生とは何か。時間か。
そう言ってもいいと思う。
 人々はたびたび「時間は流れる」と言う。
 しかし、こうも思う。
実は、時間は静止しており、流れているのは私たち自身ではないのか。
 人生の長さはいったいどのくらいなのか。
 人間の寿命が75歳であれば、2万7394日にすぎない。
しかし、人は毎日8時間ぐらい寝ている。すると、人生の3分の1は布団の上で過ごすことになる。
つまり、25年の睡眠を除くと、人間の人生には50年残る。
そう考えると、思わず恐ろしくなる。
人々が「光陰矢の如し」と言ったが、むしろ「人生矢の如し」と言えば、もっと適切なのかもしれない。
 この世に時間ほど公正なものはない。
絶対に誰かの1日がほかの人より長いことはないし、短いこともない。
区別は使い方の違いだ。
 時間を大切にするのは命を大切にすることだ。
 自分の時間を浪費するのは自殺することと同じだ。
 ほかの人の時間を浪費するのは、その人を謀殺するのに等しい。
 では、はたしてどんな使い方が正しいのだろうか。
 「今日できることを明日に延ばすな」
 私たちは将来を予測できないし、過去も変えられない。
しかし、現在をとらえることはできる。

作者:ちょうてつ

絵:もんもん

~上海ジャピオン6月12日号より

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