小小説 最終話 小さなものの大きな知恵

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 午前11時半、授業が終わった。
教室に残っていたのは私1人だけ。
「じゃ、恒例の班長掃除を始めましょう」とつぶやきながら、私は黒板ふきを手にした。
 班には掃除当番制度があるが、時々欠席するクラスメイトがいるため順調に回らず、私の番になりがちだ。
いつしか私は「班長」から「番長」になっていた。
 片手に黒板ふきを持ち、上下左右に往復し拭く。
チョークの粉を吸い込まないよう、もう一方の手でぴったりと口を覆った。
晩春の昼、太陽の光は窓を通じて、教室の中に照り入った。
白い粉が空気の中をひらひらと舞い上がっているのが、はっきりと見えた。
 黒板がきれいになった後、黒板ふきに付いた汚れを落とすのも面倒くさい。
直接水道で洗ってはいけない。
そうすれば、湿っぽくなって、翌日まで使えなくなるからだ。
仕方がないので、教室から出て、周りに人がいないのを見計らって、手をごみばこの中へ伸ばし、軽く叩くしかなかった。
教室に戻り、きれいになった黒板ふきを黒板の傍に置き、地面に落ちた3、4本のチョークを拾い上げた。
チョークは全て2、3センチ残っていたが、短すぎて字が書きにくい。
結局、ごみとして捨てるほかない。本当に浪費だ。
 そう思いながら、トイレで手を洗っている間に、ある〝小さなもの〟がちらりと脳裏をかすめた。
 あれは2週間前のことだった。
 日本人の先生が一つ変なものを教室に持ってきた。
よく見ると、プラスチック製の管みたいなものだ。
先生はチョークの先を管の中に入れて、黒板の上で何か書き始めた。
日本のドラマでも何度か見たことがある。
それを使うと、手を汚さないばかりでなく、チョークの残った部分も十分に利用できるようになるそうだ。
構造も簡単で、実に面白く実用的なものだと思う。
残念ながら、呼び方を覚えていない。
 もう一つは、〝電動黒板ふき〟だ。
実は、正しい呼び方はわからない。
原理は掃除機と似ていて、乾電池を入れると、掃除機のように働き始める。
そのおかげで、黒板を擦るとともに、チョークのほこりをすぐ吸い入れるし、使ったあと簡単にふたをあけて、積もったほこりを捨てられるので、水で洗う手間もかからない。
 どちらも環境保護や人間の健康に対する役割が考えられていて、人間らしさをたっぷり持っている発明だと思う。
見た目には、ごくごく小さなものだし、科学技術や量産化の難度という点では、SONYの「AIBO」やHONDAの「ASIMO」などと比べものにならないことは確かだろう。
しかし、それらの小さなものの中には、大きな知恵があると感じている。
 小学校、中学校、高校と黒板に親しんで過ごしてきたが、この2つはこれまで私は見たことがなかった。
小さなものの中にも、感心させるほどの大きな知恵を注入するのが、やはり日本人は上手だ。
 大きな発明だけが賞賛の対象ではない、身の回りの小さなところから、よくなることを始めようと思う。

作者:ちょうてつ

絵:もんもん

~上海ジャピオン6月26日号より

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