考える男マートンと哲学の小部屋(トイレ)~Remi

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びしょ濡れマートン

私は考える男マートン。今日は、日課の哲学散歩で永康路までやって来た。…ん? 急に雨が降ってきたが、あいにく傘はない。ひとまず、向かいのカフェへ避難しよう。

ふーっ。びしょ濡れになってしまった。とりあえずコーヒーを注文して、と。小部屋(トイレ)に行って身だしなみを整えてこよう。

善悪の論争を呼ぶ

木の扉には、バラの模様のステンドグラスがはめ込まれている。レトロな趣が美しい。…レトロなバラか、14世紀のイタリアを舞台にした小説『薔薇の名前』を思い出すな。これは、イタリアの哲学者、ウンベルト・エーコの処女作だ。物語は、修道院で起こった連続殺人事件の謎を追って進む。話の流れに合わせ、当時禁じられた「笑い」が、善か悪かという論争などが盛り込まれ、難解だが骨太な作品として、世界で大ベストセラーとなった。

…なるほど。このバラは、ここに論争を呼ぼうとしている表れだな。つまり、小部屋(トイレ)は人々にとって善か悪か、という論争を引き起こせば、注目が集まり、小部屋(トイレ)の地位向上にもつながるというわけだ。何という深い考え…私も見習わねばな。ありがとう、いい小部屋(トイレ)であった。

~上海ジャピオン2013年7月5日号

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