食道をゆく 第45回 猫耳朶

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マオアールドゥオ
猫耳朶
~浙江省杭州市~

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1杯5元程度と、庶民の財布にやさしい価格で、おやつとしても親しまれる猫耳朶

猫を抱いた12歳の少女
寒さに震える乾隆帝を救う

 「猫耳朶」は、漢字から見ても予想できる通り、中国語で「猫の耳」の意。
だからと言って、猫の耳を料理したわけではなく、小さくコロコロした形が特徴的な麺料理だ。
その形状が猫の耳に似ていることから名付けられたという説が有力だが、
ここでは乾隆帝にまつわる由来を紹介していこう。
 事の発端は、清の時代。
第6代皇帝である乾隆帝が、お忍びで西湖へ行き、旅商人の格好をして、
付き人と2人で小舟に乗って西湖を遊覧することにした。
白髪の老人が船を漕ぎ、彼の孫である12歳の少女が、猫を抱いて一緒に同乗した。

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飛来峰(ひらいほう)には、谷間に沿った洞窟の中に約330体もの石像が残されている

 乾隆帝が美しい湖畔の風景を楽しんでいると、急に天候が崩れだし、雨が降ってきた。
薄着だった乾隆帝は激しい寒さと空腹に襲われたため、老人に何か温かい食べ物はないかと尋ねると、
老人は「小麦粉はあるが、めん棒がない」と答えた。
 すると、少女が「私が作ってあげる」と言い、
小さな手で小麦粉をこね、器用に平べったく丸めて麺を作った。
出来るや否や乾隆帝がそれをほおばると、もちもちした食感が何とも美味で、たちまち身体が温まった。
 感動した乾隆帝が、「この麺は何と言う名前だ?」と尋ねると、もともと名などなかったが、
少女は何も答えないと悪いと思い、抱いていた猫の耳を見て、咄嗟に「猫耳朶」と答えた。
のちに、乾隆帝の正体を知った少女は、「乾隆帝も食べた猫耳朶」と看板を出して湖畔で店を開く。
こうして店の繁盛とともに、全国へと広まっていったのだ。
 一気に冷え込むこの時期。
猫耳朶を食べて身体を温めつつ、冬の西湖を眺めてみよう。

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【アクセス】上海虹橋駅または上海駅から高速列車で杭州まで。
虹橋駅からは約45分、二等席82元~、上海駅からは約1時間10分、二等席98元~

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~上海ジャピオン11月5日号より

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