食道をゆく 第54回 ナン?

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ナン 

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~新疆ウイグル自治区~

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天然の窯で一丁上がり
灼熱の太陽から身を守るため

インド料理のイメージが強い、パンの一種である「ナン」。
しかし、ここ中国でも、新疆ウイグル自治区を中心として、独自のナンを、
はるか昔から現代へと受け継いでいるのだ。
インドの三角形のナンとは異なり、ピザの生地のような丸い形状をしている。
このナンは、中国は西の果て、タクラマカン砂漠で誕生したものだった。

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ふつふつと膨らんだ焼き跡が、食欲を一層増進させる。ネギの入ったものなども

 遥か昔、タクラマカン砂漠のタリム川周辺では、
遊牧民たちが暮らしていた。
彼らは携帯保存食を持って、短い時は10日ほど、
長い時には1年半ほど1カ所の地で暮らし、
水を求めて羊たちを連れ、渡り住んでいた。

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コルラ市の南には、タクラマカン砂漠が広がる

 焼けつくような猛暑に襲われた、ある夏の日。
あまりの暑さに耐えかねて、羊たちを遊牧していた男が、
羊たちを置いて家に帰ってしまった。
すると妻が小麦粉をこねているのを見て、
それを帽子のように頭に載せると、これが何とも涼しい。
男が満を持して置いてきた羊たちを迎えに向かうと、
途中で何やら良い匂いが漂ってきた。
 しかし周りを見ても何もない。不思議に思いながらも歩き続けると、
男は木の根につまづいて転んでしまった。
すると頭に載せていた小麦粉が熱で焼かれていたのだ。一口食べると、
外はカリカリ、中は柔らかくてヤミツキになる。
残りを持ち帰って皆に食べさせると、これまた絶賛の嵐となった。
後にこれを「ナン」と名付け、雨や曇りの日にも食べられるよう、
専用の窯を作り出し、今へと受け継がれるようになったという。
 現地へと赴くには列車だと丸2日もかかってしまうが、
そんな時はナンをかじって、砂漠に思いを馳せてみよう。?

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【アクセス】
上海虹橋空港から空路にてウルムチ地窩堡国際空港まで、
約5時間半、1日1便。ウルムチからコルラやアクスなど、
タクラマカン砂漠のオアシス都市へは、列車でコルラは約12時間、
硬座41元~、アクスは約20時間、硬座70元~など

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~上海ジャピオン2月18日号

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