食道をゆく 第56回 羊肉泡?

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ヤンロウパオモウ
羊肉泡?
~陝西省西安市~

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細かくちぎった「?」が、羊肉スープと絡み合う

飢えた趙匡胤を救った店主
胃袋に浸みわたる優しい味

 手で丸めた小麦粉の生地を、野菜と一緒に汁で煮込んだ日本の郷土料理と言えば、「すいとん」。
その中国版ともいえる料理が、西安名物の「羊肉泡?」だ。
一口飲みこめば、羊肉のだしが効いたスープが胃にしみわたる。
その美味さは、今から1000年ほど前から受け継がれており、誕生のキッカケを作ったのは、
味に負けず劣らずの優しい心を持った、ある精肉店の店主だった――。
 中国で唐が滅亡した後の五代末期、のちに宋の初代皇帝となる趙匡胤(ちょうきょういん)という人物がいた。
実家が貧しかった彼は、今の西安にあたる長安で、浮浪者さながらの生活を送っていた。
ある日、残ったのはとうとう乾いたマントウ2かけらのみとなった。
しかしそれさえも喉につっかえ、飲み込むことができなかった。

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秦の始皇帝陵の一部として、世界遺産にも登録されている兵馬俑

 その様子を見ていた精肉店の店主は、趙匡胤を不憫に思い、店で作っていた羊肉のスープを1杯与えた。
そこで趙匡胤は、スープの中に乾いたマントウを砕いて入れることにした。
すると乾いたマントウはみるみるスープを吸収して柔らかくなり、
身体も温まって、すっかり胃袋が満たされたのだ。
 そして時は経ち、趙匡胤が宋の皇帝となった頃、またその店を訪ねた。
店主も昔を懐かしみ、再び羊肉のスープにマントウを加えたものを作ると、やはり美味い。
その後マントウが「?」という、同じく小麦粉から作ったナンのようなものに改良され、
「羊肉泡?」という名前で受け継がれていったという。
 冬を終え、遠出をしたくなった時には、観光がてら西安へ羊肉泡?を食べに行ってみよう。

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【アクセス】
①上海浦東空港から西安咸陽空港まで、飛行機で約2時間半
②上海駅から西安駅まで空調特別快速で約14時間~、硬座182元~

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~上海ジャピオン3月4日号

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