食道をゆく 第60回 三杯鶏

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サンベイジー
三杯鶏
~江西省吉安市~

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艶のある表面と、3杯の調味料がベースの濃厚な汁が、食欲を促す三杯鶏

祖国への揺ぎ無き忠誠心
英雄に捧げた最後の晩餐

 三杯鶏は、江西省の伝統料理。
調理時に湯水は一切入れず、その代わり、
米酒、豚油、醤油だけをそれぞれ1杯ずつ入れるが故にこう名付けられた。
この3杯の調味料で煮込まれた色艶のある表面と、芳醇な生姜の香りが食欲をそそる。
この三杯鶏は生粋の江西料理であり、料理の起源は、この地に実在した人物と深い関わりがあった――。
 かつて中国は南宋末期、文天祥という軍人がいた。
文天祥は、弱冠20歳にして科挙を首席で合格、やがて宋の臣下として重用された。
その後、元軍が宋へ攻撃し始めた時にも、文天祥は宋軍として2年以上、
元軍に抗戦し続けたが、ついに捕虜として捕えられた。
元朝皇帝のフビライは彼の才能を惜しみ、臣下になるよう求めたが、文天祥は断固としてこれを拒否。
文天祥の存在が元に対する反乱を促すことを知ったフビライはやむなく彼の処刑を決めた。

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「南宋三傑」の1人で、南宋を代表する英雄、
文天祥に関わる品が展示されている文天祥紀念堂

 文天祥が処刑を待っていたある日、77歳の老婆が鶏と酒の入った竹籠を持って彼の牢獄に立ち寄った。
すでに処刑されたと思っていた文天祥を見て感動した老婆は、
いつ処刑されるか分からない文天祥に敬意を表し、
持っていた鶏を切り、それを3杯の米酒が入った壺の中に入れ、火で炙った。
文天祥は、亡国を嘆きながらこれを食べ終え、その後処刑されたという。
それ以来、文天祥の命日にはこの料理を食べることになり、
後に、3杯の米酒が、米酒、豚油、醤油の3杯に変わり、
現在の三杯鶏が生まれ、伝統料理として受け継がれてきたのだ。
 この英雄の熱き想いと、濃厚な味が染み込んだ三杯鶏を、ぜひ本場で味わいたい。

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【アクセス】
①?上海虹橋空港から井岡山空港まで飛行機で約1時間
②?上海南駅から吉安駅まで快速列車で約11時間、2等席130元~ 

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~上海ジャピオン4月22日号

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