民族訪ねて三千里~第24回

独自の建築様式 歌は鯉の卵から
トン族は貴州省南部から南西にかけて居住し、
農業や林業を盛んに行ってきた。
彼らが暮らす山間の村では、
上質の杉が採れるため、
杉を利用した建築物には釘を使わず、
独自の建築方法で建て、集会所として利用する。
杉を採る際には、男たちが山へ入り、
太く真っ直ぐな杉を見つけると斧で根元に切り込みを入れ、
根元から切り倒す。
さらに小枝を落とし、ロープと棒で運び出す。
この時必ず歌われるのが、
伐採の掛け声歌「トゥンマイ・センハオ」。
年配のベテランが音頭を取り、
途中に休憩を入れながら山道を降りていく。
休憩中はキセルで一服入れたり、草笛を吹いたりと、
思い思いに過ごす。
また、「ああ、愛する人に会いたくてたまらない、
もう働く気もなくなってしまったよ」
という歌詞の山歌「バオメイ・ガ・スンヒャン」
を歌うことも。
生活の糧を得る場面にも、音楽が息づいている。

1. 村の中心に高く聳える鼓楼。
トン族のシンボルでもある
瓢箪を模した装飾が施されている
2. トン族の女性。
藍染めの衣服は手工業として盛んに行われている
3. 屋根付きの長い廊下を有する風雨橋。
この橋に因んだ伝説により、
柱には龍の模様が彫り込まれた

トン族には、古くから伝わるこんな神話がある。
その昔、天界の支配者・玉帝が、
トン族が歌も楽器も持たないことを不憫に思い、
河に歌を流すのだった、
トン族の青年たちがその河で水浴びをしていると、
1匹の大きな鯉が泳いできた。
鯉を捉え持ち帰った晩、
青年の1人は鯉の腹に歌の卵が詰まっている夢を見る。
翌朝卵を取り出すと、
玉帝は様々な曲と琵琶も授け、
青年は琵琶を次々と作り、
音楽が彼らの生活に溢れるようになったという。
村の中心には鼓楼を立て、
入口には橋を配する。
村に客が訪れる時には、
村人全員が入口を塞ぎ、歓迎の歌を歌うという。
村を訪れ、歌声に耳を傾ければ、
民族的暮らしの断片を感じ取れる。

~上海ジャピオン12月30日号

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