民族訪ねて三千里~第36回

命の源となる泉
大地を切り刻む河
トンシャン族は、
モンゴル系でありながらイスラムを信仰し、
厳しい戒律を守る。
大きな祭事には、
ラマダーン明けを祝う「開齋節」、
犠牲祭に当たる「古爾邦節」、
ムハンマドの誕生日に行う「聖紀節」がある。
祭りの日は朝からごちそうを用意し、
双管の竹笛「ミミ」による演奏や
「ホアル」と呼ばれる歌、
また踊りなどで盛大に祝う。
そのほか、婚礼の際に「哈利舞」を
男女で踊る風習があったが、
最近ではあまり見られなくなり、
お年寄りのみが振付を覚えているという。
トンシャン族は、
中国少数民族の中で最も識字率が低いとされる。
読み書きができない人が人口の6割にものぼり、
特に女性が多い。
そのため、古来からの歌や伝説、故事、
叙事詩などは全て口承による。

1. 婚礼の舞「哈利舞」を記録した絵図。
近年、失われつつある伝統芸能を
保存する動きも出てきた
2. トンシャン族の子ども。
就学年数は平均で1年半程度である
3. 年々広がっていく黄土高原。
黄河の支流がこの大地を刻むように流れる

この一帯は砂漠が多く、
数少ない泉はオアシスとしての役割を果たしている。
その泉のうちの1つ「五眼泉」にまつわる、
こんな伝説がある。
「その昔、泉の水が干上がって干ばつが続いた。
苦しんだ人々は泉の周囲に集まり、
1人の僧侶に雨乞いの読経をするよう頼んだ。
僧侶が昼夜を問わず泉のそばに座って読経を続けると、
3日目の夜、
泉から1頭の白い山羊が飛び出して来た。
僧侶は頭巾を解いて山羊の角に巻きつけ、
もう一方の手に持ったベルトで山羊を打った。
山羊が苦痛で叫び、跳び上がると、
頭上に黒雲が現れ、雨が降り出した。
以来、人々は干ばつが続くとこの泉に山羊を連れ、
雨乞いをするようになったという」。
この一帯に広がる黄土高原は、
黄河の水を黄色に染める。
黄河によって育まれた文明の地に立ち、
悠久の時を感じよう。

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~上海ジャピオン04月06日号

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