街の気になる商売人

靴のことなら任せろ!
息子は家電修理も
黄浦区のとある団地。
どこからか
「ウィーン」という音が響いて来る。
音の源を辿っていくと、
研磨機で靴を磨く男性の姿があった。
「修鞋」の看板を見て納得、
靴の修理屋だ。
いかにも職人という
真剣な表情で靴底を削っているのは、
この道30年の岳さん。
ちょうど
記者のスニーカーが擦り減っていたので、
修理を頼むと、
「基本的には革靴しか扱わないけど、
靴底ならいいよ。任せな」と
すぐに作業に入ってくれた。
慣れた手つきで靴を研磨機にかけ、
底にゴムを貼り付けると、
再び機械で整え補修完了!
その速さ、何と5分。
履き心地も申し分ない。
今は息子さんが父の仕事を手伝う傍ら、
家電修理も手がけるそうだ。
「あいつは素質がある。
でも最近は彼女とデートばかりだ」と、
師匠としての嘆きを漏らす岳さんであった。

団地の時計修理屋さん
元は時計工場で勤務
団地の昼下がり、
ルーペを装着して、
黙々と作業に打ち込む男性を発見。
「何の修理をしているかって?
見りゃ分かるだろう?
腕時計だよ」と話すのは、
この道一筋20年の張さん。
この団地では、
とても親しまれている職人さんなのだとか。
「今は自営だけど、
昔は時計工場で働いてたんだ。
たくさんのメーカー品を作っていたから、
物を見ただけでどのメーカーか分かるよ」と、
自信満々に答える。
客から
「壊れた、直してくれ」と
説明もなく押し付けられるもあるが、
すぐに原因を見つけて直せるのだという。
「昔から機械いじりが好きで、
よく分解して遊んだよ」と、
張さんは笑顔で言い、
再び修理に没頭し始める。
ふと自分の腕時計を見ると、
ベルトが切れかかっていることに気付き、
早速張さんのお世話になるのだった。

団地出張の研ぎ師
料理人も御用達の腕前
南昌路のとある団地では、
毎月19日に朝市が開かれる。
荒物売りや家電修理など
様々な職人が、
団地の入口で店を出す。
研ぎ屋の朱さんもその1人で、
椅子に座って
シャッシャッとハサミを研いでいた。
「研いでいると、
心も研ぎ澄まされてくるんだよ」
などと笑う朱さん。
何でも、毎月19日はこの団地、
20日はあの団地と、
出没ポイントを決めているのだそうだ。
特別な機械は一切使わず、
研石に水、
あとは腕さえあれば十分だという。
なるほど、
研ぐ度に腕に浮かび上がる筋肉の筋が、
その熟練の腕前を物語っている。
「これは知り合いの料理人のものさ。
もう5年も前から俺が磨いてる」
と見せてくれた包丁には、
彼の誇らしげな表情が映り、
輝いていた。
これからも住民の、
料理人の刃物を、
心と共に研いでいくのだろうか。

慣れれば簡単? 合鍵作り
傘やカバンも直せます!
鍵が壊れた、
スペアが欲しい…
鍵に関するトラブルは多いもの。
瑞金二路のとある団地の一角で、
小さな鍵屋を営む呉さんは、
鍵のエキスパートだ。
「この仕事は、
慣れれば誰でもできますよ、たぶん」
と控えめなことを言う呉さん。
お客さんから一番多い依頼が合鍵作りだ。
合鍵はまず元鍵の形状に似た
ブランクという鍵を選び、
そこから元鍵と全く同じサイズ、
凸凹の角度にマシンを調節して作る。
また昼夜問わず、
家の鍵が壊れたから直しに来てくれ、
と呼び出され、
依頼者の家に出向くことも多いのだとか。
鍵のほか、傘やカバン、
ファスナーの修理もするが、
なぜか水虫を治す
「脚気神油」という薬まで販売する張さん。
こんなマルチなスーパー職人さんだが、
まだ結婚相手が見つからないことが今の悩みらしい。

不要な電器は私に
20分以内に駆け付けます
通りを歩いていて、
「氷箱~、彩電~、空調~、
電脳~、洗衣機~、旧手機~、縫紉機~♪」
と歌うような声を聞いた事はないだろうか?
これは、冷蔵庫、カラーテレビ、
エアコン、パソコン、洗濯機、
携帯電話、ミシンなど、
不要な家電を回収する業者が流している
テープの音だ。
これらの物を渡すと、
製品の使用年数や傷み具合に応じて、
買い取り料を支払ってくれる。
記者が路地を歩いていると、
後ろからあの声が聞こえてきた。
振り向くと
冷蔵庫とテレビを荷台に積んだ電動バイクが。
すかさず、
回収した家電はどうするのか尋ねてみた。
「点検と修理をした後、
まだ使える物は中古家電店で再び売るんだよ。
キミが首に下げているカメラも、
使えなくなったらオレに電話してくれよな!」と、
名刺を残し、瞬く間に去って行った。

ハサミを握って半世紀以上
100歳まで切り続ける!
豫園近くの団地を歩いていると、
トタン板で作られた小屋を発見。
中を覗くと、鏡と椅子、
横にはハサミとバリカンが。
これってもしや?
と思っていたところ、
「何か用かね?」と
ハサミをチョキチョキ鳴らしながら
おじいさんが顔を出す。
この御老人こそが
「江家経済理髪」の店主である江さん、
御年86歳だ。
店主と言っても1人でやっているわけだが、
60年以上も理容業に携わり、
かつては南京東路の理髪店で
働いていたこともあるという。
「昔は大人から子どもまで
みんな切りに来てくれたもんじゃがなあ…」と、
哀愁の漂う表情で語る江さんだったが、
100歳までハサミを握り続けるという
決意を今も抱いている。
現役続投にこだわる江さんを見て、
この青空散髪が、
大人や子どもの声で賑わう日々が
再び来ることを願うばかりだ。

手作りジャスミン装飾
プレゼントにいかが?
南京西路を歩いていると、
路上で何かを売っているお兄さんを発見。
道行く女性たちも足を止め、
並べられた品物を興味深げに見ている。
すみません、これは何ですか?
「手作りのジャスミンの
ブレスレットとブローチだよ。
キミも彼女に買ってあげたらどうだい?」。
エヘヘ、そうですね、
ではブレスレットを1つ、
と言いつつ自分の腕に着けると、
ジャスミンの爽やかな香りが漂ってくる。
「僕は福建省から出稼ぎで来ているんだ。
花は広西チワン族自治区から
毎週空輸しているのさ。
今が1番の出荷時だよ」と、
ご機嫌で話すお兄さんは、
ちゃんと彼女に渡せと、
小さなブローチをおまけしてくれた。
9月末まで、
ずっと南京西路で販売するようだ。
8月の情人節(バレンタインデー)に、
ペアで買ってみてはどうだろう?

今が旬、搾りたてジュース
サトウキビジュースも人気
連日35度超えの上海。
記者もカメラ片手に歩いていると、
すぐにのどの渇きを覚える。
そんな折、復興中路で
ミカンが積まれた三輪バイクを発見。
近づくと、
透明のケースにミカンが詰められていて、
その後ろには何やらゴツイ機械が。
どうやら
ただミカンを売っている訳ではないようだ。
バイクに座っていたお兄さんに尋ねると、
「夏ミカンジュースさ。
全部ウチの農園で採れたものだよ」。
なるほど、
後ろの機械は圧搾機で、
夏ミカンをその場で搾るようだ。
早速1杯注文し、飲んでみたが、
種が数粒混じっていて、
全体的にぬるい。
とはいえ、
これぞ果汁100%と言える濃厚な味で、
適度にのどが潤った。
こちらは夏の間ずっと売っており、
初夏はサトウキビジュースも販売するそうだ。
街で見かけたらぜひ試してみよう。

これぞ風物詩!
夏のキリギリス売り
新たな商売人を求めて、
新天地界隈を歩いていると、
小さなカゴをたくさん積んだ
自転車に遭遇した。
50個以上はあるカゴの中からは、
〝ギーギーギーギー〟と虫の鳴き声がする。
早速、
自転車のおじさんに
籠の虫の正体を尋ねてみると、
「これは蝈蝈(guo1guo)だよ」。
蝈蝈とはキリギリスのことで、
カゴを覗いてみると、
小指程の大きさのキリギリスが
しきりに触覚を動かしていた。
「これは山西省産で、生命力が強く、
鳴き声もとても響くんだ」。
聞くと、
このおじさんも山西省から
夏の間だけ出稼ぎに来ており、
繁華街を中心に売り回っているのだという。
飼育用の虫カゴも別売りされていて、
エサは野菜や果物を与えるのだそうだ。
暑い夏の夜長に、
キリギリスの鳴き声で涼んでみるのも良いだろう。

名前を美しく!
我流の一筆書き
豫園を歩いていると、
「簽名」と書かれた札と共に、
紙とペンを持って立つおじさんがいた。
「簽名」とは「サイン」のことだが、
どう見てもこのおじさんが
有名スターとは思えない。
あの、誰のサインですか?
「キミの名前を俺が書くんだ」ええ?
名前なんて自分で書けますよ。
もしかして、筆の達人?
よし、書いてもらうか。
名前を教えると、
サラサラ~ッと一筆で書いていくおじさん。
見ると、
自分の名前が芸能人のサインのように
カッコ良く書かれているではないか!
見事な書体で字の配置バランスも絶妙だ。
誰かに師事したのではなく、
動画サイトで独学でマスターしたのだという。
何とも逞しい商売人だ。

~上海ジャピオン2012年8月10日号

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