帰国引越マニュアル【前編③】:ペットの引越し 大切なペットと一緒に帰国!

<マイクロチップの装着?新しい動物検疫制度にスムーズに対応>
 犬や猫などのペットと一緒に帰国する際は、動物検疫を受ける必要がある。2004年11月から狂犬病などの検疫強化を目的に、日本の検疫制度が大幅に変更された。とりわけ中国は、指定地域(農林水産省が指定した狂犬病の発生のない国と地域)でないので、計画的に手続きを済ませないと、ペットと一緒にスムーズな帰国はできない。
 新制度での手続きはまず、犬や猫にマイクロチップを装着するところから始まる。その後、狂犬病に対する十分な免疫力をつけるため、狂犬病予防注射を30日以上の間隔をあけて2回以上接種する。血清の採取を行い、日本農林水産省指定の狂犬病予防研究所で抗体値を検査する。ここで抗体値が基準値を満たしていれば合格となる。検査に合格したら、日本の到着空港の検疫所に届出書を送り、さらに、輸出国政府機関の証明書を準備し、日本へ出発する。

<入念の準備が大切 帰国の7ヵ月前には準備開始>
 ペットの帰国でポイントとなるのは、予防注射以前に狂犬病に感染していないことを確認する必要から、採血日から潜伏期間に当る180日間以上という待機期間が必要となることだ。そのため、マイクロチップの装着から実際に日本へ出発するまで、要する時間は7ヵ月以上。早めの準備が大切となる。
 これら条件を全て満たしていれば、日本での係留は12時間以内となるが、満たされていない場合、日本で最長180日間の係留となる。大切な家族の一員であるペット。離れ離れにならないためにも、早めの準備が重要だ。
 上海でペットを飼っている日本人サークル「にゃんわんクラブ」のメンバー三宅さんは、「マイクロチップの装着と二度の狂犬病ワクチンは済ましているのに、血清採取と抗体値検査を先に延ばしている方が時々いらっしゃいます。180日間の待機は血清を採取してからの期間です。二度目の狂犬病ワクチンを投与して二週間くらい経過したら、なるべく早めに血清採取と抗体値検査をされることをお勧めします」と話す。また、「日本からペットを連れて来る方は、マイクロチップ装着など一連の手続きを日本で行い、かつ二年以内に帰国する場合は、手続きの一部が簡素化されます。日本からペットを連れてくる方は一連の手続きを日本で済まして入国されると良いでしょう」と、アドバイスする。

【上海から日本到着までの流れ】
①マイクロチップの装着
国際標準化機構の規格に適合するマイクロチップを装着する。上海では出入境検験検疫局が指定する以下の施設でしか装着ができない。
■上海出入境検験検疫局服務中心 申普寵物医院
第3門市部
住所:上海市肇嘉浜路361号
TEL:6418-9236
(ほかに2診療所あり)
■上海市畜牧獣医站寵物診療中心
住所:上海市虹井路855弄30号
TEL:6268-0095
②2回の狂犬病ワクチン接種
接種は生後91日以上であることが条件。2回目の接種は、1回目の注射後30日以上経ってから、ワクチンの免疫有効期間内までに行う。
③血清採取と健康証明書の取得
血清の採取は申普寵物医院や上海市畜牧獣医站寵物診療中心などで可能。採取した血清を冷蔵保存する必要があるので、各自で容器を用意しておく。また、あらかじめ抗体検査に用いる狂犬病抗体検査申請書を、畜産生物科学安全研究所のサイトからダウンロードしておき、担当医に所要事項を記入してもらう。この際に、あらかじめ血清検査を行う施設に連絡を取り、検査申請書、血清の入った容器の表示方法、輸送方法などを確認しておく。
④獣医衛生証書の取得
上海出入境検験検疫局で獣医衛生証書の交付を受ける。申請から交付までは約一週間。急ぎの場合は数日でしてくれる。また、申普寵物医院で血清採取を受けた場合、獣医衛生証書の発行も同時に代行してくれるので、別途出入境検験検疫局に出向く必要はない。
■上海出入境検験検疫局 浦江局動検一課
住所:上海市 中山東一路13号3楼358号室
TEL:6321-5328
⑤狂犬病ウイルスの検査
血清、獣医衛生証書(健康証明書を兼ねる)などを日本の農林水産大臣により指定された検査施設に送り、狂犬病ウイルスに対する血清中和対抗値を測定する。指定を受けた検査施設は、中国国内には存在せず、アジアでは神奈川県にある「財団法人 畜産生物科学安全研究所」1施設のみ、世界でも30施設しかない。検査施設は、スイスのラボより認可された施設を農林水産大臣が指定しており、半年ごとに新しい施設が発表される。今後も増える可能性がある。
⑥届出書を検疫所に提出
日本到着の40日前までに、「動物の輸送に関する届出書」を到着予定空港の検疫所に提出する。同届出書は、農林水産省動物検疫所のサイトからダウンロードしてファックスか郵送で提出できるほか、インターネット上での登録もできる。届出書が受け付けられると検疫所から「受理書」がファックスか郵便で届く。インターネット上で登録した場合は直接画面で確認することができる。
⑦輸出国政府の証明書の取得
日本農林水産省動物検疫所のサイトから推奨証明書FormA(様式A)と推奨証明書FormC(様式C)をダウンロードして、申普寵物医院で獣医師に記入してもらい、3枚の書類全てに公印を捺印してもらう(公印捺印欄は各書類の右下)。
※日本で手続きを済ました場合、FormA、FormC及びその捺印は不要。
⑧出国前の臨床検査
出国一週間前に申普寵物医院で臨床検査と採血をして、獣医衛生証書の発行代行を依頼する。出国一週間前の臨床検査はそれ以前には受け付けていないので注意が必要。
⑨到着空港の検疫所への事前連絡
到着空港の検疫所では、到着後の書類不備によるペットの入国不可を防ぐために、必ず事前連絡をするように広報している。事前に連絡して、必要書類をファックスで送付しチェックを受ける。空港には動物検疫官が常駐しており、電話での対応などもかなり親切に行ってくれる。また、「輸入検査申請書」は空港に到着してから入手記載することもできるが、事前に入手して記載しておいた方が空港での手続き時間を短縮できる。
⑩到着空港の検疫所で書類を提出
到着空港の検疫所に獣医衛生証書(健康証明書を兼ねる)、輸入検査申請書、推奨証明書FormA、推奨証明書FormC、抗体検査結果のオリジナル書類を提出。問題がない場合は、12時間以内の係留で終了。

<料金の目安>
ペットの入国に関する手続きの総額は犬か猫、また、国営か上海市の施設かなど、状況により異なる。ちなみに、国営での目安は、マイクロチップ+狂犬病ワクチンで460元、狂犬病ワクチンだけで130元。血清採取と獣医衛生証書の発行手数料は400元。抗体値検査は日本円で12000円となる。

【上海ペット事情関連サイト】
■日本の農林水産省動物検疫所
http://www.maff-aqs.go.jp
■在上海日本国総領事館の犬猫などの日本輸出
http://www.shanghai.cn.emb-japan.go.jp/procedure/new050804-j.html
■上海にゃんわんクラブ
http://yumi-umi.com/jnwcs.html
■畜産生物科学安全研究所
http://www.riasbt.or.jp/newjigyou/kyouken.html

~上海ジャピオン2006年1月13日発行号より

最新号のデジタル版はこちらから




PAGE TOP