行ってきました 500元ツアー

「ジャスト500元のツアー専門店。あなたのプランをそれなりに組んでみます」と銘打ち、
弊紙にて2007年7月~2008年6月まで連載していた「500元ツアー」。(バックナンバーはwww.shvoice.com)。
本当に行けるの?というご意見を受け、実際に行ってみました。


1人旅の魅力再発見
500元で行く小九寨溝

 北は北京から、西は蘭州、南は広州まで500元で行けるツアーをご紹介してきた「500元ツアー」企画。実は連載終了後も、「本当に行けるの?」という声が相次ぎましたので、私、実際に行ってきました。
 選んだツアーは、上海ジャピオン182号でご紹介した「ベストプライス!? 小九寨溝1泊2日」プラン。元々、「500元で九寨溝に行きたい」というご依頼を受けたものの、500元では飛行機代にもなりませんとご提案したツアーです。
 目的地は、お隣浙江省臨安市の山奥にあり「小九寨溝」との誉れを持つ「太湖源風景区」。本物の九寨溝なら上海より約5時間かかりますが、小九寨溝ならたったの3時間ちょっと! 目的地までは、新幹線で杭州まで行き、バスを2回乗り継ぐだけ。朝8時頃の新幹線でスムーズに行けば、12時前には余裕でつけるはず。


小九寨溝に向けいざ出発
トラブル多発に四苦八苦


 出発当日、事前購入しておいた朝7時40分発新幹線2等席(片道54元)で、上海南駅から杭州駅へ。9時8分定刻通り到着するも、早速トラブルが! 駅すぐにあるはずの臨安行きバスが見つかりません・・・。長距離バスの発券所に尋ねたところ、出発場所はなんと「杭州駅」ではなく、「杭州汽車西駅」でした! プラン作成時には、太湖風景区にも、杭州汽車駅にも電話確認したんですが・・・。まあ旅行後思い返せば、トラブルもまた思い出のアルバムの中。瑣末なトラブルを楽しむのが1人旅ですよ。駅を出て右手の建設銀行前にあるバス停から、杭州汽車西駅行きのバス「K49」に乗車(2元)。道中、隣のおばあちゃんと話が弾む弾む。心温まる地元の人との交流もまた、1人旅の醍醐味です。
 1時間後、終点「杭州汽車西駅」に到着。乗り換えて再び1時間、ようやく臨安に到着です。今度も順調に乗り換えと思いきや、悪夢再来です。「太湖源風景区行きのバスは?」の問いに「ここには没有」!? あのときのお客様・・・重ね重ね申し訳ありません。バス停はここから3輪タクシーで10分ほど(6元)のバス停にございました。
 時刻も正午を迎え心身ともにへとへとですが、予算の関係で昼食代はほぼ皆無。やむなくミカンを2個購入(2元)し、太湖源風景区行きの16番線に乗車。車内で空きっ腹をなだめ1時間。今度こそ到着です!


10元引きでようやく入場
蛙の石像にまずは願掛け?

 そんなこんなで到着したのは、当初の計画より2時間遅れの午後13時半。予約していた宿で宿泊手続きをすると、風景区に行くなら宿泊者割引があるからと、宿の主人より手書きの割引券を頂戴しました。500元という制限つき旅行の身には、10元の割引さえも仏。昼食にリンゴもいけた・・・などという邪念は振り払って有難く頂戴し、早速風景区へ。10元引きの55元で入場です。
 門をくぐり出迎えてくれたのは、九寨溝と見まごうコバルトブルーの大小様々な泉――ではなく、かぱっと口を開き水場に鎮座する蛙の石像。周辺には投げ込まれた小銭がわんさかです。な、投げたい・・・。とはいっても、財布の紐は固結びの500元ツアー。余分な出費ですが、1元だけ、と全身全霊をかけ、「旅の安全」を願って、大きく振りかぶりトルネード投法~、うぉー! と年甲斐もなく1人で張り切るも、あえなくハズれ・・・。いや、むしろ外れてよかった。運を使わずに済んだわけですよ。

太湖の源、太湖源
小九寨溝の実力やいかに


 ふと気づくと、太陽が早くも傾き始めています。蛙の賽銭投げに夢中で忘れかけていましたが、日が落ちる前に九寨溝っぽい景色を堪能せねばここに来た甲斐が半減です!
 観光用に舗装された渓谷を一路前進。この風景区は約10㌔に渡る龍須峡のうちの主要景観地で、渓谷に沿って緩やかな上り坂となっています。道中はほどほどに険しいのですが、眼前に広がる緑で目を保養し、足の裏にごつごつとした岩の感触を感じると、日ごろ上海というコンクリートジャングルに暮らしていては味わえない爽快さが身体中に広がります。
 岩肌を轟々と流れる川。川面にせり出して密生する木々。山の斜面を覆う緑の衣。両側にはまるで何者かが山を一刀両断にしたかのような断崖絶壁。上海からたった200㌔ほどにもかかわらず、そこには確かに美しい山紫水明の風景が広がっています。さらに奥へ進むと、上流より流れ落ちる白く細い滝が静かにメノウ色の泉を打ち、その姿はまるで四川の秘境・九寨溝――! とは正直言いすぎでした・・・。しかし、疲れを忘れる美しさに変わりはありません。マイナスイオンはプライスレスとばかりに、全身で皮膚呼吸を試みます。
 なんせ、入場料は本場九寨溝の5分の1以下、さらに上海から5時間もかからずに来ているのですから、このお得感、主婦層を狙い撃ちです。


高台から見下ろす渓谷
ご当地銘茶で一服


 そうこうして上ると、途中には観光地ならではの不思議なアトラクションがちらほら。
 まず、「空中飛人」。その名の通り、空中を人が飛びます。しかも下は岩場という渓谷を上流から中流ほどまで、公園にあるようなロープウェーで滑空するというスリリングさ。日本男児たるもの、非常~に惹かれるのですがいかんせん懐がね。そして、スリル満点といえばもうひとつ。高さ30㍍(目算)はあろうかという断崖絶壁にかけられたハシゴに、大人や子どもが群がっています。いや~、金銭的余裕さえあれば!
 また、野生の猿を集めたらしき猿山もありました。1人旅も始めはウキウキですが、時々人恋しくなるものです。まあ、人ではなくお猿さんですが温もりに癒されました。
 入り口から約30分。少しガクガクきはじめた脚を休めようと、中腹のお寺に併設された茶屋にて一番安い15元のお茶で一服し、下山の準備です。


中国の民宿「農家楽」
水が美味いと食事も旨い


 今回宿泊したのは、「農家楽」という民宿のような宿です。基本的な設備はばっちりで、清潔感もあって部屋も広く思っていた以上の快適さ。これで1泊150元はグッドプライス。ただし、ヒゲ剃りなどのアメニティや、ドライヤーは要持参です。
 そして待ちに待った夕食です。ここを豪華にするために昼食はミカン2個でしのいだわけです。空腹も限界に達し、翌日予定していた2度目の風景区は割愛しもう食事に回してしまいました。ええ、食欲に負けましたとも。冬瓜ときのこのスープ「冬瓜香菇湯」(6元)、里芋の塩胡椒焼き「椒塩芋乃」(18元)、きくらげと豆腐炒めの「野木耳豆腐」(18元)、そして脂身こってりの「紅焼野猪」(48元)の4品計90元。水の臭みも全くなく、素朴ながらどれもいい味出してました。

行きは良いよい帰りは・・・
帰りも再び道中5時間


 風景区は既に断念しているので、帰りの交通費を差し引いた残金は28元。夕食で気に入った里芋の塩胡椒焼き「椒塩芋乃」(18元)を食べ、前日食べたかったのを我慢した露天の焼き栗500㌘(10元)を購入し、再び5時間かけて上海へ。
 九寨溝との共通点といえば。自然が豊富な点くらいでしたが、上海から日帰りや1泊2日にはもってこいです。ただし500元ツアーにて行かれる方は、乗り換えに次ぐ乗り換え、さらにトレッキングをこなす体力と1人旅のトラブルを楽しむ心が必須。何はともあれ実際に行く場合は、日系旅行社に杭州駅からレンタカーを利用するプランを、手配してもらうのが結局一番オススメかと・・・。皆様、今後も計画性のある旅をお楽しみ下さい。

~ジャピオン10月10日発行号より

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