乗馬が彩る春


新緑の合間を颯爽と
1周20元~格安乗馬体験

 人民広場がかつて競馬場だったこともあり、上海では今でも乗馬が比較的盛ん。
市内には、6カ所ほどの乗馬場が浦東、浦西の郊外に点在している。
中でも手軽に体験できるスポットとして密かに好評なのが、楊浦区に位置する「共青森林公園」内の乗馬場。
ここでは、森の中の500㍍コースを軽く走る「トレイル」が、1周わずか20元で体験できるのだ。
 「ここは85年から運営していて、上海でも最も歴史ある乗馬場だ。
いつも安全第一に考えてるよ。」とは、職員の袁さん。
1周の体験乗馬は2種類あり、並足程度で走る「??」(20元/周)と、速足程度で走る「快?」(40元/周)があった。
全く初めてなので、まずは「??」を体験することに。


「??」は散歩
「快?」はかけっこ!?

 騎乗の際には、特に装備は必要なく、運動しやすい格好であればOK。
チケットをスタッフに渡して早速騎乗!
 馬の背までは、実は意外と高く、1・5㍍ほどもある。
あぶみに足をかけて反動を利用して乗るのだが、身体が硬い人にはややツライ体勢・・・。
中国語と身振りで乗り方の指導を受けながらなんとかポジションを落ち着けると、すぐに別の馬に乗ったスタッフと一緒に、ゆっくりと歩き始めた。
 馬が歩くと身体が上下に揺れるが、「??」の速さなら、周りを見渡す余裕も十分。
コース周りは新緑芽吹く林となっていて、野花が咲き鳥の声も聞こえて春爛漫♪ 
馬も何の指示もなしにちゃんとコースを歩いてくれるので、存分に乗馬気分を楽しめる。
中盤にややスピードを上げて少し風を感じる速さで湖の傍を通り過ぎたが、それでも不安を感じるほどではなく、3分ほどの騎乗はあっという間に終了した。
 この乗馬に余裕を感じ、速足の「快?」にも挑戦。同様にチケットを購入して渡すと、ヘルメットを渡された。
これは相当スピード出るかも!
 馬に再度跨り、鞍の前部をしっかりと握る。
そこでスタッフのムチがピシッ! 
と入り、馬が駆け出した。これは 「??」は比べ物にならないほど速い! 
そこへさらにムチでスピードアップ! 
必死の形相で落ちないように鞍を掴み、悲鳴とともにコースを駆け抜けた後は、激しい息切れに見舞われたのだった・・・。


日本人累計100人以上
国際派クラブで基礎レッスン

 「共青森林公園」でのトレイル体験の後、やはり何事にも基礎が大事と、今度は別の乗馬クラブにて初級体験レッスンを受けてみることに。
そこで浦東にある中国初の民営乗馬クラブである「上海輝煌騎馬場」の門を叩いた。
 1998年に設立されたこの乗馬クラブは、2009年時点で会員数は累計2500人を数え、現在では全22カ国の人が在籍する国際派クラブだ。
「日本人もよく来るよ。今までの会員のうち、少なくとも100人はいるかな」とスタッフ。
日本人慣れしているようで、頼もしい限りだ。
 まずはフロントで登記して、その日受けたい授業のチケットを購入。
非会員の土日レッスンは、1時間で250元だ。
ここでヘルメット、乗馬ブーツ、プロテクター(手袋)をレンタルし、乗馬装備の3点セットを身につける。

乗り方にも手順あり
英国スタイルの乗馬

 同クラブでは、マンツーマンで英国スタイルの乗馬を学べる。
英国スタイルは、乗り方ひとつひとつにルールが多めなので初心者向きなのだとか。
そして、コーチと馬と顔をあわせて、いざレッスンスタート。
この日の相手は、広州出身のコーチと、新疆伊梨馬の「英雄」だ(馬にはそれぞれ名前がある)。
 初めてのレッスンでは、どのくらい走れるのだろうとワクワクして聞くと、「今日は歩くだけだよ」との回答。
しかし、1時間歩くだけか・・・と気落ちしたのもつかの間だった。
 まずは、共青森林公園でも苦労した乗り方から。
立ち位置から、手の位置までひとつひとつに細かく指導が入る。
言われるがままにやってみると、なんと先日とはうってかわってすんなり跨れた! 
 続いてポジショニングにも、チェックが。
まずは手綱の握り方。
親指を除く4本の指で人差し指の上に手綱が来るようにして掴み、親指でその手綱を押さえ、さらに身体は2つの直線を意識して…と、次々に指示が殺到。
正しい乗り方をするだけでも大変だ。


歩くだけでも四苦八苦
馬にからかわれる!?

 初めてのレッスンは、引き馬(馬に手綱と別にリードをつけ、コーチがリードを持つ)で進行する。
体勢をなんとか整えてやっとこさ歩き出そうとしたところ、今度は英雄が頭を下に向け、歩きませんよ、との意思表示を始めてしまった。
追い討ちをかけるように、コーチに「からかわれてるね(笑)」と言われる始末。
「歩くだけ」と思っていた自分を早速反省。
 コーチに引っぱられ、英雄がしぶしぶ歩き出す。
馬が歩くと身体は上下に弾む。
思わず手綱に力が入ると、コーチからすかさず「リラックス!」との声が。
乗馬はスポーツだとは言っても、自分が走るわけじゃなし、と思っていたが、普段使わない色んな筋肉が刺激され、息が弾んでくる。
 少し慣れてきたところで、一旦ストップ。
今度は足で馬の腹を蹴って走らせる、というレッスン。
しかし、まずこの蹴る動作が難しい。軽く蹴っても、これこそ「馬耳東風」といわんばかりに動かないし、強く蹴ろうとするとあぶみが外れてしまう。
そしてこのレッスンはあえなくストップ。
カメラを向けると、びびって後ずさりするほど小心なくせに! 
と思いながら、再び歩くレッスンに戻った。
 この日は歩くのみで終わったが、春の陽射しの元での乗馬は、やはりストレス解消にはうってつけ。
上海に暮らす日本人の中には、平日は仕事で、休日も上海は遊ぶ場所がなくてストレスを発散できない、との声も聞かれるが、小憎らしくも可愛い馬と触れ合えば、日頃の疲れを忘れてしまうに違いない。


レッスン終了
継続希望なら同じ馬で

 初めてのレッスンは、並足や並足のやや早めを繰り返していたら、あっという間に1時間経って終了。
 英雄と過ごした1時間が名残惜しい。
鼻筋をなでてお礼を言ってみると、潤んだ瞳で見つめ返してくれた・・・ような気がして、いつか英雄と歩くだけじゃなく走れるようになりたいとの願望が芽生える。
 乗馬クラブでは、初級者レッスンを継続する場合、初めに乗った馬に基本的に乗り続けることになる。
これは、馬によって性格や癖が違うので、頻繁に馬を替えると慣れるのに時間がかかり上達が鈍るためだ。 
また、ここには全95頭の馬がいるが、そのうち初級者レッスンに駆り出される馬は15頭ほど。
その中からコーチが、馬の性格や騎乗者の体格を元に選んだ馬が、その後のパートナーとなるわけだ。
 ただし、中級者以上の場合は、どんな馬でも乗りこなせるようになるために、レッスンの度に馬を替えるのだとか。


脱・初心者、その後
トラックを駆けるまで

 乗馬を本格的に始めるとすれば、やはり走れるようになりたい。果ては障害物越えを目指す人もいるだろう。
実際に、「走る」レベルに達するには、人にもよるが半年~1年のレッスンが必要とのこと。
 体験中には、平日の午前中にも関わらず、数名のレッスン生が。昼ごろに訪れた高さんは、浦東の会社にお勤めで、この日が5回目だとか。
すでに最初級のレッスンは終え、広い練習場でターンの練習に励んでいた。 
 レッスン生の中には、4歳の子どもから65歳の年配者までおり、年齢を問わず楽しめるのもまた乗馬の魅力。
この春、上海で乗馬デビューしてはどうだろう。

~上海ジャピオン4月10日号より

最新号のデジタル版はこちらから




PAGE TOP