上海オタクの世界

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85%が〝動漫〟に興味
人気作は国境を越える?

 アニメや漫画で盛り上がるのは、日本だけではない。
上海では毎年、「上海動漫展」や「中国国際アニメ・ゲーム博覧会」など、日本のアニメなどを中心とした大規模なイベントが開かれ、多くの来場者で賑わいをみせる。
日本のアニメや漫画は、もはや一部のオタクの専売特許ではなくなっているのだ。
 マーケティング会社・インフォブリッジが、上海の若者を対象に行った調査では、日本のアニメや漫画、ゲームに興味があると答えた人が85%を数え、中でも、アニメに興味を持つ人が70%と、圧倒的1位となっている。
また、アニメなどの関連商品を30点以上持っている人も、45%に達するなど、上海の一般の若者にも日本のアニメ・漫画が浸透している様子がわかる。
 また、「今面白いと思う作品」への回答では、『名探偵コナン』と答えた人が最も多く、続いて『ONE PIECE』、『NARUTO‐ナルト‐』が上位を占めるなど、日本でも人気の作品が、国を越えて人気となっているようだ。

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コスプレは劇形式で
「動漫城」で踊りの練習

 続いて、日本と中国のオタク活動の違いについても探ってみたい。
 同人誌作成や、アニメグッズ収蔵、さらには「萌」、「同人」などのオタク用語に至るまで、基本的に日中のオタク活動には変わりはないが、コスプレに関しては少々異なる。
日本では衣装を着て、ポーズをとるだけというのが一般的。対して中国では、コスプレはサークル単位で行うことを基本とし、同人誌即売会やアニメ・漫画展示会に参加して劇を行ったり、振り付けとともに歌を披露したりするのを特徴とする。
週末には、「動漫城」と呼ばれるアニメ・漫画の集積ビルに集まって、踊りを練習している様子が見られることもある。
 では、日本のアニメ・漫画がいかに受容されているかを、中国版コミケから見てみよう。

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開場前の長蛇の列
来場者は女の子が中心

 今回潜入したのは、虹橋の上海マートで開かれた、第4回「COMICUP」という同人誌即売会(コミケ)。
当日朝9時過ぎに会場に着くと、既に何百人もの長蛇の列が2本できていた(写真①)。
1本は入場待ちの列で、もう1本は入場券(15元)購入のための列だ。
 来場者は高校・大学生とおぼしき若者、特に女の子が中心だったが、中には親子や小中学生、欧米系の人も見られた。
格好も多種多様だ。
日本でバンドブームを巻き起こしつつあるアニメ『けいおん!』のTシャツを着た男性や和服、セーラー服を着込んだ女の子のほか、アニメキャラになりきるため、衣装のみならず、髪や眉毛も青色に染め、目にはカラーコンタクトを着用するディープなファンも。
否が応でも、開場前から気分を盛り上げてくれる(写真②)。
 午前10時前に開場となり、長蛇の列はゆっくりと会場へと入っていった。

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〝腐女〟向け作品多数
女装のコスプレが人気?

 「校門」と書かれた入口を抜けると、そこは活気に溢れる会場だった(写真③)。
上海マート内の専門の展示場だけに、150にも及ぶ同人サークルが参加している割に広々。
以前も遊びに来たという女子学生は、「第2回のときは、大学の体育館で開催されたので、人が入りきれなくて、ギュウギュウ詰めになって大変でした」と懐かしそうに話してくれた。
 ブースを眺めると、アニメキャラの抱き枕や、『名探偵コナン』などのキャラが描かれたウチワなど、オタクたちの愛の詰まった様々なグッズが売られていた。
しかし、一番目に付くのは、〝腐女〟と呼ばれるオタク女子向けの同人誌の数々(25元程度~)。
女性来場者が多いのも納得だ。中でも、中国では「APH」もしくは「黒塔利亞」と言われる、イタリアを主人公に国を擬人化した、歴史コメディ漫画・アニメ『ヘタリア』が人気だった(写真④)。
 登場人物のイタリアとドイツの禁断の愛を描いた同人誌を売るブースには黒山の人だかりで、バーゲン会場さながら(写真⑤)。
同様に、『ヘタリア』関連のコスプレをする女性も多く、漫画のワンシーンを再現すると、「おおぉ~!」との歓声とともに人が取り囲み、一瞬にして撮影会へと早変わり(写真⑥)。
撮影する側とされる側との間に妙な一体感があった。
 また、コスプレの題材としては、同人アニメ『東方Project』の巫女・霊夢も人気で、関連商品の〝お払い棒〟や手作り人形を売るブースも。
ほかにも、巫女さんや女性物の浴衣のコスプレをする男性(!)など、女装コスプレイヤーも被写体として人気を博していた。

ガンダム男現る!
同人誌の出来栄えに驚嘆

 オタク女子向けの同人誌やコスプレに満腹感が出てきた頃、ガンダムの手作りマスクをした人を発見!
 Tシャツ姿に、顔だけガンダムというシュールな姿だ(写真⑦)。
話を聞くと、プラスチックを材料に制作期間は1週間で、次は『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』に登場するモビルスーツ・サザビーを作ると意気込んでいた。
 あらかた見終わり、帰ろうとしていたとき、日本語で声を掛けられた。
アニメ『忍たま乱太郎』の同人誌を売っていた女子大生からだ。
「中学生の時に『忍たま』を見て以来、あの可愛らしいキャラに惹かれて今でも大好きです。
今回初めて同人誌を作ってみました。友達と一緒に作業して、1カ月ほど掛かりましたよ」と目を輝かす。
初めてとは思えない出来の良さに、思わず「すげ~!」と日本語で感嘆の声を上げると、女の子とその友達もそれに合わせて「すげー」と笑顔で大合唱。
心が和んだ瞬間だった。
 同コミケの来場者は5000人ほどと、3日間で50万人以上を動員する日本のコミケに比べ、規模はかなり劣ったが、小さいがゆえに、和気藹々とした手作りなイベントの雰囲気が漂っていた。
また、アニメを通した日中交流をしたいなと思いつつ、会場を後にした。

上海のオタクスポット

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 コミケやコスプレ大会が開かれていないとき、上海のオタクたちはどこへ行って、オタク心を満たしているのだろうか?
 真っ先にその行き先に上がるのは、「動漫城」と呼ばれるアニメ・漫画の集積ビルたちであろう。
 上海は、浦東と浦西にそれぞれ動漫城を擁する。
東の横綱は、浦東のヤオハン近くにある「光環地帯動漫城」で、西の横綱は、南京西路の「炫動楽百動漫城」だ。
どちらも、ビルの中に複数の専門店が並び、漫画、ゲームから、プラモデル、フィギュア、コスプレ衣装まで揃う。
また、日本からの輸入品フィギュアを扱う日系店舗もあり、本物志向のオタクたちの心も満たす。
 中でも光環地帯動漫城にはメイドカフェが入店し、日本さながらに、メイド服を着たウエイトレスの可愛らしい姿を堪能できる。
また週末には、ドール撮影会が開かれたり、コスプレサークルがダンス特訓をしたりと、オタク活動の様子を垣間見ることも可能だ。
 さらにローカルな雰囲気を味わいたいのであれば、文廟周辺がオススメ。
文廟は豫園の南1・5㌔ほどにある孔子を祭ったほこらで、毎週日曜に開かれる古本市で知られる。
廟周辺には、「ガチャガチャ」、「ガシャポン」などと呼ばれる、カプセル玩具の自販機専門店など、アニメ、漫画、ゲームの関連商品を扱う小店が集まっている。
 この3つのオタクスポットに行って、上海のオタクたちの様子を覗いて見てはいかが?

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~上海ジャピオン6月5日号より

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