アロマティック上海

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寺院から漂うあの香り

中国の寺院などで香る線香や葬儀に使う焼香の匂いと言えばイメージしやすいだろう。喘息や腹痛、関節の冷えなどによいとされ、ストレスを軽減、心の落ち着きを取り戻す効果が見込まれる。

熱帯産のジンチョウゲ科アキラリア属の常緑喬木の幹から採取される香木。生木に自然と香りが作られるのではなく、樹木に傷が付くなどして、その部分に樹脂分が沈積し、香りを放つようになる。上質の樹脂分の多いものが、よく水に沈むことから沈香という名が付いた。

日本では鎌倉時代に流行ったという沈香は、当時足利尊氏の守護大名が、通常は数㌘ずつ焚く高価な沈香を一度に600㌘焚き上げるなど、贅の限りを尽くしていたと伝えられている。

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男を惑わすモテる香

沈香と並んで有名な香木の一つで、植物自体が香りを発する。ほかの樹木に寄生し栄養分を吸収しつつ自らも光合成する半寄生植物である。

ほのかに甘いウッディーな香りが特長で、殺菌作用や利尿作用を持つ成分を含み、心を穏やかに静めてくれると言われている。沈香とは異なり、熱を加えなくても十分に匂いを放つため、置物である仏像や美術彫刻、数珠、家具などを始め、扇子の骨に使って扇ぐことで香りを漂わせるなど、身近なところで目にすることができる。

小野小町は、この香りを着物や扇子、恋文に付けて相手の反応を楽しみ、楊貴妃はこの香木を柱に使用した檀香亭に住むことで、身体に香気を染み込ませ男を魅了したんだそう。

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フェロモニックな色気漂う

マッコウクジラの腸内に発生する結石で、動物性の天然香料。クジラが食べたタコやイカの嘴など消化できない部分を唾液や胃液でまとめて練り固め排泄したもので、比較的軽いので海に浮いていたり、海岸に打ち上げられたりする。実は単なる〝汚物の塊〟でしかないが、古代の中国人たちは〝龍のよだれ〟が固まったものと空想し龍涎香と呼ぶようになったんだとか。また希少価値が高く、1㌘約120元で取引される超高価な香料だ。

一度嗅げば忘れられないほどの爽快感と、異性の嗅覚に訴えかけるフェロモニックな甘い香りを放つ。鎮痛作用や心を静める作用があるとされ、フランスの王妃、マリー・アントワネットが愛用していたことでも知られる。

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セクシーでエキゾチック

オスのジャコウジカの腹部にある香のうから得られる分泌物を乾燥した香料で、ムスクとも呼ばれる。中国では、ジャコウジカを飼育し、そのシカを麻酔で眠らせ採取することで、世界の約70%の生産量を誇る。

素肌そのもののような香りで実際、健康な若者からも同じ匂いがするとされており、セクシーでエキゾチックな芳香の代表と言われる。なお興奮作用や強心作用があるとされるほか、麝香そのものに香りを長く持続させる効果があるため香水の材料としても重宝されている。

ナポレオンの妻、ジョセフィーヌが日々身に着けていたこのアロマ。彼女はナポレオンと離婚する際〝自分のことを忘れないように〟と彼の寝室に振りまいて去っていったんだそう。

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フェロモンたっぷり恋の媚薬

シベットと呼ばれる霊猫香は、ジャコウネコのオスとメスの両方から採取できる分泌物を加工した香。この分泌物自体は、ビックリするほどの野性的悪臭を放つが、エタノールに溶解させて希釈することで、ジャスミンのような華やかで爽やかな芳香へと変化する。世界的ファッションブランド、シャネルの香水「シャネル No.5」の原料にもなっている。

現在、杭州市にある「杭州動物園」や上海市長寧区に位置する「上海動物園」では、ジャコウネコを飼育し、年間数十㌔の霊猫香を採取している。古代においてシベットは媚薬として重宝されており、エジプトの女王、クレオパトラも身体に擦り込むことで、権力者たちを虜にしていたと言う。

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ビーバーの尻から採取する

ビーバーの肛門付近にある臓器の内部には、黄褐色で強い臭気を持つクリーム状の分泌物が含まれており、縄張りを示す為のマーキングに使うんだそう。これを乾燥させて粉末状にしたものを海狸香と呼ぶ。中国にもビーバーは生息するが、現在出回っている海狸香は、すべて輸入品だと言う。

糞のようにむせ返るほど強烈で辛味のある臭いを持つとされているが乾燥させると一転、南国の花のような甘く爽やかな匂いを放つ。バニラやストロベリーの食品や菓子の香り付けとして使われており、アイスやキャンディーのエッセンスとして多く使われる。古代ギリシャでは、香料として役立てられる前、解熱剤や痛み止め、視力向上などに効くとして珍重されていた。

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~上海ジャピオン2017年1月6日発行号

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