上海にビアガーデンをもとめて

昼の暑さもやわらぐ夜の風、のどに流れ込む冷たいビール。日本人にとって、夏が来れば思い出す感覚がある。ことしも、ビアガーデンの季節がやって来た。もちろん、ここ上海では、なかなか日本の感覚に合うビアガーデンは見つからない。しかし、せっかく上海にいるのだ。〝外の風と共に味わうビール〟をテーマに、上海式のビアガーデンを探してみてはいかがだろう。

誰もが家族になるドイツの風

にぎやかで陽気な雰囲気。入った途端、誰もが大家族の一員になった気分になる場所……それが「ポーラナー・ブラウハウス」だ。ここには確かに、我々がビアガーデンに求めるサムシングがある。店のコンセプトは、ドイツらしさの追求。ドイツから建築士を招いて再設計した建物や、ウェイトレスのまとうドイツの民俗衣装は、〝ドイツ人に、家にいる気分を味わってもらうため〟だと言う。だが、このこだわりは素晴らしい誤算も生んだ。故郷の暖かさを追求したために、そこは我々外国人にとっても、家庭的な暖かさを感じる空間になったのだ。
「友達、同僚、恋人……誰と来てもいいんです。ここは、色んな国、色んな関係の人々の心を開く場所ですから」。人なつっこい笑顔でそう語るのは、店の副マネージャー・呂さん。夜になれば、バンドの生演奏と共に客が踊り始める。このビールの国・ドイツならではのにぎやかさ、暖かさが、ビールの味に愉しさを加えるのだ。
もちろん、屋外にも席が用意されている。2004年末に新たに完成した屋外スペースは、フランス租界時代の面影を残す庭を利用した優雅なもの。にぎやかな雰囲気に、屋外の風。ビアガーデンの必須条件がこれほど揃った場所がほかにあるだろうか。いや、最も重要な要素を忘れていた。

中国語の「黄ビール」ことミュンヘン・ラガー、「黒鮮ビール」ことミュンヘン・ダーク、そして「白ビール」ことウィート・ビール(ヴァイス・ビア、あるいはヴァイツェン・ビア)。ここでは、ドイツの伝統製法で作った3つの自家製ビールが飲める。これが、ビールを愉しむというビアガーデンに最も重要な要素を、しっかり満たしてくれるだろう。

(写真左)ガラス張りの壁を通し、店内の明かりが庭を照らし出してくれる。
(写真右)(左から)ミュンヘン・ラガー、ミュンヘン・ダーク、ウィート・ビール:いずれも0.5リットル杯68元

Paulaner Brauhaus
汾陽路150号(×桃江路)
電話:6474-5700
営業:11:00~翌2:00
外の座席数:約80席

都会のオアシスで、自然を感じる

自然のままを愉しんで欲しいんです」
 そう語るのは、ラウンジバー「モンスーン」の責任者・ベンさん。半分以上の座席が屋外にあるここは、レストランやクラブを内包する娯楽ビル「ピア・ワン」の3・4階(4階は屋上)にある。新緑の木々と蘇州河の流れを見下ろす眺めは、まさに都会の中の自然に思える。
 何より目を惹くのが、屋上に備えられた露天浴槽だ。野外の風を感じられる開放的なスパが、テーブルのすぐ横に、何の囲いもなく照し出れている。水着を用意しなきゃね、と話すと、ベンさんに、別に裸で入ってもいいよと笑いながら肩をたたかれた。
「夏は、みんなエアコン漬けになってしまうでしょう。都会の喧騒にうんざりすることも多いはず。ここでは、そんな不自然な環境から離れ、ゆっくりと自然の風と水を浴びることができるんです」
 ビアガーデンの醍醐味は、外の風から〝自然〟を感じることにあるとすれば、ここはまぎれもなくビアガーデンだ。浴槽を指し、文字通り都会のオアシスと呼んでも差し支えないだろう。

店はまだオープン2カ月め。新しさと共に、穴場的な静けさもある。このバーのもうひとつのテーマは〝エレガンス〟とのことだが、この静けさや、周辺の超高層マンションの光が、違和感なくその言葉を感じさせてくれる。
 そんなモンスーンでのオススメビールは、世界中でも愛好家の多いシメイ(CHIMAY)。産地ベルギーからの直輸入品だ。修道院で、独自の製法によって造られるというこのビールは、都会のオアシスによく似合う。

(写真左)バーは、緑地化された蘇州河一帯の静かな雰囲気の中にある

(写真右)シメイ(レッド):1瓶65元

monsoon
宜昌路130号 3・4階(陝西北路近く、江寧路と昌化路の間)
電話:5155-8310
営業:19:00~翌2:00(日~木)
   19:00~翌4:00(金~土)
外の座席数:約150席

日本の空間で、仕事帰りの一杯

今回選んだ中で、最も日本的なのがここ「夜来香」。日本語が通じる従業員に、日本語付きのメニューもある。それもそのはず、ここは宿泊客の大半が日本人という花園飯店(オークラ・ガーデンホテル)の3階にあるのだ。その名の通り、テラスからは優雅なガーデンが見渡せる。条件は揃った。
「日本に帰った気分になってもらうのが、この店のテーマですから」。バーの副経理・洪さんは、日本的な笑顔で説明する。客層も、仕事帰りの日本人が大半だと言う。

オススメはやっぱり日系ビール。日本の夏を思い出しながら、ジョッキの生で乾杯したい。17時半から20時までは、80元で、この生ビールを含む指定ドリンクが2時間飲み放題になるサービスもある。

(写真左)テラスからは、広々した庭園や、淮海路一帯の高層ビルが見渡せる。

(写真右)生ビール:大ジョッキ55元

夜来香
茂名南路58号 花園飯店(オークラ・ガーデンホテル)3階(×長楽路)
電話:6415-1111×5217
営業:14:30~24:00
(テラスの開放は5月1日~10月8日まで)
外の座席数:約40

家族と過ごす休日の午後

ケーキをほおばる幼稚園児たち。ランチを取る家族連れ。それが、スポーツバーとしても有名なアイリッシュパブ「オマリーズ」の昼間の顔だ。子供用メニュー、キッズスペースが用意されているという、子供への敷居の低さは、ここがかつて学校の寄宿舎だったという歴史を思い起こさせる。
 例えば、休日の午後に子供を連れて訪れ、日差しと風を感じながらひと息つく、そんなビアガーデンがあってもいいはずだ。ここはまた、欧米人の交流パーティの場所としてもお馴染みだという。

オススメビールは、アイルランドから直輸入しているギネス(GUINNESS)。黒ビール最高峰とも称されるそのなめらかな味を上海で愉しむなら、まずはここへ。

(写真左)アイルランド直輸入の木材を使ったこだわりのテーブルにも注目

(写真右)ギネス:小杯45元

O’Malley’s Irish Pub
桃江路42号(×烏魯木斉南路)
電話:6474-4533
営業:10:00~翌1:30(月~土)10:00~翌1:00(日)
(ラストオーダーは閉店1時間~1時間半前になるので注意)

外の座席数:約100席

ひみつの花園への招待状

緑の茂みに隠された、おとぎの国――。衡山路を少し離れた小道にあるバー「コットンズ」の門をくぐったあなたは、そんな言葉を思い浮かべるかも知れない。
 白い洋館と、新緑の木々に優しく包まれた、ひっそりとした庭。童話にあるひみつの花園のように、静かで無垢な雰囲気だ。「都会のストレスから逃れてきた人々が、国境を越えて友人になる、そんな場所にしたいんです」バーの女性オーナー・丁さんは、優しく語る。

この花園、毎週月~木の16時~20時は、さらなる幸せに包まれる。指定ドリンクが、一杯飲めばもう一杯無料になるのだ。カールスバーグの生を片手に、この花園(ガーデン)を、ひみつのビアガーデンとして楽しんでみよう。

(写真左)隠れ家のように静かな雰囲気の中では、時間もゆっくり流れる。

(写真右)カールスバーグ(生):1杯40元

Cotton’s
安亭路132号(×建国中路)
電話:6433-7995
営業:11:00~翌2:00
外の座席数:約150

外灘の夜景を眺める最高級空間

黄浦江と、対岸の高層ビル群を眺めるテラス。真紅の絨毯とシャンデリア。最高級のテナントが連なる外灘18号の最上階に、「バー・ルージュ」の贅沢な空間が広がっている。
 もはやガーデンではない。が、空の下で酒を楽しめる場所には違いない。客層の多くは欧米人で、週末の夜には、DJブースの周りに人だかりができる。ゲストサービス・マネージャーの黄さんは、「この自由と熱気が、バーの魅力なんです」と話す。それは、ビアガーデンの魅力とも、そして今の上海にも重なるように思える。
 

乾杯は、シャンパンの王者・モエ・エ・シャンドン・ブリュット・アンペリアルで。上海の夏の夜を、少し豪華に楽しんでみよう。

(写真左)東方明珠塔の輝きをグラスに落としながら、上海の夜を楽しめる。
(写真右)モエ・エ・シャンドン・ブリュット・アンペリアル:1杯120元

Bar Rouge
中山東一路18号 7階(×九江路)
電話:6339-1199
営業:バーとしての営業は、18:30~翌2:00(週末は、状況に応じて延長される)
外の座席数:約180

セルフ・ビアガーデンのススメ

ビアガーデンの雰囲気を楽しむには、もっと簡単な方法もある。自分で舞台を作ればいいのだ。
 上海では、カルフールやシティ・スーパーなどの量販店で、実に様々な銘柄のビールを入手できる(上に示したのはその一例)。利き酒ならぬ利きビールとしゃれ込む、なんて楽しみ方もあるだろう。
 ビールが揃えば、次は食べ物だ。自分たちで用意してもいいが、デリバリーを利用するのも便利だ。
 あとは、マンションのテラス、庭、公園、キャンプ場などへくりだすだけ。ただし公共の場では、飲食の許可を確認しておくこと。
 うだるような暑さが続くが、逆に絶好のチャンスだと考えたい。友人たちを集め、好みに合わせたビアガーデンを楽しんでみよう。
(写真左から)
①ボディントン・パブ・エール(イギリス/4.7%)21元

②青島ビール純生(深セン/4.3%以下)4.6元

③デュベル(ベルギー/8.5%)23.9元

④ADNAMS(イギリス/6.3%)22元

⑤ニューキャッスル・ブラウン・エール(イギリス/4.7%)13.8元

⑥JOLLYシャンディ(広東/0.5%)7元

⑦コロナ・エキストラ(メキシコ/4.6%)7.6元

⑧藍帯パイナップルビール(北京 0.8%)2.2元

※カッコ内は、産地とアルコール度数。価格は、古北カルフールの販売価格。

ビールのアテをデリバリーで

■永和大王
デリバリー受付: 6290-0555(市内総合)
条件:20元以上の注文で無料配送
メニュー:水晶シャオロンポー8元、肉蒸餃子6元など

■必勝宅急送
デリバリー受付: 4008-123-123(市内総合)
条件:配達料は4元均一
メニュー:シーフード・スプリーム・ピザ(9インチ)45元、ハワイアン・ピザ(9インチ)39元など

■肯徳基(KFC)
デリバリー受付: 6242-3574(仙霞店)6864-1207(浦東店)ほか
条件:50元以上の注文で無料配送
メニュー:チキンナゲット(1箱)7.5元、スパイシーチキン(5ピース)30元など

■大娘水餃
デリバリー受付: 6464-9381(徐家匯店)5403-5090(淮海店)ほか
条件:60元以上の注文で無料配送
メニュー:三鮮餃子(6個)4元、エビ餃子(6個)8元など

※上記データは、店舗により異なる場合があります。配達地域などは、各店にお問い合わせください。詳細情報は、上海のデリバリー店を集めたウェブサイトの利用が便利です。
http://www.wm021.com/(上海外売)
http://www.wai-mai.com/(上海外売ネット)

~上海ジャピオン7月14日発行号より

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