街路樹いろいろ

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1865年に誕生 上海初の並木道

1865年11月、蘇州河口から延安東路までの道路の東側に樹木が植えられ、上海市で第1号となる並木道が誕生した。そしてこの街路樹に対する称賛を多くの市民から得たことにより、同年12月頃までには外灘道路の歩道に続々と木々が植えられた。その後徐々に植樹が盛んになり、69年までには南京東路や浙江中路、南京西路などの道路脇に植栽が施され、華山路や楊樹浦路、万航渡路などに街路樹並木ができていったと言う。なお89年末までには、5280株の樹木が街で見られるようになったんだとか。

上海の西南に位置するフランス様式の建物が並ぶエリアは植樹が比較的遅く、1902年に淮海路と瑞金路で木の植え付けがスタート。07年の冬に外馬路、12年には人民路や16カ所の道路で広葉樹の大規模な植樹が始まったんだそう。

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様々な条件を満たし プラタナスが主流に

1860年後半頃には垂れ柳が多かった街路樹だが、1929年にはシンザワグルミやナンキンハゼ、モウハクヨウ、プラタナス、エンジュ、アカシア、キササゲ、ハコヤナギ、ニレなど10種類以上の樹が存在するようになった。ここで、中国政府がよりよい樹木をと、〝街並みに合う、木の枝が風になびく、日差しを遮る〟などの条件を基に探したところ、雨や風に打たれ強く、大きな葉を持つ「法国梧桐(プラタナス)」が市に最も適していると判明。1887年にフランスから250株、93年にはさらに200株を取り寄せし、市内の至るところでプラタナスが見られるようになったのだ。

なお近年猛暑が続く夏季に〝街路樹があることで温度は下がるのか?〟という実験を、道路の両側にプラタナスが立ち並ぶ広さ7㍍5㌢、歩道2㍍5㌢~3㍍4㌢の思南路で行ったところ、日光の遮断率は道路全体で約85%、歩道では95%以上を誇り、1050㍍の並木が続く思南路の温度は、黄浦区の観測温度と比べ1~2度、最高で3・6度下降したなどの結果が出ている。また、プラタナスの葉は直射日光だけでなくチリや灰などを防いでくれるうえ、塩類が表層に交じった「塩類集積土壌」でも成長でき、縦横無尽に根っこが広がるので、たとえ台風が来ても何十年・何百年と立ち続けることができる。そういった理由から現在、黄浦区にある1万8000株の街路樹のうち1万3000株がプラタナスだと言う。

それでは、次のページからは市内で見られるプラタナス以外の木々について紹介していこう。

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上海で見られる街路樹の数々

上海市内で街路樹として植えられている樹木は約30種類存在する。そのうち街中でよく見掛けるものやイチョウ、ケヤキ、ヤナギなどメジャーな木を除いた喬木・灌木をピックアップ。

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香樟(クスノキ)

亜熱帯に分布する樹で、中国では主に長江より南の地域に見られる常緑高木だ。奉賢区の沿江路や菜場路で見ることができる。一般的な高さは20㍍ほどだが、時に40㍍を越える大木に遭遇することもあるんだとか。枝葉はよく茂り、害虫被害が少ないため、長命だと言う。

八角金盤(ヤツデ)

掌を広げたような葉の先端の分かれた様子が8つの角に似ていることから〝八角〟の名が付いた。大木の傍に生えていることが多く、夏から秋に掛けて白く丸い花を咲かせる。

黄馨(オウバイモドキ)

別名ウンナンオウバイやウンナンソケイとも言い、原産地は中国・西南部。高さ2~3㍍の灌木で、鮮やかな黄色い花が下垂して咲く。また、一枚の葉が3つに分かれた複葉で、向かい合って生えるという特徴を持つ。静安区の万栄路周辺にあるオウバイモドキは、毎年3月中旬に見頃を迎える。

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算盤子(グロキディオン)

柿の葉によく似た葉の脇から枝先に一つずつ花が咲く散形花序を出し、黄緑色の小さな花を付ける。花の後に直径1・5㌢の楕円形で緑色の実ができ、赤から黒へと変色。この実から絞った油は薬に用い、歯痛や吐き気などの症状に効くとされている。

国槐(エンジュ)

高さ6~25㍍の落葉樹。先端の尖った葉が特徴で、楊浦区に位置する「楊浦公園」の周りや黄浦区・復興中路に現存する。

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合歓(ネムノキ)

6~7月に掛けて淡いピンク色の花を咲かせるネムノキは、普陀区・子長路の通りで楽しめる。イランから中国に渡ったと言われ、耐寒性が強く桃のように甘い香りを放つ。日本語の「ネムノキ」は夜になると葉が閉じる〝就眠運動〟に由来。

欒樹(モクゲンジ)

静安区・昌平路や延平路、永源路に植栽され、中でも昌平路の並木通りでは、高々と立派に育ったモクゲンジが観賞できる。夏には黄色い花を、秋には提灯のような赤紫の実を携える。また秋が深まるとともに黄褐色に色づいた葉が舞い落ちる様子が美しい。

烏桕(ナンキンハゼ)

中国原産の落葉高木であり、紅葉時には赤色に紫や黄色が混ざったような色合いになる。徐匯区の桃江路と岳陽路に植えられ、秋には多くの市民が見に訪れるんだとか。

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夾竹桃(キョウチクトウ)

閘北区・保徳路周辺で見ることができる樹高5㍍ほどの低木。6月から白やピンクの花を咲かせ、残暑が続く9月まで開花する。見事に咲き誇る花は園芸植物として優れているが、強く有毒な防御物質を持つため、食害する昆虫は少ない。誤って口に入れると、吐き気や倦怠感、下痢などの中毒症状が見られるので、注意が必要だ。

紅葉石楠(カナメモチ)

高さ3~5㍍の小高木で、葉は光沢があり、新葉の色が紅く美しいのが特長。枝の伸びる力が強く、生垣として利用されることが多い。奉賢区・古華路に植栽されている。

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~上海ジャピオン2017年11月24日発行号

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