運命のパートナー
人と人をつなぐリズム
世界の平和への懸け橋に
アフリカンドラムサークル
「JAMMALA」を立ち上げた栗田巌智さん。
ドラムを叩きながら歌い、笑う栗田さんの演奏は、
周囲をも笑顔にしていく。
衝撃受けたドラムの響き
栗田さんは、1999年、大学留学のため来海。
卒業後も上海で就職先を見つけ、
仕事に遊びにと充実した日々を過ごしていた彼に、
2006年2月、運命の出会いが訪れる。
友人と行ったジェームス・ブラウンのライブで、
栗田さんは、同じく演奏を聴きに来ていた日本人女性と意気投合し、
友人を交えて会場を後にした。
そして偶然車に置いてあった太鼓を彼女が
叩きだしたその瞬間、衝撃が走る。
複雑で多彩なリズム、思わず身体が動き出すような、力強い響き。
聞くと、彼女は10代からドラムを始め、
アフリカ留学経験もある、
筋金入りのドラマーであった。
「即弟子入りを志願しました!」と栗田さんは当時を思い返す。
この女性こそが、後に公私ともにパートナーとなる、
福澤悠子さんである。
2人で練習を続けるうち、バンド結成へと夢が膨らみ、
その年のクリスマス、友人を加えた6人で『JAMMALA』を立ち上げた。
太鼓ブームを引き起こす
バンド活動は順調に運び、毎週のように
イベント出演の声がかかった。
仕事を辞めてからは、スタジオを構え、教室も開講。
地方の小・中学校での出張教室や主催イベントなど、
中国各地を回って、ドラムの魅力を広めていった。
「うれしかったのが、上海郊外の朱家角に通ううちに、
そこで太鼓ブームが起こったこと」と栗田さんは目を輝かせる。
雲南の水郷でも、太鼓を置く楽器店がいつの間にかどんどん増え、
街中でアフリカン音楽が流れるようになったのだ。
09年、人気バラエティ番組『天天向上』に出演すると、
知名度も上昇。
今も、放映を観た人や口コミで、遠方から訪れる生徒も少なくない。
日中友好の懸け橋へ
しかし、昨年9月からの日中関係悪化が、
彼らの活動にも影を落とす。
多くのイベントが取り止めになり、
出演する機会があっても日本人だと言えないこともあった。
これが契機となり、栗田さんに、〝日中友好〟という夢が生まれる。
「アフリカでは、ドラムは人と自然、
人と人との対話に用いられるんです。
言葉や文化の違いなんて関係なく、誰もが一緒になって楽しめる、
ポジティブなパワーに満ちたドラムの魅力を、
もっとみんなに知ってほしい」と栗田さん。
その響きを通して、日中のみならず、
いずれは世界を平和の輪でつなげたい。
栗田さんの夢は広がる。
~上海ジャピオン2013年5月10日号