当るも八卦 当らぬも八卦
八字・八卦・手相・風水
中国占いのあれこれ
日本では、あいかわらず占い師がブラウン管の中で大活躍している。しかし、ここ中国も数々の占いの発祥地。ということで、この機会に、〝中国4000年?〟の奥深~い占いの世界の一端をのぞいてみよう!
ひとくちに占いと言ってもその種類は様々。中国で一般的な占いを大別すると「命・卜・相・風水」となるので、まずは順を追って紹介しよう。
宿命、運命を占う八字
始めに、日本でもポピュラーな「四柱推命」は、中国では「八字(ハチジ)」と呼ばれている。宋代に体系だてられた占いで、「生年・生月・生日・生時」を四つの柱としてとらえ、更にこれに出生地などを加えて行う。その人の生まれ持った変えることのできない〝運命〟をもとに占うので、雑誌などでよく見る「星座占い」や、一時ブームになった「動物占い」に近いといえば、分かりしやすい。
ただし、導き出す分類が、一般の12星座占いでは12通り(男女別としない)であり、近年日本で再び脚光を浴びている細木和子氏の六星占術が24通り(男女別としない)であるのに対し、八字では数十万通り以上となる。
現状の吉凶を知る卜卦
次に、映画などでもお馴染みの竹ひごをジャラジャラ引いて占う「八卦(ハッケ)・筮(ゼイ)」は、中国では「卜卦(ボクカ)」呼ばれている。その時の自分に関わる出来事や状況の吉凶を知る際に用いる。例えば、正月にその年の吉凶を占ったり、進路や恋愛の吉凶を占ったりする。時期、問う事柄、さらには、ある意味〝偶然〟や〝気運〟などを加えて占うので、花びらを一枚ずつ抜いていき「好き・嫌い」などと、相手との相性を知る「花占い」に近いといえば、分かりやすい。
経験値と自然に問う
「手相」を見る占いもある。経験に沿って、手の大きさや厚さなどの形を見るほか、爪の状態、掌のすじを読むことで、運勢や健康状態を占う。
また、都市や住宅など、地理に関するものでは「風水」がある。山川や水流など自然の様子を考え合わせ、そこから住宅などの位置を定める。
最後に、歴史小説作家の宮城谷昌光氏はその著書の中で、古代の占いの違いついて、つぎのように説明しているので参考までに。
――(中国古代の占いを)卜筮とひとくちにいうが、卜と筮とは占いの方法がちがい、占うことがらもちがう。
卜には亀の甲をつかう。亀の甲を焼いて、水で急に冷やすと、ひびができる。そのひびのことを兆という。兆のかたちは百種類ほどに分類されてあり、それぞれの兆に占いの辞(ことば)が添付されている。(中略)
筮となるとぐっとくだけて、大事から小事まで、すなわち個人の将来や命運などを問うてよいもので、その占いの方法は、めどぎ草の茎をもちいる、いわゆる八卦で、のちにめどぎ草の茎のかわりに竹ひごがつかわれるようになったが、いまだに目になじみのあるものである。(宮城谷昌光『重耳』講談社文庫)
占いの種類と簡単な概要を頭に叩き込んだところで、次は現場をのぞいてみよう! そこで、実際に占うときの心構えなどを占い師の先生に聞いてみた。
同じ問いは一度だけ 一回で問う内容は一つ
事業、商売、健康、恋愛など、大事から小事まで手軽に占えるうえに、事前に準備するものが必要ない卜卦は、気軽にできることが魅力だ。
ただし、いくつか抑えておきたいポイントもある。「基本は、○○(同じ問いを2度以上占わない)と一卦一問(1回の占いで問う内容は1つだけにする)」と言うのは、中国易学文化交流学会理事で占い師の潘宏老師。複数の問いによって、導き出す結果が、曖昧にならないようにするためだ。
――筮する場合、同じことを二度以上占うことはタブーとされている。「蒙」卦の卦辞に「初めて筮するときは告ぐ。再三なれば瀆(けが)る。瀆るれば告げず」とある。また、結婚を占って戦争の卦が出るような場合も当然あるが、『易経』の文章は全体が象徴であるから、そのケースに合うように読み取ることが必要である。それに、問いを発するのに、これかあれかの形で問うてはいけない。一つの方針に限定して、それの吉凶を問うべきである。(本田濟『易』朝日新聞社)
言うべきこと 言わざるべきこと
占いで導き出した結果に、一喜一憂するのも考えもの。潘老師は、占い師としての自らのポリシーをキッパリと説明する。
「占い師は、占いの結果を、必ずしも全て相手に打ち明けるべきではありません。もし、不吉な結果で、さらにその運命を変えることが不可能な場合は、グッと自分の胸にしまいこむことも必要です」
中国の占い師の間に、教訓として、次のような逸話がある。
――30年代の上海に、後に大家として知られる若い占い師がいた。ある日、彼は当時上海の繁華街であった「四馬路」の路上で占いをしていた。
そこに、航海士を夫に持つ女性が、自らの運命を問いにやって来た。彼は、女性から生年・生月・生日・生時を聞くと、すぐに「八字」を行った。そして、女性に向かって正直に結果の全てを話し始めた。
「あなたはこれから10日間も生きられないでしょう」
その晩、その女性は自宅で自ら首をくくり命を絶った。
その後の調べから、女性が夫の航海中に、夫から託されていた貯蓄を、全て賭け事に使っていたこと、さらに、女性は、10日以内に夫の帰郷することを知っていて、その不安から逃れたくて占い師の元へ足を運んだことが、明らかになった。
「この占い師は、『確かに私が彼女を殺したわけではない。けれど、彼女の死の原因は私にある』と、自分の言った言葉の責任に重みを感じて、その後、祖国を離れ、イギリスへ渡りました。大切なことは、〝言うべきこと、言わざるべきこと〟を、きちんと見極めることです。相手にとって、占い師のひと言が、一生胸に残ることだってあります。正確に占うことは大前提。占い師の倫理として、適切なタイミングで、伝える内容を判断することもあるのです」
潘宏老師
善因縁諮詢(上海)有限公司総経理。中国易学文化交流学会理事。
30年の経験で、八卦(卜卦)、四柱推命(八字推命)、改名などのほか、オフィスや住宅、工場などを選ぶ風水も行う。
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~上海ジャピオン9月29日発行号より