女は男より強いはずだろう。
そうでなければ、なぜ神様が人間を造った時、男より女の寿命を長くしたのか。
男は愛する人を失う苦痛を堪忍しなくてもいい。
自分の愛する人より早く死ぬことが一番の幸せだ。
そして一番利己的だ。
目を閉じて全ての苦しみや寂しさを相手に残し、それに対して残された人は一人でこれらに黙々と耐えていくしかない。
もしそれほど強くないなら、どうしてそんなに巨大な苦しみが忍耐できようか。
なので、神様はわざわざより長い命を女にあげて、そんな苦痛を堪忍させる。
なぜか。
女は男より強いから。
葬儀から家に帰る途中、僕はそんな風に思っていた。
どうしても思いがけないのは、再び、お夏に会ったのが彼女の葬式だということだった。
朝から曇っていて、昼出かける頃になるとついに小雨が降り始めた。
やはりドラマの演出にもよくあるように、こんな天気は葬儀の雰囲気と似合っているものだ。
僕はバスの窓越しに雨のしずくに濡れた街を、ただただしょんぼりと眺めている。
「気が早いなあ」
僕は思わずつぶやいた。
「ずっと君が僕より強いと思ってきたんだけど、なぜ?
もう君と僕との2人のゲ―ムに飽きたのか。僕を傷つけることに飽きたかい、それとも僕に傷つけられるのに飽きたかい。
でもさ、この惨いゲームのルールを決めたのは君の方じゃないのか」
外の雨はいよいよ激しくなって、遠くの街もはっきり見えなくなった。
いやだね。時々こんなことがある。
よく見たいものがよく見えなくて、よく見たくないものは挑発するように一つずつ脳裏に浮かぶ。
「針鼠の物語を聞いたことがある?」
お夏の声がもう一度僕の耳に去来する…。
「針鼠の物語を聞いたことがある?」
「えぇ? 何?」
「教えてあげるわ。雪と氷に閉ざされた森に二匹の針鼠がいる。
天気は非常に寒いからいつ凍え死にするかもしれない。
二匹の針鼠は相手のことを心配して、自分の体温で相手に暖かさを渡したがる…。
しかし残念ながら、体は棘だらけ。いつも相手を抱きしめたとたんに、鋭い棘が相手を傷付ける。
痛いと感じるとすぐ、相手の胸から縮こまって戻る。でもしばらくすると、また相手を抱きしめたい。
そのようにお互いに抱きしめ、傷付け、離れ、またお互いに抱きしめ、傷付け、離れ…」
「………」
「………」
「そのあとは?」
僕は聞いた。
すると、彼女は雪のように白い顔にいたずらっぽい笑顔を浮かべて言った。
「あとって? もう話は済んだでしょ」
(続く)
作者:ちょうてつ
~上海ジャピオン5月29日号より