農民画を通して人生を学ぶ
受け継がれていくもの
外国人として初めて、
上海市の無形文化遺産(非物質文化遺産)である
「金山農民画」の画師として
認定されたコトータケヒコさん。
彼を惹きつけてやまない農民画の魅力とは、
一体何なのであろうか。
言葉以外の何かを
「中国に来た以上、
言葉以外に自分の中で何かを残したい、
という思いは、
来海した当初から漠然とありましたね」
というコトーさん。
しかし、そういう思いを抱きつつも、
日々の煩雑さに追われ、実現できないでいたのだった。
農民画との出会いはふとしたこと。
仕事の関係でその存在を知り、
週末に市内からバスで1時間半ほどの
金山農民画院まで赴いた。
それをきっかけに縁がつながり、
ついには優秀農民画画師・張美玲、
陸永忠両氏に弟子入りして学ぶことに。
平日5日間働いた後、
週末に村へ通っては、
朝から10数時間ぶっ続けで描き通すという
生活を半年間続け、6作品を完成。
2009年5月には、正式に画師として認定された。
人と人とのつながり
農民画の特徴は、平面的なタッチとカラフルな色彩構成。
基本さえ押さえれば、
わりと個人の自由に描かせてもらえるのも、魅力の1つだ。
そのため、一口に農民画といっても、テイストは様々。
コトーさんは、絵を見れば誰の作品か大体分かるという。
コトーさんの描く農民画はと言うと、
現師匠である陸永忠氏によれば、
「日本の漫画みたい」なのだとか。
一方、描くものは、四季折々の村の風景や干支、
民間行事など、昔ながらの題材が多くを占める。
「村の人たちが描く絵を見ると、
彼らの素朴な人柄がすごく伝わってくるんです。
僕はいわゆる都市人間ですから、
今までそういう世界に触れ合う機会ってあまりなくて。
やっぱりそうやって人から人へ
受け継いでいくものっていいな、って思いましたね。
逆に、新しい物には興味がなくなってきちゃいました(笑)」
膨らんでいく夢
今では、何を見ても絵の題材にできるか
つい考えてしまうという。
実際、絵と仕事以外の時間はほとんどないのだとか。
しかし、コトーさんの顔には、
疲れや苛立ちなどといったものは一切浮かんでいない。
むしろ、自宅で週末に教えている
生徒さんたちとの「日中農民画作品展」の開催や、
絵本作りなど、膨らむ夢にワクワクしている。
「金山は僕にとって第2の故郷。
師匠は、人生の師匠ですね」と笑顔で語るコトーさん。
人生の歩みとともに、今後どう変化していくのか。
コトーさんの描く農民画の世界から、
これからも目が離せない。
~上海ジャピオン02月03日号