マートンの夏休み
私は考える男マートン。
実は旅行好きで、
半年に1回程、各地を周っている。
今日は、夏休みシーズンを外して、
浙江省の嵊泗列島にバケーションに来ている。
9月とはいえ、日中の日差しはまだ強いな。
早速ひと泳ぎしてこよう。
…少し泳ぎ疲れた。
浜に上がってビールでも飲むか。
心地良い疲労に包まれた身体に
ビールが沁み渡る…が同時に、
腹も冷えたようだ。
浜でするのも何だし、
宿の小部屋(トイレ)へ行くか。
シャワー付小部屋
開放的でシンプルな空間に、
シャワーと便座が仕切りもなく並ぶ。
シャワーと言えば、
「人間は考える葦である」という一節で有名な、
哲学者・パスカルが考えた原理に基づいて
造られた装置だ。
彼はこの一節で、
人間は葦のように弱いが、
「考える」力、
つまり〝哲学〟する素晴しい能力を持つと説く。
宿の主人が、
この哲学に共感しているのは間違いないが…
そうか!
シャワー=パスカル、
パスカル=哲学と考えると、
シャワー=哲学となる。
そしてシャワーと便座に仕切りがないことから、
哲学と便座の境界はない。
よって、便座=哲学、つまり、
小部屋(トイレ)=哲学の数式が成り立つのだ!
完璧な理論だ。
ありがとう、いい小部屋(トイレ)であった。
~上海ジャピオン2012年9月21日号