食道をゆく 第58回 biangbiang面

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ビアンビアンミエン
biangbiang面
~陝西省咸陽市~

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太い麺は弾力があり、噛み応えがある。1杯7元程度と、財布にもやさしい庶民の味

貧しい秀才があわや食い逃げ
苦難の策で考えた漢字

 その発音は普通語に存在せず、パソコンでは入力できない文字「ビアン」。
全56画にも及ぶこの漢字がついた料理が、「ビアンビアン麺」だ。
小麦から作った麺は、きしめんをさらに太くしたような形状が特徴。
では、なぜこのような名前がつけられたのか? 
その誕生由来には、こんな伝説があった。
 その昔、才能はあるがチャンスに恵まれず、貧しい暮らしを送っている科挙受験生が、咸陽にやってきた。
彼がある小さな麺屋を通りかかった時、中から「ビアーン、ビアーン」という音が、絶え間なく聞こえてきた。
死ぬほど空腹だった彼が中をのぞくと、ふんどしのように太く長い麺が、次々と鍋の中に入れられている。
碗には豆もやしなどの具が盛られ、油と唐辛子の匂いが香ばしい。
思わず彼は「1杯くれ!」と叫んだ。

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店の看板などでは、漢字も表記されている

 汗をかきかき熱々の麺を食べ終え、いざ会計という時になって、
彼は自分が一銭も持っていないことを思い出した。
焦った彼が何とか策を練ろうと、ふと「この麺は何と言う名前だ?」と聞いたところ、
陝西省の方言で、「ビアンビアン麺」だという。
さらに「漢字は?」と聞くと、誰も知らない。
そこで彼は、「俺が〝ビアン〟という漢字を作ってやろう。だから無料にしてくれ」と提案した。
 その時彼が頭をしぼって考えたのが、咸陽の地理や世の中の理についてを全て盛り込んだ漢字だった。
完成とともに野次からは喝采が飛び、瞬く間に「ビアンビアン麺」はその名を馳せたのだった。
 かつては秦の始皇帝も愛したと言われる庶民の味を、是非本場で堪能してみよう。

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【アクセス】
上海浦東空港から西安咸陽空港まで、飛行機で約2時間半

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~上海ジャピオン3月18日号

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