郷土料理で味わう上海和食① 産地直送の、野菜、魚、調味料、そして地酒!

産地直送の、野菜、魚、調味料、そして地酒! 郷土の味に舌鼓を打つのは、食の贅沢な愉しみのひとつだ 豊熟する上海和食シーンを、郷土料理という視点で再発見してみよう

【青森】津軽家

「ここは青森だ」と
思える空間を作る


 海外では、祭りの季節にホームシックになる日本人が多いと言う。祭ばやしの音、派手な飾り、親戚一同でつつく季節の料理――異国では出会えないだけに、想いがつのるのだろう。
 上海で、そんな想いを抱いた時は、「津軽家」の門をくぐってみよう。入口で客を迎えるねぶた。店内に飾られた巨大な津軽凧。流れる津軽三味線の音色。青森出身でなくとも、ひとまず上海を忘れるはずだ。
 「ここは青森だと思っていただけるよう、苦心しています。店に飾る〝見送り〟(ねぶたに飾られる絵)も、青森のねぶた絵師さんにお願いして描いてもらったんです。ねぶた人形は、壊さないように持ってくるのが大変でした(笑)」
 そう笑うのは、オーナーの葛西孝さん。そして何よりの苦労は、もちろん食材だ。メニューにはずらりと津軽料理の数々が並ぶ。そのため、冬ならタラ、イカなど津軽海峡の幸を、春なら採れたての山菜を、青森から次々と仕入れる。「食べ物で季節を感じることは、とても大切です。ぜひ旬の食べ物を食べていただきたい」。

△季節の山菜を使った津軽家のメニューの数々。(手前から)ふきのとう天ぷら40元、バッケみそ30元、竹の子寿し60元(いずれも季節限定、無くなり次第新しい食材のメニューに入れ替わる)

 青森は、今は山菜の季節。北国に遅い春を告げるふきのとうに続き、行者にんにく、竹の子、わらび、こごみなどの山菜が、メニューに次々登場する。北の季節を感じる献立は、まさに津軽料理の醍醐味だ。
 そして、食材と共に、切らさないように苦労しているのが、青森名産の大吟醸・田酒(でんしゅ)。二合半の竹筒で出る粋な計らいを愉しみながら、津軽特産のツマミと共に味わおう。

△田酒(二合半375元)には、みがきにしん(60元)や赤ホヤの塩辛(50元)がぴったり合う

【津軽家】
TEL 5208-2332
住所 興義路8号 万都中心2階
営業 11時~14時 17時~23時

【高知】才谷屋

龍馬と共に味わう 土佐名産と「海援隊」


 なぜ上海で、日本の地方料理にこだわるのか? 土佐料理店「才谷屋」の答えは、土佐藩出身で「海援隊」を率いて幕末を駆けた、坂本龍馬への愛着だ。
 新装開店は、龍馬の誕生日かつ命日に合わせ、2003年11月15日。店名は、龍馬の変名「才谷梅太郎」から。店内には、陶器像、刀のレプリカ、写真ボードなどの龍馬グッズがぎっしり。もちろん本棚は、龍馬の小説・マンガが占領する。
 料理のこだわりは、とにかく素材。「土佐名産」を銘うった料理には、すべて高知の素材を使う。そしてなんと、独自に正規ライセンスを取得し、高知焼酎・海援隊を輸入している。

△かつおの酒盗(35元)、土佐飯盗茶づけ(35元)、うるめの丸干し(30元)。写真右の茶づけは冷やして食べても美味。海援隊(ボトル280元)は、土佐独特の杯「べく杯」で飲むのも乙

 「でも、広く世を見た龍馬にならい、土佐に固執しません」そう笑うのは、大の龍馬ファンである日本人オーナー。その通り、土佐に限らず、日本各地から旬の素材を運んでツマミに出したり、創作料理を作ったりもする。最近は、群馬の山ウド、千葉のミツバなど。夏には、谷中しょうがも出る。土佐を飛び出して全国を駆けた龍馬と共に、各地の素材を味わってみよう。

△かつおの飯盗にぎり寿司(35元)。これを含め「土佐名産料理」はすべて高知素材で作る

【才谷屋】
TEL 6219-7398
住所 仙霞路299号 遠東国際広場B棟1階
営業 11時~14時 17時~22時半

【長崎・沖縄】藍屋

惣菜と80種以上の酒 海の香りがする居酒屋


 店に入って〝海の香りがする〟と感じたら、それは正しい印象だ。何せ「藍屋」の特徴は長崎料理。メニューには、ヤリイカ、きびなご、くじらなど、南の海で捕れた食材が豊富に揃う。当然、ちゃんぽん、皿うどんなどの定番料理もある。
 「調理具も長崎から持って来たもの。食材のほか、例えばゆず胡椒も長崎の家で作ったものを持ってきてるんです」
 そう話す長崎出身のオーナー・勝山さんは、沖縄に住んだこともある。ゴーヤーチャンプル、てびち(豚足)、タコライスなど、お客に請われて作り始めた沖縄料理も今ではすっかり充実。特に、海ぶどうは人気で、それ目当てのお客も多い。

△飲みの締めくくりメニューとしても定番になっている長崎ちゃんぽん(40元)。上海の豚骨は、日本の味と大きく違うため、このスープの味を実現するためには多くの時間を費やした

 その南国の雰囲気を、自家製さつま揚げ、アジ南蛮漬け、ほたるいか干しなど、日替わり惣菜が並ぶカウンターが盛り上げる。そして店の壁を埋め尽くす80種以上の焼酎・梅酒! 中には魔王、森伊蔵、村尾などの貴重な酒も。漁から上がった男たちが、がらりと戸を開けて入って来る――そんな空想を愉しみながら飲むのも一興だ。

△自家製さつま揚げ(40元/1枚)、海ぶどう(40元)、里芋のゆず胡椒和え(25元)

【藍屋】
TEL 6261-9970
住所 延安西路2894号
営業 17時半~24時 

~上海ジャピオン5月11日発行号より                               

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