世界の自動車産業を席巻
中国の自動車メーカーで10強に入る「吉利集団」。会社設立は1986年で、当時は浙江省台州市に本社を構え、冷蔵庫メーカーとしてスタートした。
自動車産業に参入したのが97年。参入後に急成長を遂げ、2010年、米メーカー「Ford」の傘下だったスウェーデンの「Volvo Cars」を買収。その勢いで12年には、経済誌『Fortune』の「企業総収入ランキング」(以下世界ランク)でトップ500にランクインした。
さらに同集団は18年2月、「メルセデス・ベンツ」の展開で有名な独大手「ダイムラー」の発行済み株式総数の9・69%を取得し、筆頭株主となったことを明らかにした。欧州企業の経営に対して影響が強まるとともに、「ダイムラー」が力を入れる電気自動車(EV)の技術を取り込む狙いがあると言う。
日本電機メーカーを買収
かつて日本の電機産業を担ってきた「東芝」。テレビ・家電製品・パソコン…と、多くの電化製品を製造してきた。しかし中国の家電メーカー「美的集団」が2016年6月、冷蔵庫や洗濯機などの白物家電を扱う「東芝ライフスタイル」を買収。
美的集団は、エアコンや洗濯機などの白物家電の販売を主に扱う。中国の家庭・企業であれば最低1台は同社の商品を購入しているのではないかと思われるほど、中国では有名な電機メーカーだ。国内にとどまらず、200の国・地域でも市場を広げ、16年の世界ランクで初めて500位以内に入り、今年は323位にまで上昇している。なお東芝は326位。
さらに同社は、ドイツで100年以上の歴史あるロボットメーカー「KUKA」も手中に収めるなど、ロボットやAI技術にも力を入れている。
市場独占へ拍車を掛ける
言わずと知れた中国の大手企業「阿里巴巴」。eコマース事業「天猫」やネット決済システム「支付宝(アリペイ)」を、多くの人は利用したことがあるだろう。
同社は昨年、〝東南アジアのアマゾン〟と言われる、シンガポールやマレーシアなど周辺6カ国で展開するeコマース企業「Lazada」を買収。同企業は独・ネット会社が2011年に東南アジアに設立したものだ。アリババが同企業を買収したことで、発展途上にある東南アジアを市場ターゲットに据え、さらなる事業拡大に拍車を掛けた形となる。
また国内に目を向けると、アリババはデリバリーサイト「餓了麼」を展開しつつ、デリバリー業界大手の「百度外売」を今年2月に買収。デリバリーや口コミ評価サイト、イベントチケット販売、スーパー経営と、アリババと美団が競っている。
M&Aを大規模展開して成長
中国にいる人なら誰もがインストールするアプリ「微信(We Chat)」。その運営を行っているのが、深セン市に本社を構える「騰訊集団」だ。「微信」以外にも「QQ」や「QQ音楽」、「騰訊視頻」、「騰訊地図」…など、ソフトウェアを中心に事業を展開。2004年には、中国香港の「香港証券取引所」に上場している。
そんな「騰訊集団」は16年、ソフトバンクが出資するスウェーデンのスマートフォン向けゲーム開発会社「Supercell」を約73億㌦で買収。この開発会社は、「クラッシュ・オブ・クラン」や「ヘイ・デイ」などの有名アプリゲームをリリースしており、基本サービスが無料のこの2ゲームで1日240万㌦(約2・7億円)を稼ぎ出したこともある。「騰訊集団」は04年以降にM&Aを大々的に進め、これまでのM&A取引額は537億元に上ると言う。
米の超名門ホテルを買収
誰もが一度は訪れたいと思う都市、米・ニューヨーク。その一等地に構える「ウォルドルフ・アストリア・ホテル」は、1893年創業の歴史ある名門高級ホテルだ。中国・清代の要人や、歴代の米大統領も宿泊するほど格式高いこの場所を、2014年に買収したのが中国の大手保険会社「安邦保険集団」だ。
同社は、中国国内31の省市で各種保険商品の販売や資産管理を行っており、顧客数は2000万人以上。昨年の世界ランクでは、過去最高の139位を記録するなど、創業からたった十数年で民営の〝エリート企業〟に上り詰めている。同企業はまた、サンフランシスコやニューヨークなどのランドマーク的ホテルを所有する「ストラテジック・ホテルズ・アンド・リゾーツ」を65億㌦(約7200億円)で買収。中国人が使うアメリカ旅行のマネーを拾い上げるのが目的という見方が有力だ。
世界最大の映画チェーンに
映画制作や映画館の運営、商業施設の所有などで知られる「万達集団」。映画なら「万達電影」、映画館なら「万達影城」、商業施設では上海市虹口区の五角場にある「上海五角場万達広場」が思い浮かぶ。なお創業は企業名通り、遼寧省大連市で不動産会社としてスタートしたが、現在は北京市に本社を構える。
同社は2012年、アメリカの映画館チェーンナンバー2だった「AMCエンターテインメント」を26億㌦で買収。アメリカの映画業界で一気にその名を馳せ、ハリウッドで「万達」を知らないスターはいないとも言われている。その4年後、同社の傘下となった「AMC」が米映画界4位だった「CarmikeCinemas」を買収、「AMC」が同業界で1位に。さらに「万達」はイギリスを拠点とする欧州の映画興行チェーンも買収して、世界最大の映画チェーンとなった。
日本の電機企業を傘下に
元々プラスチックやゴムを扱っていた「鴻海集団(前身は鴻海塑膠企業有限公司)」。1988年に広東省深セン市に進出後、パソコンや電子部品などの電子機器分野へと転換。なお中国大陸では、「富士康(FOXCONN)」の名を使用している。それからというもの、同分野で頭角を現し毎年増収はうなぎ上り、今年7月に発表された世界ランクは中国台湾地区でトップの24位に。ちなみにこの順位、「ホンダ」や「AXA」よりも上で、「Ford」の背中が見える位置だ。
「鴻海集団」は、〝液晶のシャープ〟と呼ばれた日本の大手電機メーカー「SHARP」を2016年に買収。これは、日本の大手電機メーカーでは初となる展開となった。その後も電子部品分野を中心にM&Aを実施。さらに同社の傘下となった「SHARP」は今年6月、「東芝」のパソコン事業を買収した。
ヒルトンをも手中に収める
赤い翼が目印の海南航空。本社がある海口市など中国国内はもちろん、東京や札幌、シカゴ、バンコク…など、世界各地を飛び回っており、搭乗したことがある人もいるだろう。その航空会社を抱えるのが、コングロマリット企業「海航集団(HNA)」だ。
同社は積極的にM&A政策を進め、フランスやケニアなどの中規模航空会社、航空輸送会社、機内食生産会社などの航空関連の企業を次々に買収。物流や旅行、金融業界などにも進出し、2016年にはついに、世界的ホテル企業「Hilton」の株式25%を買い占め、傘下に収めるまでに。ドイツ最大の銀行の筆頭株主にもなるなど、世界経済に幅を利かせている。なお財務体質を強化するため、同社はドイツ銀行の株式を売却すると見られている。
~上海ジャピオン2018年9月14日発行号