素朴で豪快な料理が特徴
中国東北地方は、一般的に中国の一番北側、遼寧省、吉林省、黒竜江省の3省を指し、広義には内モンゴルの東北部も入る。海や国境が近く、昔から様々な民族が暮らし、多文化が混在する地域だ。
夏が短く、冬は気温がマイナス20~30度と厳しい寒さに襲われる場所。東北地方の料理「東北菜」はこの長い冬に備えるため、保存食や煮込み料理、温かい料理が大半だ。「水餃子」に代表される小麦粉を使った料理のほか、羊肉や牛肉が、身体が温まるとしてよく使われる。また冬は家の中にこもって家族や親せき一同で過ごすため、料理はボリュームのある大皿でドーンと出される。
クセのある調味料やトウガラシを使った料理は少なく、どれも醤油や黒酢ベースの素朴な味付けで、日本人にも食べやすいラインナップ。こってりとした料理に疲れたら、生野菜や湯葉をそのまま食べるあっさり料理で箸休めもできる。飾らないメニューの数々は、田舎料理の古き良き雰囲気を思わせる。
温かなムードのレストラン
東北料理レストランの雰囲気は温かく、店員さんは明るく親切。これは、情熱的で情に厚い東北人の性格が影響している。また東北人はユーモア好きとしても知られ、レストランの中には店員さんが伝統芸を披露したり、歌を歌ってくれたりするところも。さらに店員さんの内装や服装は、東北地方特産の布「東北大花布」の絵柄から、赤地に牡丹の花でいっぱい。春節の年越しムードを感じるのにピッタリのレストランといえるだろう。
それでは次のページから、ぜひオーダーしてほしい、東北料理の数々を紹介していく。
①地三鮮
ナス、ピーマン、ジャガイモに醤油と砂糖を加え、たっぷりの油で炒めた料理。見た目に鮮やかで、シャキシャキのピーマン、しんなりとしたナス、ホクホクのジャガイモと、三種の食感が楽しい。子どもから高齢者まで食べやすい醤油味だ。
②鍋包肉
豚ヒレ肉に片栗粉をまぶし揚げて、甘酸っぱいソースを掛けたもの。黒竜江省で働いていた料理人が、ロシアの客人のために考案したという。元々はポークフライに塩辛いソースを掛けていたのを、ロシア人好みの甘酸っぱい味にアレンジ。また「鍋包肉」という名前も、ロシア人が「鍋爆肉」を聞き間違えて記しのだと言い伝えられている。ロシアと深く関わりのあるメニューだ。
③抜絲地瓜
日本人におなじみの「大学イモ」を、アツアツの状態で提供する。サツマイモを箸で取る時に飴がビヨーンと伸びるので、水に浸けて飴を固めるためのボウルを提供してくれるレストランも。逆に時間が経つと大皿の上で飴が固まってしまい、剥がすのに苦労する。料理に使う食材はサツマイモが王道だが、店によってはナツメが入っていたり、バナナバージョンの「抜絲香蕉」だったりする。
④排骨豆角貼餅子
見た目に豪快なこの料理は、味も結構大味。スペアリブとサヤエンドウ、トウモロコシを煮込んだものにトウモロコシ粉のパンを添えて出す料理で、これぞ田舎料理、という素朴さ。大勢で囲んで味わいたい料理だ。
⑤韮菜盒子
焼き餃子とピロシキを足して2で割ったようなパン。半円のサクサクしたパンを割ると、中からニラ、豚肉、玉子炒めのアツアツ餡が出てくる。手のひら以上の大きさなのに、1つ7元と破格の値段だった。
⑥大豊収
大豊作、というめでたい名前の料理は、キュウリやネギ、赤カブといった野菜を湯葉のシートでくるみ、ガブッといただく料理。
付け合わせのひき肉ソースがしょっぱく、食欲を刺激する。こってり系料理に疲れたら、これで口の中をさっぱり爽快にしよう。
⑦大拉皮
太く平べったい春雨に刻んだキュウリとゴマダレを掛け、混ぜ合わせたもの。大きな皿でプルプルと揺れる春雨は、もはや麺というよりデンプンの塊と呼ぶにふさわしい。ツルツルと箸を滑らせつつ何とか口に運ぶと、ゴマダレの濃厚で甘い香りが口いっぱいに広がり、もっちりとした冷たい春雨がのどを通り抜けていく。キュウリのシャキシャキ感もアクセントとして、いい仕事をしている。
⑧酸菜肉餡水餃
最後は北の料理といえばコレ! 水餃子で締めよう。
東北料理レストランで出される水餃子には様々な餡があるが、この「酸菜」が入ったものが故郷の味。白菜からほのかに感じる酸味が特徴的だ。餃子の皮が甘めなのもポイント。甘い皮×酸っぱい餡で何個食べても飽きが来ず、餃子ループに陥ること請け合いだ。
~上海ジャピオン2021年2月5日発行号