今夜食べたい老字号レストラン

長江の海産物を味わう

淮揚料理とは、江蘇省淮安市や揚州市エリア発祥の料理で、中国四大料理の一つ。長江で獲れる海産物を使った料理が多い。

「老半斎」の名物料理は、なんと言っても長江の「刀魚(チョウセンエツ)」を使った麺「刀魚汁麺」(36元)。魚の出汁がしっかりと聞いたスープにひたひたと浸かる細麺は「天下第一光麺(世界で一番の具なし麺)」と呼ばれ、50年の長きに渡り上海市民に愛されてきた。昨年から長江で刀魚の捕獲が禁止され、産地が崇明区や浙江省産に変わったが、味はそのままでおいしいと好評だという。

同店は創業121年と老子号の中でも屈指の老舗。ここ数年で「刀魚汁麺」が再びブームとなり、人気が再燃。その際、サービスの悪さなどが問題となったが、現在は改善され、庶民的食堂として連日老若男女で賑わう。

今どきっぽい141歳

広東省発の老舗レストランで、2019年、ついに上海に進出。飲茶や月餅が有名で、プリプリのエビが入ったシュウマイ「陶陶居大蝦餃」(35元)や、甘いパンの「水牛菠蘿包」(35元)が人気メニューだ。

そして同店の素晴らしいところは、時代に合わせたプロモーション。近年ではレンタサイクルブランドや『ミニオンズ』のキャラクターとコラボしたり、防腐剤不使用の健康志向メニューを開発したりと、トレンドに敏感に対応。SNS映えするブタの形をしたシュウマイや、伝統的ながら、乙女心をくすぐるスタイリッシュな内装など、創業141年とは思えぬフットワークの軽さとアイデアで、若者の心をガッチリ掴んでいる。

〝網紅店(ネットで話題の店)〟に引けをとらぬ〝映える〟老舗店で、飲茶タイムはいかが?

上海人のデートスポット

「吃西菜到紅房子(西洋料理を食べるなら紅房子へ)」。1990年代に生まれた上海人の合言葉で、当時のドラマのセリフにも登場するほど流行した。

元々はイタリア人ルイ・ロベール氏が開店した「CHEZ LOUIS」という西洋料理店で、後に上海人が経営を引き継ぎ「紅房子西菜館」に改名。当時としては数少ない、本格的な西洋料理を出す店として、上海人の定番のデートスポットになった。

同店は現在も淮海中路で経営を続け、店内は若い頃から通っているのであろう、上海人のマダムで賑わう。メニューはステーキやパスタのほか上海式ボルシチ「羅宋湯」(30元)やトンカツ「炸猪排」(前菜などフルコース付きで198元)など中国ならではのメニューも。昔ながらの上海風西洋料理を提供し続けている。

寺生まれの精進料理

上海市で創業し、全国展開した精進料理店「功徳林」。浙江省杭州市の城隍山にあった常寂寺の和尚の弟子が開いた店で、1920年代には、あの魯迅もよく通っていたという。

同店の料理は仏教の戒に基づき、動物性の食材やネギ、ショウガ、ニンニクなどの「五葷(ごくん)」と呼ばれる野菜は一切使わない。それでも、上海蟹の味噌炒めの味と食感を見事に再現した「清炒蟹粉」(48元)が人気メニュー。また、寺で生まれた料理もあるそうで、同じく同店人気料理の、キノコと野菜の炒め物「十八羅漢」(46元)は、初めてこの料理を食べたお坊さんが18人いたので、この名前が付いたんだとか。

ほか、同店の月餅も子どもから老人まで食べられるやさしい味が人気で、中秋節前は行列ができるほどだ。

鶏料理を出し続けて80年

元々は兄妹が営んでいた小さな屋台で、「白切鶏」と鶏粥を提供していた同店。現在は「酒家」と看板を出しているものの、大広間では客ができあがった料理を自分でオレンジの盆に乗せ、テーブルまで運ぶという素朴なスタイルで営業している。

同店は浦東新区に専門農場を持ち、飼料にまでこだわり抜いた生後4カ月の雌鶏を使用。柔らかく煮た「白切鶏」が看板メニューだ。黄色い皮の下に隠れた白くすべすべした鶏肉は、骨が取り除かれており、高齢者でも食べやすい。

かつて「美好人生、鶏不可失(素晴らしい人生には鶏が欠かせない)」というコマーシャルがヒットし、上海人の間で「白切鶏」といえばココ、というイメージが定着した。約80年間変わらぬ味を確かめに足を運んでみよう。

高級中華が親しみやすく

清の時代から250年に渡り営業を続ける「松鶴楼」。上海本店は外灘エリアにあり、高級中華を提供する。そんな同店は昨年から新ブランド「松鶴楼麺館」を打ち出し、麺や小籠包を中心とする、価格を抑えた食事を出す店として展開を開始。上海市内の有名な商業施設内に続々と出店し、現在は市内に11店舗のほか、北京市や浙江省杭州市にも店を構える。

本店より安め…といえども、麺としてはやや高めの値段設定。蘇州式なので、基本は麺と具を分けて提供する。さらにスープのベースも醤油と塩から選択可。シンプルな内装の店内は、混雑時には相席になることもあり、とてもカジュアルな雰囲気だ。

250年の伝統を引き継ぎつつ、現代風に生まれ変わったレストランは一度行ってみる価値あり。

上海B級グルメの名店

うす~いトンカツと、パリパリに揚げた平べったい餅に、甘辛いタレを掛けていただく上海の伝統料理「排骨年糕」。ここ「鮮得来」は「排骨年糕」で「中国名小吃」賞など数々の賞を獲得してきた名店だ。

創業者は何世徳という男性で、家族3人がテーブル3台を使い、学生向けに屋台を設けたのが始まり。近隣の学生が顧客で、最初は牛乳やパンだけを売っていたのだが、学生のリクエストで「排骨年糕」や焼きイカ串を取り扱うようになったんだとか。そんな成り立ちだからか、同店は今も激安価格。「排骨年糕」(15元)、「特色拌麺」(10元)など、庶民の財布にやさしい価格設定となっている。

また「排骨年糕」の特製甘辛ダレは、店頭でも10元で販売中。チープな上海料理を楽しみに行こう。

その技、無形文化遺産

「王家沙」は点心や中華菓子で有名なブランド。特に清明節に食べる草餅「青団」などが大人気で、ピーク時には行列ができ、1日に16万個も売り上げることがあるんだとか。店内では小籠包やワンタン、麺が楽しめる。

同店に関しては今年8月、ドキュメンタリー番組『尋味・王家沙』が放映された。この番組では、同店の75年に渡る波乱万丈の経営史にスポットを当て、同店が現在の地位を確立するまでを描いている。また無形文化遺産に登録されている、点心作りの奥義「王家沙本幇点心制作技芸」にもフォーカス。代々伝わる伝統技術を垣間見られる。

この番組を見てから同店の点心を食べれば、おいしさひと際かも?

~上海ジャピオン2020年12月11日発行号

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