煩悩溢れるマートン
私は考える男マートン。
年末は何かと物入りで、
身体だけでなくサイフも寒い…
いっそ、中国マカオのカジノに行って
ひと山当ててやろうか。
いや、大負けでもしたらそれこそ年が越せん…。
いかん、こんな煩悩まみれの頭では
真理など見つかるはずもない。
さあ、哲学散歩に行くぞ。
…しかし、寒くて、催してきたな。
向かいにある花園住宅で、
小部屋(トイレ)をお借りしよう。
カジノ必勝の哲学?
扉を開けると、セピア色の写真が
目に飛び込んでくる。
ほぉ、これは上海租界時代の競馬場の風景か。
当時のブルジョアが暮らしていた、
ここ、花園住宅に
「スポーツオブキングス」の別名を持つ競馬。
まさに最高の組み合わせだな。
私は馬と聞くと、歯をむき出す表情が思い浮かぶ。
あれは一見ニッと笑っているようだが
その実、最良の相手を探すための、
フェロモンを嗅ぎ分ける生理反応なのだ。
純朴そうな顔をして、なかなかの策士…
そうか!
これこそがキング、
つまりトップになるための哲学なのだな。
時と場合に応じ、笑って相手を欺く、
この戦法ならカジノも怖くない!
そうとわかれば飛行機手配だ。
ありがとう、いい小部屋(トイレ)であった。
~上海ジャピオン2012年12月28日号