豊作、無病息災を祈願
1月も半ばを過ぎ、
寒さも一段と厳しくなってきた。
中国では、1月19日(土)に
「臘八節(la4ba1jie2)」を迎える。
臘八節とは、旧暦12月8日(臘月初八)に、
臘八粥を食べ、家族の無病息災を祈る祭日で、
1000年以上の歴史をもつ。
日本でも1月7日に七草粥を食べ、
家族の平安無事を祈る、人日の節句があるが、
それとよく似たものだ。
中国古来の伝承では、
かつて、臘月(12月)に「臘祭」という祭事が
行われていた。
その際、先祖に感謝の意を表し、
その1年の収穫を祝うため、
穀物や野菜が豊富に入ったお粥を食べたことが
起源になっているようだ。
穀物たっぷり臘八粥
臘八粥とは、今日、中国全土で親しまれている
「八宝粥(五目あま粥)」のこと。
地域によって材料は異なるが、
主に米や粟、ナツメのほか、
ピーナッツや小豆、リュウガン、
ハトムギなどを入れて炊く。
砂糖や蜜を使って全体的に甘く味付けられ、
夏に食欲を増進させる健康食品としても知られている。
1月19日は、家族、親戚と自宅や
レストランで臘八粥を楽しむほか、
地元の寺社などでも、毎年臘八粥が振舞われ、
上海市の玉仏寺と龍華寺では毎年午前9時から、
臘八粥の炊き出しを行う。
無料なので、興味のある人は、
地元の祭事の雰囲気を味わいに行ってみよう。
美食にも薬にも中国粥
日本でもすっかりお馴染みの粥だが、
中国粥とはどういったものなのだろうか?
まずは歴史から追ってみよう。
粥の誕生は2000年以上前にも遡る。
636年に編纂された歴史書『周書』には、
中国五帝のひとり、黄帝が穀物を煮て、
これを粥と称したという記録が残っている。
また、同じく歴史書の『史記』に、
医者が粥で王の病を治したとの記述があり、
古代から食用として、また薬用として、
宮廷内から庶民まで親しまれていた料理と言えよう。
さて、この中国粥だが、
一般家庭でよく食べられるのは、
前述の八宝粥やヘルシーな緑豆粥、小豆粥などだ。
また、その地域独自のものもあり、
北京など河北エリアでは、
「小米粥」と呼ばれる粟粥が、
一般家庭や街の屋台で、
マントウと一緒に食されることが多い。
広州では、鶏肉や干し貝柱を出汁に、
肉や魚、野菜などを入れ、
土鍋で炊く「潮汕砂鍋」が主流だ。
さあ、次ページからいよいよ中国粥を紹介してゆく。
この冬は、あったかいお粥で、
寒さを乗り切ろう!
①鶏粥 76元
上海市に4店を展開する、
土鍋粥専門店「億方砂鍋粥」の「鶏粥」。
2~3人前とあるが、
正直4人でやっと食べきれるほどのボリュームだ。
こちらの「鶏粥」は、鶏1羽丸ごと使い、
米にもスープにも染みた、
鶏ガラ100%の濃厚な味とコクがたまらない。
もちろん鶏肉もたっぷりで、
お玉で少しかき混ぜると、
底の方から鶏肉がゴソリと現れる。
このほか、貝柱、野菜、鶏肉などの
具材一式がセットになった、
「一品粥」(76元)も人気。
②田鶏粥 68元
こちらは定西路にある広東粥専門店。
定西路はお粥専門店がいくつも立ち並び、
「潮汕砂鍋粥館」の名が付く店が非常に多いので、
店を探す時は注意したい。
こちらのオススメは「田鶏粥」。
何を隠そう、「田鶏」とはカエルのこと。
味がササミに似ているため、
〝田畑の鶏肉〟と呼ばれ、田鶏の名がついた。
恐る恐る食べてみると、
その味、まさしく鶏肉!
それほど、大した臭みもなく、
サッパリとした味わいで、
トッピングメニューの卵や野菜、
海苔などを足してみれば、
また違った風味が楽しめる。
「皮蛋粥」や「海鮮粥」など、
ノーマルの粥も提供しているので、
カエルはちょっと…という人は
別のメニューを頼んでみよう。
③皮蛋痩肉粥 8元
24時間営業の「三宝粥鋪」は、
おひとり様用の粥をメインに、
計20種類以上そろえている。
低価格で味もよし、という評判から
リピーターも多いようだ。
人気は、中華粥の中でも特にメジャーな
「皮蛋痩肉粥」。
「痩肉」とは、脂身の少ない豚肉赤身のこと。
具材はこの痩肉とピータンのみで、
塩味の淡泊な出汁にマッチしている。
低脂肪であっさりとした粥なので、
ヘルシー志向の人にもオススメだ。
④膏蟹砂鍋粥 118元
広東系土鍋粥をメインに提供するこのお店。
来店客の大多数が、
看板メニューの「膏蟹砂鍋粥」を注文するのだとか。
新鮮な海水域の蟹、
ノコギリガザミを1杯使った同品は、
注文してから料理が運ばれてくるまで、
30分ほど待たなければならない。
その甲斐あってか、
蟹の旨味が存分に出汁に行き渡り、
最後の米1粒まで残せない。
まるで超濃厚な蟹雑炊を食べているようだ。
お楽しみはこれだけではない。
料理名の「膏蟹」の通り、
蟹ミソをたっぷり蓄えた雌蟹が入っている。
そのため、出汁と米、
蟹ミソの甘味を一度に楽しめ、
まさに至福のひと時。
⑤生滾魚片粥 10元
ややローカルな粥専門店。
用紙に記入して注文するので、
中国語に自信のない人でも、
気軽にオーダーできる。
料理名に付く「生滾」とは、
「煮立て、炊き立て」を意味する。
その名の通り、活きのいい
ソウギョの切り身が加わり、
程よい刺激と魚の淡白な味わいが印象的だ。
さらに、ショウガと塩コショウで
味付けされた出汁に、
身体もあったまる。
こちらは、粥店では珍しい
デリバリーサービスも行っているので、
外出が億劫な人は、
利用してみてはいかが?
⑥艇仔粥 40元
料理名だけでは、どういうものなのか、
全く想像がつかない。
もともとは、広州の海を訪れた旅行客に、
小船の上で提供した海鮮粥のことだそうだ。
なるほど、船の上で出されたというだけあって、
魚の切り身に浮き袋、干しエビにホタテ貝柱と、
海の幸が満載だ。
1碗40元と割高感は否めないが、
シンプルな塩ベースのスープに、
具材が海のごとく広がる滋味豊かな一品。
⑦菜泡飯 48元
「泡飯」は上海料理の1つで、
日本の雑炊とよく似ている。
こちらの「菜泡飯」は、かけ汁が、
ご飯がすべて浸かるくらい注がれ、
具材は青菜やネギ、シイタケなど。
野菜の素朴な味わいを楽しめる。
⑧海鮮泡飯 18元
続いては、イカやエビ、ナマコなど、
新鮮な海の具材を使った「海鮮泡飯」。
泡飯の特徴である、〝食べやすさ〟は生かしたまま、
海鮮のハーモニーを楽しめる。
1杯で足りなければ、看板料理の
「外婆紅焼肉」などと一緒にどうぞ。
⑨娃哈哈栄養八宝粥 4元
杭州の食品メーカー「娃哈哈」の八宝粥。
中身を鍋にあけ、3分ほど温めれば完成。
味は甘く、ナツメやピーナッツなど
具沢山であるものの、全体的に柔らかい…。
夏バテなど、食欲が減退している時に食べるとよいだろう。
⑩銀鷺黒米粥 4元
黒米の素朴でやさしい甘さが印象的で、
味は日本のお汁粉や善哉に似ている。
白玉を入れるとおいしいよ、
とスーパーの店員さんが教えてくれた。
⑪親親児童栄養粥 4.8元
名前に〝児童〟が付いていることから、
子ども向けとわかる。
米よりもコーンやナツメなど、
ほかの具材の味が目立つ。
具沢山で、栄養価が高いと思われる。
⑫神東食品蕎麦粥 4元
芳醇な蕎麦の香りが漂う、
渋いお粥をイメージしたが、
蓋を開けてみると、
中身は甘い蜜に浸かった蕎麦の実。
白米は入っておらず、
蕎麦の独特な香ばしさもあまり感じられないが、
かなり柔らかく、食べやすい。
電子レンジでの加熱もできるので、
忙しい朝にいただこう。
⑬カボチャ粥 0元
韓国料理店では、無料の前菜として、
キムチと一緒に出されることが多い。
韓国語で「ホバッチュク」と呼ばれる。
長時間炊いて、裏ごししたカボチャを、
さらにじっくりと煮込んだもの。
本場韓国では、米を使わず、
消化吸収がよいため、
ダイエットにも効果的な健康食品として、
本場韓国で親しまれている。
調理も簡単なので、朝食や夜食にピッタリ。
⑭シーフードリゾット 78元
イタリアの家庭料理で、
フライパンで調理するイタリア版粥。
アルデンテ状に炊いた米に、
魚介類のブロードと、具材のイカやエビ、
アサリ、ムール貝など、海鮮エキスがたっぷり染み込む。
米の粘り気にシーフードとチーズが絡み合い、
上品な香りが食欲をそそる。
⑮チキン&シーフードパエリア 94元
スペインのパエリアというと、
水気が少なく、ピラフのような
パサパサしたものが主流だが、
汁気の多いパエリアもある。
この店のパエリアは、
中心部は調味料と具材の汁気が
たっぷり染み込んで柔らかく、
底はソカレット(おこげ)の食感が楽しめる。
フライパンのまま運ばれてくるので、
ジュージュー鳴っているうちにいただこう。
⑯クスクス 65元
北アフリカ発祥の粉食。
1粒が1㍉ほどの、世界最小のパスタだ。
こちらのチュニジア料理店では、
お皿たっぷりのクスクスに、
ソースのかかったチキンやジャガイモを
一緒に食べる。
ふっくらで、プチプチとした歯ごたえがたまらない。
一気にかきこんで、喉詰まりしないよう注意。
~上海ジャピオン2013年1月18日号