ある日、一台の馬車が通りを急いでいた。
と、突然馬が大便をして傲然と立ち去ってしまった。
そうして、この物語の主人公は町に見捨て去られたのだ。
ふと、まどろんだ目を覚まして見回すと、早朝だから通行人はあまりいなかった。
糞君が首をかしげているところに、一人の旅人がやってきた。
「いやらしいね、こんなところに糞があるなんて。
まして道の真ん中に…」
旅人は遠く遠く糞君を見ると、こうぼそぼそ言いながら回り道をしていった。
旅人のおかしな動きを見て、糞君はますます何が何だか分からなくなってきた。
「なぜ、彼は僕を見るなりすぐ回り道をしたのかなあ…」
しばらくすると、何人かの子どもが通りかかった。
「臭い臭い、臭くてたまらないよね。早く迂回しよう」
鼻をぴったりと覆い、回り道をして走って離れた。
「彼らも…僕はもしかして、貴族だろうか。
そうでなければどうして僕を見て回り道をしたのか。
まさか、僕を尊敬しているのか、それとも僕に感服するのか」
糞君はそう考えて自慢げになった。
いつの間にか町の人出が次第に多くなってきた。
「気をつけて、汚いものを踏むとひどい目に遭うから、回り道をするとよいわ」
人々はお互いに注意しあった。
通行人らが一人ひとりそろりそろりとよけて行くのを見て、糞君は風船のように膨張していった。
「なるほど、オレはやっぱりすごい人物だなあ。みんなオレを尊敬しているらしい。
オレは偉い人物に違いない」
そう思って、深く頷いていた。
自分でも一体何を鼻にかけるのか分からないにも関わらず、傲慢さはもう頂点に達した。
そこへ、アイスクリームを売る車がやってきた。
糞君はチョコレート味アイスクリームの看板を指差しながら、興奮の気持を抑えられないようにこう叫び出した。
「やはり僕はたいへん人気がある人物だぞ!
そうじゃなければ、彼らは僕の写真を張ってあちこちを宣伝するはずがない」
糞君が得意になっているところに、1人の黄色の制服を着た人が彼のほうへ歩いてきた。
「だれ? 何をしたいの…?」
気がつくと、いつのまにかかわいそうな主人公様は、やっとこに挟まれてゴミ箱の中へ投げ込まれていた。
現実の中で、皆さんの周りにも糞様のような奴がいるだろう。自分がたいした人物だと思い込んで、でんと傲慢に構えている。そんな時どうするか。
旅人のように〝触らぬ神に祟りなし〟と正面からの衝突を避けるか、ゴミ箱に放りなげるように懲らしめるか。
~上海ジャピオン2月13日発行号より