近年話題の中国原産ワイン
中国で生産されるアルコールといえば白酒、紹興酒だけではない。実はワインも製造しているのだ。近年、スーパーやワイン専門店では、欧州産や南米産の輸入ワインのみならず、中国原産のワインも人気を集めている。
中国で初めてのワイン作りは漢代にまでさかのぼるとされているが、現代になってようやく本格的に中国ワイン作りが見直されるようになった。中国政府が認定しているワイン生産地は、山東省煙台市、河北省昌黎県、寧夏ウイグル自治区賀蘭山東麓の3カ所。特に賀蘭山は標高3500㍍強で、ロシアやモンゴルから吹き付ける冷気をとどめ、昼夜の寒暖差が大きくなることで、ブドウに十分な酸味を作り出すという。
生産に適したワインベルト
またブドウ作りには、十分な日照時間も必要。山東省煙台市の緯度は北緯37度、新疆ウイグル自治区にある天山山脈を構成する博格達峰は北緯43度。これは、フランスのワイン生産地・ボルドーの北緯42度、米・カルフォルニアの北緯32度の〝ワインベルト〟に当たり、ワインの肝となるブドウ栽培に適した土地なのだ。
新疆ウイグル自治区の場合、日照時間が年間2800時間と、太陽の恵みが十分に受けられるのも、ブドウ作りに必要な要素。上海市の年間日照時間は約1650時間であることから、新疆ウイグル自治区の日照時間がいかに長いかがわかる。日照時間を確保することで、ワインに十分な糖分が生成され、糖分と酸味のバランスが取れることで、上質なワインができあがる。
ちなみに日本では、北緯43度の北海道、北緯35度の山梨県において、肥沃な土地を有し、こちらでもでも近年、国産ワイン作りに注力している。それでは次に、中国ワインの歴史を見ていこう。
司馬遷の史記に葡萄酒登場
市場価値のある国産ワインが出回るようになったのは近年であるものの、中国ワインの歴史は意外に長い。
漢代・漢武帝の時代(紀元前141~87年)、今から2000年以上前、中国ワインが皇帝の嗜みであったとされる記述が、歴史家・司馬遷の『史記』に残っているという。「宛左右以蒲陶為酒、富人蔵酒至万余石、久者数十歳不敗(大宛の左右、ブドウを以て酒と為す。富人、酒を蔵し万余石に余り、久しきもの数十歳を敗れず)」。また唐代の詩人・王翰(おう・かん)の詩によると「葡萄 美酒 夜光杯(葡萄の美酒 夜光の杯)」と詠まれており、以前から〝葡萄酒〟が中国でも飲まれていたことがわかる。
20世紀末にワイン作り注力
このように、中国でも昔からワインは存在していたものの、現代になって〝国産ワイン〟が本格的に作られようになっていった。多くのワイナリー(中国語で「酒庄」)が1980年代後半から2000年代前半に掛けて、先述の新疆ウイグル自治区や寧夏ウイグル自治区など、ブドウの栽培に適した西北地域を中心に登場。寧夏の賀蘭山東麓では、1984年頃にワイナリーが設立され始め、今年で27年の歴史を誇る。
そして同地区のワイナリーは2003年に「寧夏賀蘭山東麓」として、国家地理マーク製品保護区の認定を受ける。これは、白酒の茅台酒(貴州省茅台市)や、日本では〝上海蟹〟として知られる陽澄湖大閘蟹(江蘇省蘇州市)のように、各地を代表する飲食品や加工品などのブランドを普及・保護する目的で、国が認定するもの。この認定を受けたということは、国がその価値を認めたということ。今後、中国ワインが世界に広まっていく可能性を秘めている。
辛口で肉料理に合う赤
中国ワインの基本情報、歴史を振り返ったところで、肝心の味が気になるところ。今回は、ワインのテイスティング&販売をしているワインショップ「LivingWines」で購入した中国産ワイン2種を紹介する。
まずは赤ワインから。ワイナリー「懐来迦南」の「詩百篇特選黒比諾干葡萄酒2017」(400元/750㍉)は、ピノ・ノワール(黒比諾)という赤ワイン作りによく用いられる品種のブドウを使い、「特選」は「優選」よりも高品質で、ブドウ本来の酸味や甘味が感じられるという。
香辛料に似たほのかな辛味を感じられる一本で、食中酒に取り入れたい。味が濃い目の肉料理、例えば紅焼肉や羊肉串、火鍋に合いそうだ。また11月から12月に掛けて旬を迎える上海蟹とともにいただくのも悪くない。
食後のスイーツに甘口の白
白ワインはワイナリー「中法庄園」の「小芒新甜白葡萄酒」(360元/375㍉)をテイスティング。これは、フランス産白ワインに用いられるブドウ、プティ・マンサン(小芒森)を中国でいち早く栽培を開始し、使用。黄金色に輝くワインは、パッと見はロゼにも似ており、アルコールがあまり得意でない女性にうって付けだ。
この白ワインは、アルコール度数12・5%と一般的なワインと同程度なのだが、驚くほどの甘口。そのため、食後の口直しやデザート・フルーツに合わせるのがベターだろう。食中であれば、フルーツサラダなどあっさり系の料理に合うはずだ。
今回テイスティングした中国産ワインのほかにも、中国固有のブドウ種・蛇龍珠(シャーロンジュー)を使ったものなどもあり、あなたの好みやシーンに合ったワインをぜひ探してみてほしい。
~上海ジャピオン2021年11月19日号