災害時に備えよう

大地震や、新型インフルエンザの襲来。私たちは、いざという時に備え、どのような対策を取っておくべきなのだろうか。まずは、上海市が取り組んでいることと、災害時の日本国総領事館の働きについて知ることが先決だ。

建物の耐震対策は?

1992年を基準に 建築された年を確認

 「烈度7」。これは、2001年より施行された最新の「建築抗震設計規範(日本で言う建築基準法内の耐震基準)」によって定められている、上海市の耐震強度基準。震度に換算すると、「5強」に相当するもので、テレビが台から落ちたり、タンスなどの重い家具が移動するほどの揺れとなる。
 市内では、20階以上の高層ビルをはじめ、1日当たり述べ300万人が利用する軌道交通、楊浦・盧浦などの川を跨ぐ大橋、各トンネル、そして高架橋などの主要交通網が、この規範に従い建設されている。
基準値が「烈度7」に設定されている理由として、上海地震局の朱元清副局長は「上海市では、震度5以上の揺れを観測したことは1度もなく、これまでで最も大きかった1624年の地震も、震度4・7に止まっている。そのため、基準を震度5強にあたる烈度7に設定した」と説明している。
 同規範が施行されたのは2001年ではあるが、朱元清副局長は、「市では、すでに1992年から耐震強度を烈度7と定めて建設している。それ以前に建設された建築物に関しても、順次耐震措置を取っている」と、改めて安全性を強調している。

◇ ◇ ◇
 以上のことを参考に、まずは自分が普段滞在する建物について、建築されたのがいつであるかを調べてみよう。基準は、上海地震局が伝えている通り1992年。それ以前の物件だった場合は、補強工事の有無や、今後の予定などについても確認しておきたい。

万が一の時はどこへ?

設備の整った避難所

建設場所の確認を


 地震によって、家屋が倒壊する事態が発生するなど、万が一の事態に備え、市では現在「地震応急避難場所」の建設を急ピッチで進めている。その先駆けとなるのが、2009年末に完成予定の避難所で、大連路の緑地公園で現在建設が進められている。
 同避難所には、独立した供水、送電システムはもちろん、医療設備、非常食、簡易毛布など、8000人が5日間生活できる物資が蓄えられる。地震に特化した特殊な構造で設計されているが、普段は緑地や丘のようにしか見えない設計だ。
 地震局によれば、同避難所をモデルに、今後同様の避難所を市内各地に準じ建設する。

◇ ◇ ◇
 上海地震局のウェブサイトをはじめ、ニュースや新聞などで新たな建設場所に関する情報収集に努めたい。自宅だけでなく、会社や学校など、普段足を運ぶ場所に関しても、最寄の避難場所を把握しておこう。
 また、地震はいつ発生するかわからない。そのため、家族や親しい友人など、それぞれ別の場所で被災した場合に備えて、予め集合場所を決めておくことも重要だ。避難所だけでなく、公園や広場なども視野に入れて、集合しやすい場所を相談しておこう。

身動きが取れない!

救援隊の到着を信じ 決して諦めないこと

  避難場所の確保だけでなく、市では被災地に派遣する特別救援隊に関する計画も進めている。地震災害に特化した救援隊を編成し、年末までには正式成立する見通し。
 この救援隊は、正式名称を「上海市地震災害緊急救援隊」と言い、大きく分けて4つの部門で編成される。1つめは、被災地に赴き、状況の分析と今後の方針を打ち出す部門。2つめは、現地で被災者の救助にあたる部門。3つめは負傷した被災者に対して医療行為を行う部門。そして4つめは、各地に分散した各部門と密に連絡を取りスムーズに連携を図る部門だ。
 それぞれ専門分野に特化することで、緊急時でも迅速かつ的確な行動に移れるように考えられている。同救援隊は、市内で地震が発生していない場合、国際救援隊として地震被害に遭った被災地に赴き、救援に当たる方針。
 倒壊した家屋によって全く身動きが取れない状態になった場合、生死を分かつのは精神面の作用が少なくない。万が一のときは、救助が来ると信じて忍耐強く待つことが肝心だ。

総領事館の取り組み
~地震災害時~

 いざと言うとき、どうすれば日本語による最新情報が手に入るのか。また万が一の時、誰が日本にいる家族に自分の安否を知らせてくれるのか。
 災害時にそうしたサポートを行っているのが日本国総領事館だ。それでは、同館が災害発生時に行うことを見ていこう。
 災害発生時、総領事館はまず邦人の被害状況や安否の確認を行う。具体的には、在留届に記載のある連絡先に電話をしたり、館員を直接現地に派遣して確認を行う。
ここで注目したいのは、「在留届」の存在だ。これは、外国に3カ月以上滞在する場合に提出が義務付けられているもので、旅券法第16条に定められている。まだ未提出という人は、急いで手続きを行おう。また、引越しなどで住所が変わった場合にも、変更届を出す必要がある。
 平和な日常が続いている間は、「ついつい」となってしまうが、「いざ」という時にいつ直面するかはわからないものだ。そういう意味でも、提出の有無をもう一度確認し、まだ提出していないなら、一日でも早く手続きを行いたい。
 総領事館ではこのほか、被災状況などの情報をいち早く届ける「緊急メールマガジン」も発行している。外国において、日本語での情報提供は災害時には非常に心強いものだ。万一に備えて、メールマガジンに登録しておくことをオススメする。
 メールマガジンのほか、同館のウェブサイト、また管轄内の各地日本人会、商工クラブなどを通じても同様の情報提供を行っている。

新型インフルエンザに備える

危機感をもっと!

日頃の予防が肝心 徹底的な対策を

 日本の厚生労働省は、新型インフルエンザが発生すれば、日本での犠牲者数は国民の2%にあたる約64万人に上るだろうとの試算を発表している。そして中国における死亡者数については、オーストラリアのシンクタンクであるロウイー研究所が2006年2月に、2800万人に上るだろうとの見解を発表した。
 鳥インフルエンザが突然変異を起こし、人から人へと感染するようになる「新型インフルエンザ(H5N1型)」。現時点で、免疫を持つ人の確率は、限りなく0%に近い。それだけに、一度発生すると世界中で大流行(パンデミック)を引き起こすとして、兼ねてより危機が叫ばれている。
 オリンピック開催を前に、中国国内では様々な策を取っているが、その中で特に上海市衛生局の取り組みを紹介しよう。
 市内では現在、各疾病予防コントロールセンター、及び医療機関の密接な連絡体制の確立に重点を置いている。そして、新型インフルエンザをはじめとする各伝染病の発生時に備え、オリンピック期間中は各衛生行政部門に24時間体制を指示。早期発見に努め、消毒、隔離、治療などの措置を的確に行い、被害の拡大を最小限に止めることを明言している。
 また、疾病予防コントロールセンターは新型インフルエンザに対するワクチンに関して、すでに国内での製造に成功したことを発表。その上で、鶏などの家畜との接触後に風邪のような症状が現れても、突然変異の「H5N1型」でなければ人から人に感染することはないとして、パニックを起こさず、速やかに医療機関で適切な診察を受けるよう呼びかけている。

総領事館の取り組み
~新型インフルエンザ発生時~


 万が一上海で新型インフルエンザが発生した場合の、日本国総領事館の取り組みは以下の通りとなっている。
1.迅速な情報提供
 新型インフルエンザ発生の疑いが強まった場合、外務省は感染症危険情報を発出。それに合わせ、当地の発生状況や医療体制・防疫措置(出国制限など)の状況を、できる限り迅速に情報提供する。
2.医療機関の案内
 新型インフルエンザへの感染や、その恐れがある場合には、新型インフルエンザ指定医療機関や受診方法を案内する。

 以上の情報は、総領事館のウェブサイトなどで提供されるが、いち早く情報を受け取るためにも、緊急メールマガジンの登録をオススメする。(登録方法は、上記を参照)また、在上海日本国総領事館は、上海やその近郊に滞在する邦人に向けて以下のように呼びかけている。
「世界的なパンデミック(大流行)になった場合には、日本への帰国が事実上できなくなる可能性があります。こうした場合に備えて、普段から水や食料、日用品、常備薬などの生活必需品やマスクなどの備蓄をお願いいたします」

 このほか、いつでも出国できるように、現金などの準備に加え、旅券やビザの残存有効期間の確認も常に行っておくよう注意を促している。

~ジャピオン7月18日発行号より

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