上海大世界基尼斯とは
1992年、上海市に設立された、上海大世界基尼斯総部(CHINA RECORDS HEADQUARTERS)。中国における、人、もの、活動の〝最〟を審査し、認定する団体である。
同団体では、各記録の公正さや根拠を証明するため、各界の専門家や著名人が顧問団を組んで記録の審査を行う。対象となるのは、科学技術から自然景観、人の持つ技術などジャンルは問わず、ありとあらゆる〝最高〟または〝唯一〟のもの。これが認められると、証明書「大世界基尼斯之最」が発行され、晴れて中国一を名乗ることができるというわけだ。
そのほか、同団体は、ほぼ年1回、中央電視台中文国際頻道(CCTV―4)と上海広播電視台(SMG)とが合同で、記録挑戦番組『大世界基尼斯頒証晩会』を放映する。現在まで、すでに13回放映されており、多種多様な人々や団体が、バナナ早剥き競争といった各記録に挑戦し、新しい感動を生み出す人気番組だ。また、約2年に1度、『大世界基尼斯記録大全』という書籍も発行。記録の数々が写真付きで記される。
最新版『大世界基尼斯記録大全』は、全国の書店にて定価200元で販売
中国一の記録2924種
現在、約2924の記録(2013年6月21日現在)が登録され、そのすべては公式サイト(shenbao.dsjjns.com)で閲覧することができる。
記録では、最長の麺として認められた、雲南省のレストラン「蘇老三一古麺」が作った1704㍍の「南詔一根麺」や、重量4・318㌘の最も軽い本「可蘭経」、ウィーンで平均年齢55歳の中国人178人が参加した、中国国外最大規模の「中国人ミドルエイジ集団ダンス」など、体積や重量、人数で記録を出したものが並ぶ。そのほか、河北省頑家口市蔚県で約530年もの間伝承されてきた、伝統演芸「打樹花」は、約1300度に熱し、ドロドロに溶けた鉄を城壁にぶちまけ、火花を散らせるという、この地域特有の勇猛なパフォーマンスが、中国唯一のものとして登録された。
記録の申請は、メールか郵送にて行う。申し込み用紙に、記録に挑戦した場所、要した時間などの必要事項を記入し、記録を達成したことを証明する写真もしくは映像などの資料を送ると、2週間以内に本部から確認通知が返信される。個人で申し込む場合には、手数料として600元、審査料として4200元~が必要となる。少々値が張るが、中国一の栄誉を手に入れるためだ。背に腹は代えられない。
証明書「大世界基尼斯之最」。もし取得できたら、ぜひ額縁に入れて飾りたい
中国が世界に誇る、独創的な伝統芸能「打樹花」。火花の散る様子が、まるで大木のようだ
タラコ唇にストロー詰め
一番手はジャピオン一のタラコ唇を持つ男・編集K。この特徴を生かし、口にストロー265本を咥えるという記録越えを目指す。まずは無難に70本から! 「フゴッ」とえづきつつもなんとかクリアし、そのまま5本、10本と、次々にストローを足していく。そして90本目。口を最大限に開くも入らない。そんな彼に声援を送るメンバーを横目に、応援に飽きた〝ザ・マイペース〟編集F。暇つぶし~と自ら挑戦しはじめ、なんと一気に80本を咥えてしまった!
「すごい」、「Kのタラコ唇は見かけ倒しだったね」と盛り上がる部員たち。これらの声に焦ったのか、編集Kが慌てて90本を成功! しかし編集Fも続く! いつの間にか2人の対決となり、緊迫する現場であったが、93本で編集Fに限界が。それを見届け、優越感を漂わせる編集K。口を拡張し続け、最終的には110本をねじ込んだ。
鼻から吸水↑耳から!?
「鼻から水を吸って目から噴射!? やり方わかんないです!」と悲鳴を上げる編集S。「それはですね…」と語りだしたウンチク大好き・編集Oによると、目と鼻は涙道という器官でつながっているため、鼻を塞いで耳抜きをすると、目頭にある涙点からも空気が出てくる。この原理を利用し、鼻から吸った水を目から出すのだという。説明を受けてもなお固まったままの編集Sだったが、覚悟を決めたようだ。水の入ったコップを顔に近づけ、ズズッと鼻で吸ったかと思うと、そのまま鼻の穴を塞ぎ、目を見開く! …が、何も起こらない。数十秒後、「耳から抜けるんです~」と情けない声を挙げる編集S。涙点の通りのよさは体質によって差がある。彼女の場合は、耳へ通りやすい体質だったようだ。
漫画で予習し麻雀積み
「2人とも情けないな~」と笑うのは編集F。「わたしはちゃんと予習したからね~」と得意気に麻雀漫画『アカギ』を取り出す。彼女が挑戦するのは、136個の麻雀牌を2分27秒で28段に積み上げ、60分間倒さない、という記録だ。「あンた、背中が煤けてるぜ…」と違う漫画のセリフをつぶやきながら牌を積む編集F。そんなおふざけが悪かったのか、結局、4分32秒という記録に。「あれ~?」と首をかしげる編集Fの様子を見て「私の出番ですかな」と、編集Oが前に出てきた。
理論を頼りに空き缶倒し
編集Oが挑戦する記録は、ヨコ5×タテ4に並べた空き缶に対し、1・2㍍の距離から両手に1枚ずつ握ったトランプカードを投げ、缶を倒すというもの。そびえ立つアルミの壁を前に、「ふん!」と力を込めてカードを投げつけるが、缶にはかすりもしない。「原理はわかっているんですよ、原理は」とこぼす自称頭脳派O。普段運動嫌いを公言しているが、額に汗を浮かべてカードを投げ続けること数十回、カーンと響く音が! なんと1缶倒すことに成功! 「私の理論は正しかった!」と叫びながら続けたものの、ビギナーズラックだったのか、その後再び缶が倒れることはなかった。
みんなでビール早飲み
個人の挑戦は散々な結果だったが、最後はみんな一緒に! と挑戦するのは、ビール早飲みだ。公式記録は、3・17秒。スタート! の号令とともに各自、グラスいっぱいに注がれたビールを飲み始める。まず15・23秒で編集Oが杯を空け、勝利の雄叫びを上げた。残りの2人もビリを避けるべく、互いに牽制しながら飲み進める。そして27・46秒、編集Kがフィニッシュ。編集Sは焦るあまりむせて、リタイアという不名誉な最後を迎えた。中国一の壁は厚いと、改めて実感する部員たちであった。
新種目で基尼斯に挑戦!
既存の記録に大惨敗を喫した編集メンバー。ならば新種目を作ってやろう、と思いついたのは、スイカの早食い&種飛ばしだ。夏と言えばスイカ、という安直な発想だが、やる気は満々だ。用意したのは直径20㌢、重量3・92㌔の実が詰まったスイカ。これを10等分し、まずは早食いに挑戦する!
スイカを手に構え、緊張した面持ちの4人。そして合図と同時に、一斉にかぶりついた! スタートから飛ばすのは、大食漢で有名な編集O。掃除機のように実を吸い出し、飲みこんでいく。その強烈な勢いに、一瞬手も口も止まり、見入ってしまう編集K。おかげで少々出遅れたが、男の意地を見せ、2位の座を死守した。1位はもちろん、27・82秒で完食した編集Oだ。ほかメンバーがすべて1分台だったことを考えると、驚異のスピードである。しかも食後の残骸は真っ白な皮のみ。スイカ腹は伊達ではなかったようだ。
ラストは全員で種飛ばし
次はスイカの種を吹き飛ばし、その飛距離を競う。ここで前に出てきたのが、タラコ唇をバネにして種を弾き飛ばすぜ、と自信満々な編集Kだ。ブーッと唇を震わせ、4・3㍍を飛ばすと、ドヤ顔を決めた。続いて編集Fが元気よく前に出てきたが、記録は3・5㍍とタラコ唇に及ばず。「こんな挑戦ばっかりして、お嫁に行けない…」と嘆きながらも根性を見せた編集Sは、4㍍を飛ばし、暫定2位に。そしてトリは、早食いで凄味を見せた編集Oの登場だ。「振り子の原理を利用するのですよ」と妙な持論を語りつつ、身体を大きくのけぞらせたかと思えば…大きく前方に振ると同時に吹き飛ばす! その記録7・2㍍! 怪しげな理論に負け、納得がいかないながらも、申請手続きを取る一同であった。
~上海ジャピオン2013年6月21日号