私たちの暮らす中国には、日本ではなかなか口にする機会のない食材がたくさん。これらのものに挑戦し、舌で胃袋で、中国を知ろうではないか。まずは初級編、日本人にとっても比較的馴染みのある食材から紹介していこう。
①榴蓮(ドリアン)
〝果物の王様〟と呼ばれるドリアン。「麝香(じゃこう)の香りと針を持つもの」という名の由来通り、トゲトゲの外皮に包まれ、ナイフを入れれば凄まじい匂いを放つ。その匂いの強烈さは、世界の名だたる航空会社が飛行機への持ち込みを禁じている、というほど。
一方の味は、純粋な甘さ一色。匂いさえなければ、おいしくいただける。果実の中央にある種の周りは、柔らかなクリーム状の食感で、これも嫌う人がいるとか。中国ではドライチップスやケーキなど、主に加工食品として流通している。
②皮蛋(ピータン)
アヒルの卵を、強いアルカリ性で熟成させて作られる皮蛋。この黒く透き通った卵、明代初期、卵を灰の中に埋めたまま、うっかり2カ月ほど忘れ、掘り出して食べてみたところ、熟成されていておいしかった、という偶然の産物なのだ。
初見の場合、この黒い色に抵抗を覚えるかもしれないが、プルプルとしたゼリー状の食感も楽しく、ほど良い塩加減が◎。
③香菜(パクチー)
パクチーはお粥から炒め物、スープ麺まで、あらゆる料理に添えられる。好きな人に言わせれば、パクチーを除くことは風味を失うことに等しい、とか。
中国語名の表す通り、香りが強いので、セロリの香りがダメな人は苦手かもしれない。だが中国人からは、日本の春菊や三つ葉の方がキツイ、との声がしばしば聞かれる。
さて、お次は中級編。これらを食べられなければ、中国に馴染んだとは言えない!? 匂い・外見ともに、ちょっとだけステップアップの3品を紹介。
①腐乳(フールー)
豆腐に麹をまぶし、発酵させた腐乳。大豆を原料とした発酵食品なので、日本人にとってそれほどハードルの高いものではないだろう。
瓶入りで売られていることが多く、プレーン味の「原味(白)」、紅麹を使った「紅」、唐辛子の効いた「辣」の3種がある。匂いはキツイが、後味は濃厚なチーズのようで、お酒によく合う。なお、沖縄の「豆腐よう」はこれをもとに作られたと言われ、味わいが似ている。
②臭豆腐
〝臭い〟と冠するだけあって、強烈な刺激臭を発する。日本人でも「くさや」など、匂いの強いものを好む人に人気の食材で、曰く「臭い=うまい、ビールが進む」なのだそうだ。ちなみに今回の写真は、市内の人気レストラン「趙小姐不等位」の「炸非常臭的臭豆腐」。名前に違わず、非常に臭かった。
いずれにせよ、中国では極めてポピュラーな屋台料理の1つである。初めて中華圏を訪れ、これが最初の洗礼となる日本人も多いのでは。
③鶏手/鶏爪
日本の場合、鶏を食すのは「手羽先」までだが、中国では足の先から頭のてっぺん(トサカ)まで食べる。
大地を駆け回る鶏の足。よく洗って泥を落とし、甘辛く煮詰めて供されることが多い。こちらも屋台料理の定番メニューで、まず爪の部分をかじってペッと吐き出し、それから骨までしゃぶるのが一般的な食べ方だとか。コラーゲンが豊富と言われ、女性のおやつに好んで食べられる。
続いて上級編。チャレンジ精神旺盛な人なら、まだまだこのくらい大したことない、というレベルだろう。しかし小学生時代、どれもペットとして可愛がっていたことがあるという某編集部員には、抵抗感が半端なかったようだ。
①牛蛙(ウシガエル)
緑褐色の丸々と太ったボディを持つウシガエル。フランスでは、エスカルゴ(カタツムリ)と並んで常食とされる。味はあっさりとして臭みがなく、タンパク質が豊富で成長も速いため、日本でもかつては食用として重宝された。
主な調理法は、ぶつ切りにして、ジャガイモやネギなどの野菜と一緒に炒める、鍋に入れるなど。食感は特にアンコウなど、プリッとした白身魚によく似ており、ヤミツキになる人がいるのも頷ける。
なお、大型のスーパーや市場では、活きた状態で売られている。
②鴨頭(アヒルの頭)
アヒルの頭は、醤油ベースのタレで煮込むか、パリパリに揚げる。嘴から後頭部までをタテに割った状態で出され、丸ごと食べられるが、舌はコリコリと歯応えが良く、脳ミソは少量だが白子のような舌触り。嘴部分も食べられるが、鶏の軟骨を苦手と感じる人には向かない。
③螺螄(タニシ)
「田んぼのサザエ」とも称されるタニシ。日本でよく食べられているツブ貝の仲間ではあるが、淡水に生息し、寄生虫がつくことが多いため、十分に加熱しなければならない。
食べ方は簡単、爪楊枝で貝の蓋部分を外した後、刺して身を引き抜くだけ。こちらも醤油ベースのタレで煮込み、ビールグラスを片手につまみたい。ただし、両手を使わなければならないので、食べにくいのが難点。
「好き嫌いせず何でも食べなさい」と言われて育った人は多いはず。それでも食の好みとは、大なり小なり生まれ育った環境などが影響し、異なってくるものだ。日本人の多くは「昆虫食なんて論外」と言うかもしれない。しかし! おぞましい、などと思うなかれ。早速、超級編スタート!
①竹虫(タケムシ)
中国の昆虫食の中で、最もメジャーなのではと思われるのがこちら。3~4㌢ほどの蛾の幼虫で、竹の中に生息するため「タケムシ(バンブーワーム)」と呼ばれる。
今回取材班が訪れたのは、雲南料理店。たっぷりの油でカラッと揚げてあり、サクサクとスナック菓子感覚で食べられる。見た目もギザギザカットの冷凍フライドポテトのよう。ただし、後味が少々粉っぽく、妙な甘みを呈するので、好みは分かれるかもしれない。ジャピオン広州支部の編集部員はこれの入ったオムレツを食したところ、もっと甘みが強かったそうだ。
②螞蚱(バッタ)
イナゴは日本でも古来より、貴重なタンパク源として佃煮にして食すが、こちらは似て非なるバッタ。それも佃煮ではなく、やはり揚げて食べる。
羽や足など、肉の少ない部分は脆く、箸でつまむとポロリと落ちる。そこをすかさず口に放り込みかじってみると、まさに干しエビ同様の歯触り。これといって主張する味はなく、調理の際に塩コショウしておくと良さそう。
③木頭虫(ウィチェッティ・グラブ)
極めつけは大きなイモムシ。正式名称を「ウィチェッティ・グラブ」と言い、これも蛾の幼虫である。体長約10㌢とその大きさに少々怯んでしまうが、そんな時は小さく切ってしまえばいい。味はこれといって特徴がない。
~上海ジャピオン2014年1月17日号