冬を代表する中華の1つとして、忘れてはいけないのが「火鍋」。日本からの出張者や友人のアテンドに火鍋店を利用する人も少なくないだろう。そんな火鍋をお家でできたら、ホームパーティーも一層盛り上がるはず! また鍋料理なので、作り方も難しくないのでは? ということで、今回はD.I.Y火鍋に挑戦してみることに。
中国火鍋のルーツとは
その前に、火鍋の歴史について簡単におさらい。火鍋のルーツはおよそ3000年前に遡る。祭祀の時、鉄製の「鼎」という大鍋で牛や羊の肉を煮て、神に奉げた後に、皆で分け合って食べたのが始まりなのだとか。
また煮立ったスープに食材を入れた時の「ゴトゴト」という音から、古くは「古董(グードン)羹」とも呼ばれた。しばしば〝中国式しゃぶしゃぶ〟と呼ばれる北京の「羊肉火鍋」は中国が発祥だが、後に海を越えて京都に伝わり、今の日本のしゃぶしゃぶが生まれたとされる。
色濃く出るご当地カラー
中国各地でそれぞれに発展を遂げた火鍋。中でも中国5大火鍋と呼ばれるのは、奥深い味わいのスープが美味な広東の「海鮮火鍋」、銅鍋でしゃぶしゃぶする北京の「羊肉火鍋」、辛味の中にふくよかな旨味が香る重慶の「麻辣火鍋」。さらに鶏ガラスープに菊の花を浮かべた江蘇・浙江省の「菊花火鍋」、牛肉の薄切りがたっぷり入った山東省の「牛肉火鍋」が含まれる。しかし後者2つは、上海での知名度は低いよう。ほかにも東北の「白肉火鍋」や上海の「什錦火鍋」といった、ご当地鍋がたくさん。
なお三国時代、魏の文帝の時代の記録によれば、5つに分かれた鍋にそれぞれ異なる味のスープを入れる「王熟釜」があった。これは、麻辣と白湯を同時に食べられる「鴛鴦火鍋」の起源と言われている。
火鍋にまつわる食文化
さらに、東北地方では客人を招く際、「前飛後走、左魚右蝦、四周軽撒菜花」と言って鍋の食材の配置が決まっている。鍋の手前に鶏肉、後ろにその他の肉、左に魚、右にエビを並べ、野菜はまんべんなく散らす。反対に招かざる客が来た時は、手前に特大の肉団子を配置。特大肉団子が前に来ていたら、歓迎されていないという意味なのだ。
また中国台湾では旧正月の7日に火鍋を作る習慣がある。材料には肉、魚、ニラ、香菜、ネギ、ニンニク、セロリの7種が使われ、それぞれに「マメになる」、「良縁に恵まれる」といった意味が込められており、どれ1つとして欠けてはいけない。
さて、火鍋について理解を深めたところで、いよいよD.I.Y火鍋のハウツーを伝授!
何はともあれお鍋から
お家で本格火鍋を再現するには、まずはあのお鍋をゲットしないと始まらない! ということで、やってきたのは澳門路のレストラン用品市場「酒店設備大売場」①。エスカレーターで2階へ上がり、日本料理店用品コーナーを左へ折れて…と。13番ラックに「鴛鴦火鍋」の文字が。仕切りのないもので約30元、陰陽マークみたいな仕切りの「鴛鴦火鍋」は45元前後と、それほど高くはない。湯豆腐鍋みたいな「復底子母火鍋」は60元台から200元台まで②と幅広く、北京火鍋に使われる筒状の銅鍋は400~600元とお高めな感じ③。そもそもこれ、燃料に木炭を使うから、家で使いにくい…ということで、定番の「鴛鴦火鍋」を購入。
ここで注意したいのが、火鍋用の鍋はIH専用のものが多いので、家にガスコンロしかない場合は、購入をお忘れなく。こちらの予算は200~800元前後。澳門路まで行くのはちょっと面倒だな…という人は、タオバオやアマゾンなどから、ネット注文という手も。
お手軽スープの素も充実
さて鍋をゲットしたら、お次は食材の調達。今回は大型スーパー「カルフール」へ。まず決め手となるのが鍋の味を左右する「鍋底(スープ)」。上海で重慶や四川の火鍋が食べられるようになったのは比較的最近のことで、自宅で火鍋をする場合、ほとんどの家庭が市販のものを使い、自宅で作る人は少数だった。
しかしここは「DIY火鍋」なので、何としてもスープから作りたい! そこで、ネットでリサーチした中から、一番シンプルなレシピを選んでみる④。これによると、まず白ネギを大きめにカット、次にショウガの皮を剥き、スライスする。沸騰した鍋に白ネギ、ショウガ、八角、干しエビ、お好みで少量のトウガラシを入れて…、塩、醤油、山椒油で味を整えて完成♪
とは言え、今回赤と白の「鴛鴦火鍋」にするので、白は手作り、赤は市販のものを使うことに。スープの素には、日本にも進出している大手火鍋チェーン店「小肥羊」を始め、「東来順」や「海底撈」などがラインナップ⑤。さらにこれにプラスして買いそろえたいのが「山椒油」(13・4元/200㍉)。辛いのが好きな人は、仕上げの隠し味に加えるだけで、山椒のピリリとした辛さが増し、さらに旨味がアップ!
サクッと下準備
お鍋よし、スープよし、食材よし。テーブルの上に鍋とIH調理器をセッティングしたら、買ってきた食材を食べやすい大きさにカットし、お皿に盛る。
お次はスープ。白湯はリサーチしたレシピにアレンジを加え、乾燥させたホタテの貝柱とナツメ、ニンニクを入れてみた。赤の麻辣は、スープの素をまず4分の1ほど溶かし、同じく白ネギ、ニンニク、ナツメを入れてグツグツ…。スープの素は一袋全部入れると辛くなり過ぎるので、様子を見ながら気持ち少なめに入れるのがオススメ!
鍋の使い心地やいかに
新品鍋の使い心地は、熱の伝導率がすこぶる良く、電源を入れてすぐグツグツと煮えたぎってきた。あまりに勢いが良すぎて中央の仕切りを越え、スープが混ざってしまう始末…。準備が整ったところで、ジャガイモやシイタケ、練り物をジャンジャン投入~。それらに火が通るのを待ちつつ、お先に羊肉をしゃぶしゃぶ。
お味は、白は海鮮ダシが効いてあっさり。少し薄味なので、家にある調味料の中からポン酢をチョイスしてみると…これがイケる! お店の味を再現するなら、ゴマダレがGOOD。一方赤は山椒と唐辛子の辛味とふくよかな香りが口中を支配、身体がジンワリと汗ばんでくるのを感じる。このままでも十分ウマいが、辛いのが苦手な人は酢をかけて食べると辛味が中和するとのこと。つけダレも手作りしたい! という人にイチオシのレシピを紹介。ゴマダレ10㌘、豆腐乳汁10㍉、甜面醤5㌘にニラ、ネギ、ラー油、ニンニクを入れ山椒油で調整して完成♪
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