日本語学科の学生さん

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広さ東京ドーム28個分

今回取材に訪れたのは、華東師範大学の閔行キャンパス。市中心部からタクシーで南に走ること40分…。校区に入りさらに10分歩くと、ようやく校舎が見えてきた。同キャンパスは広さ約130ヘクタール、東京ドーム約28個分という広大な土地に、外語学院をはじめ人文社会科学学院、社会発展学院、体育与健康学院など約15の学部が在籍する。その広さと校舎の美しさに驚くばかりだが、すぐ隣にはこのキャンパスの2倍以上の広さを誇る上海交通大学閔行校区があるというのだから、さらにビックリ。校区をぐるりと歩いて回るだけでくたびれてしまいそうだ。

緑豊かな同キャンパスの北側には22棟の学生寮があり、学生のほとんどがここで共同生活を送っているそう。また校区内に食堂やスーパー、病院などを用意し、学生たちが不自由なく暮らせるよう設備を整えている。

学生たちはみなとても親切で、道を尋ねれば丁寧に教えてくれた。またキャンパス中央にある図書館には学生がひっきりなしに出入りし、バスケットコート、テニスコートでは明るい声が響く。若いってスバラシイ!

 伝統ある日本語科を訪問

そんなキャンパスにある外語学院日語系は1972年に設立された歴史ある学科で、これまでに数々の学者や教育者、企業家を輩出。学生は1~2年時に日本語の文法、会話、ヒアリングの授業などで基礎力を付け、それから古典文学、文化、歴史といった専門分野を学んでいくそう。

現役の大学生に会うのは久々の取材班、ジェネレーションギャップを気にしつつも期待に胸を膨らませ、彼らが学ぶ教室にいざ足を踏み入れる。

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それでは早速、日語系で日本語の勉強に励む3人の学生さんにインタビュー!趣味や普段の生活、将来の夢などざっくばらんに聞いてみました。

日本語を選択したきっかけは

教室で話を伺ったのは、大学3年生の李君と陳さん、大学4年生の湯さんの3人。3人とも日本語がペラペラで、少し照れながらもインタビューに快く応じてくれた。まずは、なぜ日本語を勉強しようと思ったのか? という質問から…。

「日本のポップカルチャーやサブカルチャーが好きで」とは湯さん。今を時めくAKB48や乃木坂46のファンで、それが日本語学習への入り口になったそう。一方3年生の2人は「外国語なら何でもよかった」と回答。実は最初、日本や日本語への思い入れはそこまで強くなかったという、意外な返答が返ってきた。

将来の夢や学びたいこと

とは言え李君、陳さんも日本語学習へのモチベーションはすこぶる高い。李君曰く「最初は日本について、アニメや漫画などのポップカルチャーしか知らなかったけれど、勉強を進めるにつれ歴史や文化にも興味が出てきた」とのこと。さらに「外国語を学んでいく中で、まず中国語をしっかり勉強しないといけない」と気付き、中国語についての講義にも出席。将来は日本語を使って中国語を教えるなど、語学に関わる仕事を考えていると話す。

また陳さんは本科に加え、国際関係・国際貿易に関する講義を選択。今後は大学院に進み、日本語を通じて国際関係や東アジアの情勢をさらに学んでいきたいんだとか。

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学生生活の苦労と喜び

さてここまで堅苦しい話をしてきたので、次に学生生活について教えてもらう。勉強は大変? との問いには3人とも大きくうなずいた。普段の授業のほかに資格の取得にも励み、同級生のほぼ全員が日本語能力試験(JLPT)最高級を取得するのだと言う。また大学4年生の湯さんは卒業論文を執筆中。大好きな日本のアイドルをテーマに、日本語のキャッチコピーについての研究を進めていると話す。

アルバイトをする暇もなく、忙しそうな3人だが、休日はどうしているの?と聞くと、アイドル好きの湯さんは放送部に入り、アイドルの歌を放送したり、歌を歌ったりして活躍中。一方の陳さんは料理部に所属し、読書が趣味の李君は、普段本を読んで過ごすことが多いと言う。三者三様の楽しみがあるようだ。

3人とも同キャンパス内の学生寮暮らしで、上海市以外から進学した李君と陳さんは実家に帰るのは年に一度、春節だけだそうだ。寂しくないの? との問いに、李君は「まあ高校から寮暮らしだし、親もあまり心配はしていないですよ」とさらり。逞しい一面を見せた。

日本・日本人に対する印象

最後に、日本や日本人についての印象に水を向けてみる。湯さんは日本の筑波大学に1年間留学経験があり「日本の学生は思ったより地味だった(笑)」と話す。日本の学生はしっかり勉強していた?との問いには「しっかり勉強していたし、私も留学してよかった」との返答。その答えに胸をなでおろした取材班…。

一方で上海にいる日本人とはあまり交流の機会がなく、華東師範大学の留学生たちは別キャンパスで学んでいるので、滅多に会えないと少し残念そう。そこで『ジャピオン』を渡したところ「あ、見掛けたことある!」と興味津々。レストランや美容院の広告を眺め「行ってみたいけど…私たちにはちょっと値段が高い」とボヤいたものの、クラシファイドを眺め、友達を探したい、サークルに入りたいと盛り上がる。では今度オフィスに遊びに来てね、ということで、今回のインタビューはお開きになった。

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日本の歴史や文化を理解

最後に日語系の講義を見学させていただいた。お邪魔したのは3年生が対象の、宇野雄二先生による日本の歴史・文化の授業。今回は江戸時代をメインに、当時の政治や人々の暮らし、文化を解説していくようだ。

まず驚いたのが、授業をすべて日本語で行うこと。スライド資料も日本語、教科書も日本語…。オール外国語の授業をものともせず、中国人学生たちは熱心に先生の解説に耳を傾けている。

先生の授業はただ日本の文化を紹介するだけでなく、中国の歴史・文化と比較することで学生の興味を引き出し、時に質問を投げ掛けるなど交流も忘れない。「江戸時代が200年間も平和だったのはなぜか」、「平和な社会が続くとどうなるか」、「平和な時代に武士はどう生きたか」…現代の社会問題にも通じる問いに、学生は想像を巡らせる。

また日本文化の紹介では、「浮世絵は唐代の美人画に似ているけど、顔の輪郭が丸い」などユニークな学生の感想に笑いが起きる場面も。そんな先生と学生の温かいやりとりが目立った授業、最後に学生たちが「ありがとうございました」と日本語で一斉に挨拶したのがとても印象的だった。

真面目で集中力のある学生

日語系の講師である宇野先生に話を伺うと、中国人の学生たちは粘り強く勉学に取り組むことが特長で、90分という長い授業でも集中力を絶やさず聞き入るとのこと。厳しい受験戦争を乗り越えた学生たちだからこそ、キチンと学習に励むことができるのだろう。とても礼儀正しく真面目な彼らに、中国の未来は明るい、と思った取材班であった…。

 

~上海ジャピオン2017年12月15日発行号

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