青年起業家の挑戦

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BtoB版「Airbnb」

学生たちの活気に満ち、ベンチャー企業が多く集まる「大学路」。そこに構えるレンタルオフィスの一角に、馬丁氏のデスクがある。

彼が運営するのは、上海各地のレンタルスペースを、会議や各種イベントなどの用途に応じて1時間単位で借りることができるサイト。言わば〝BtoB版のAirbnb〟だ。およそ1年半前に立ち上げ、今では市内240カ所のスペースと契約。オフィスにある会議室から、カフェ、ヨガスタジオ、室外テラスまで、様々な場所を取り揃える。

馬さんがビジネスを始めたのは、大学生時代に仲間15人とアモイで開設した、大学イベント情報サイトの成功がきっかけだったと言う。卒業後、上海で同じような情報サイトを始めるも、こちらは軌道に乗らず挫折。会社勤めを経た後、再チャレンジで生まれたのがこの事業だ。ビジネスモデルは、アメリカの「peerspace」や日本の「スペースマーケット」だと話す。

 常に改善を忘れない

ユーザーのリピート率が7割を超え、今や掲載の問い合わせが殺到するほどにまで成長。北京市や深セン市にも拠点を広げ、順風満帆に見えるが…。「競合他社が星の数ほどいるから、常に勉強しないとダメ」と馬さんは手を抜かない。現在はスペースの貸し出しだけでなく、カメラマンによる撮影やパンフレットの印刷などオプションサービスを充実させ、面倒なイベント準備を一括請負することで、他社との差別化を図っている。

最後に、馬さんの夢を聞いてみた。「新しいSNSサービスを確立させて世界を変える。メディアに携わり、人々に影響を与える。大学を創って、若い世代を育てる。この改変、影響、創造の3つがボクの夢」と迷いのない答えが返ってきた。27歳、馬さんの抱く夢は壮大だ。

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客との交流を楽しみに

店の入口にぶら下げられた巨大な提灯に圧倒される。店内には大小色とりどりのペーパーライトが並び、温かな光を放つ。

書道家の父を持ち、芸術に触れる機会が多かったというオーナーのEveさんは、学生時代にデザインを専攻。卒業後デザイン会社に勤めるも、より自由な生活を求めて独立を決断したと言う。ペーパーライトに着目したのは、雑貨が集まる義烏市場に行った時で「質が悪く、高いものばかりでビックリした。私たちならもっといいものを作れると思ったの」と、夫と一緒に専門店を作ることを決意。現店舗の前身となる、13平米の小さな店を巨鹿路にオープンさせた。

可愛らしいペーパーライトは、観光客が土産用に購入することの多い商品だが、最近は料理店などからオーダーを受けることも増えてきたんだそう。オーダーメイドで制作し、少ロットで質の高い商品を提供するのが売りだ。実は店舗の売り上げより、ネットショップからの注文の方が多い。しかし「直接お客さんの顔を見て販売できる方が好き。一度商品を購入したお客さんに、リピートしてもらうとうれしい。家賃は高いけど、店舗は残したい」とこだわりがあるようだ。

 より幅広いデザインを

そんなEveさんの頭を悩ませるのは、宝山区にある工場に勤める、7人の従業員に対する教育だと話す。年上の女性ばかりで「外国語が印刷された提灯を、裏表逆に作っちゃったことがあるの」と世代や文化の違いに苦労しているようだ。とは言え、丁寧な指導と温かい言葉で、居心地のよい職場作りを心掛けているんだとか。

今後は世界中のデザインを提灯に取り入れていきたいと話すEvaさん。夢は「自由に生活すること」だそう。そんな彼女は、第2子を妊娠中。母としても奮闘している。

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丈母の味を上海で再現

白を基調とした可愛らしいカフェのような外観。ところがメニューを見れば、本格的な中華麺がずらりと並ぶ。「内装やインテリアはすべて妻が決めたんだ。でも他店からもらってきたものも多くて、あまりお金は掛かってないよ」と、オーナーの包さんが紹介してくれた。

内モンゴル出身の包さんは、大学で環境工学を学ぶため来海し、卒業後しばらくはスポーツイベントの会社で働いていたと言う。そんな彼の未来を大きく変えたのは、大学在学中に出会った彼女との結婚だ。甘粛省生まれである妻の母が、上海でも娘や生まれてくる子どもに故郷の味を知ってもらいたいと、レストランの開店を後押ししてくれたのだと話す。

現在、生後間もない子どもの世話に掛かりっきりの奥さんに代わり、店の切り盛りをする包さん。彼を支えるのは妻の弟や親戚だ。料理人は親戚や知り合いの伝手を辿って、遥か2000㌔先の甘粛省から呼び寄せている。麺はすべて手作りで、開店2時間前から仕込みを始めると言うこだわりぶりだ。ふるさとの味を残しつつ、新規や常連客に楽しんでもらえるよう新作料理の開発に力を注ぐ。

 食に掛ける熱い思い

平均年齢27歳の若いチームが切り盛りする同店。昼の営業時間を終えた後は、近くの公園で一緒にバスケットボールなどを楽しむそう。そんな彼らが目指すのは2号店の開店。すべて手作りという性質上、同様の味を他店で再現することが難しく、試行錯誤を重ねている段階だと言う。「同じ中国の麺でも、地方によって味や食感が異なる。それが店名を〝橘生淮南(ミカンは、淮河の南で育つとミカンになるが、北で育てばキコクになる、の意)〟と付けた理由でもあるんだ。食を通じて甘粛省の文化を伝えられたらいいな」と熱い思いを胸に今日も店に立っている。

 

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エプロンドレスのデザイナー

まさにエプロン〝ドレス〟と呼ぶにふさわしい、カラフルで美しいエプロンをデザインする馬蕊(マリー)さん。現在は拠点を日本に移して活動しているが、このエプロン及びデザイナーブランド「MARY KHOO」が生まれたのは、ここ上海だった。

日本の文化学院大学を卒業後、シンガポールで2年間を過ごし、再び日本での会社勤めを経て、2014年に来海。趣味が高じ、日本人奥さん相手に中華料理教室を始めたという馬蕊さん。その時に身に着けていた自作のエプロンが話題となり、生徒からの要望に応じて制作していたところ、口コミでウワサが広まりオーダーが殺到。こうして独自のブランドが誕生したと言う。

ちょうどその頃、料理教室の生徒である1人の日本人女性が、自分用にエプロンドレスをオーダー。それから、母の日のプレゼントとして、母と義母用に2着、娘が成人した時のためにと1着…次々と注文してくれたことがあった。「親子三代に渡って自分のブランドを着てもらえるなんて、ワクワクしたわ。デザイナーの腕の見せどころだと思って、すごく張り切ったな」と、忘れられないエピソードとして教えてくれた。

中国から日本、そして世界各地へ

現在は同ブランドで、生活雑貨やランジェリーの展開を始めている。同時に、日本で個展を開いたり、展覧会に参加したりと、忙しい日々を送る。夢は自分のブランドを日本からアジア、世界各地へと広めていくこと。「8歳から絵を学び始めて、絵画とファッションという自分の好きなことを職業にできたのはすごく幸せ」と、彼女の創作意欲は留まることを知らない。

 

~上海ジャピオン2017年4月28日発行号

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