魅惑の夜行列車の旅へ!
寝台ベッドに揺られるドキドキの夜、そして列車で迎える爽やかな朝
市内の観光に行き尽くしても、この楽しさを知る人は少ないのでは!?
週末に旅気分を堪能できる夜行列車の楽しみ方を、体験報告でお届け!
明るい日差しで目を覚ますと、わずかにベッドが揺れている。
ガタンゴトン、ガタンゴトン……。
ふと窓に顔を向けると、青空の下で緑の木々が次々と後ろに駆け抜けていく――。
そんな夜行列車の旅に、憧れる人も多いのでは?
日本では贅沢な旅ですが、中国なら手軽に楽しめます。
安くて快適で旅情あり。そんな旅を、体験取材でご紹介します!
【チケットは10日前から】
まずはチケットの購入。一般に、チケットの販売は10日前からです。駅窓口で買うほか、予約サイト(「火車票8123」www.hcp8123.com/Train/など)やホットラインで個人的に予約する方法もあります(中国語に自信がなければ、中国人の知人に頼むのが無難)。お手軽なのは、旅行代理店やチケット販売代理店などを通す方法。チケットの配達もしてくれます。
購入時は、座席の種類も選びます。中国では、硬座、軟座、硬臥、軟臥の4種。「座」は座席チケットですが、夜行ならもちろん寝台チケットの「臥」で行きましょう! ちなみに、「硬」より「軟」が高価で快適。今回は、庶民派な楽しみを求め、「硬臥」を購入しました。
【待合室を経てついに乗車】
今回、目的地に選んだのは、世界遺産の黄山です。安徽省にあり、上海からは約500キロ。夜行列車なら約11時間の道程で、夜行の醍醐味を味わうにもぴったりです。便名は、22時35分上海駅発の「N418次」。
乗り方はいたって簡単。余裕を持って1時間ほど前に駅に着くと、まずは駅入り口で荷物のX線検査を済ませます。あとは、待合室(候車室)で改札が開くのを待つだけ。30分ほど前には改札が開き、乗客がぞろぞろ歩いてホームへ向かいます。チケットの車輌番号を見ながら、自分のベッドが待つ車輌を選んで乗車。
一晩のベッドと出会いを楽しむ
【出会いも嬉しい寝台】
列車の中、片側は通路になっており、反対側には、2台ごとに向かい合わせになった3段ベッドが並んでいます。平日だったせいか、客は少なめでした。チケットに書かれた「002号下舗」(一番下のベッド)で、荷物を降ろしてほっと一息。
周りを見ると、向かいのベッドの中・下段には若いカップル、自分の上には大リーガー井口似のイケメン君が。「ニーハオ!」と挨拶を交わすと、みないい人そうな笑顔を見せてくれました。楽しい旅の予感に、嬉しくなってきます。
カップルは蘇州出身、ふたりで休暇をとっての黄山旅行。「週末は混むからねー」と彼氏。井口氏は温州出身で、夜中に途中下車の予定だそう。お互い自己紹介をしていると、列車は時刻通りゆっくり発車しました。
【布団にお湯に車内販売も】
落ち着いてから、列車の設備をチェックしていきます。まず、ベッドには布団と枕。糊がきいていて、清潔感も十分です。
ベッドにはさまれた空間には机があり、熱湯入りの魔法瓶も用意されていました。お茶の葉と瓶を持参、さっそくお茶を淹れる井口氏。私も夜食に、売店で買ったカップラーメンを作ってみました。
車輌の端には、トイレ、洗面台、給湯器も。ひとり旅ならベッドを離れると荷物が心配ですが、貴重品を身に付ける、人の出入りがある停車時は動かない、などを心がければ神経質になる必要もないでしょう。
そして、お決まり車内販売。係員が軽食や飲み物を売りに回るので、利用するのも楽しいものです。夜行列車の旅も、洗面用具さえあれば、とりあえずことは足りるようでした。
【朝の日差しに浮かぶ景色】
夜も11時半頃、突然の消灯。寝る準備は、早めに済ませておくのが吉のようです。歯磨きしてベッドに戻ると、井口氏は早々に就寝。カップルの彼女はベッドでのんびりする一方、彼氏は遅くまで黄山の下調べ。
ベッドは少し狭いですが、「硬臥」といってもそう硬くはなく、それなりに快適でした。
そして朝。6時近くには車内も明るくなり、自然に目が覚めました。窓の外は、まさに旅行日和といった快晴! 美しい新緑の山々が続いています。
「みかんをどうぞ」
向かいの彼氏が声をかけてくれました。一晩を共にすると、親しさも感じるようになり、片言の中国語で会話もするように。風景を眺め、持参した文庫本を読んでいると……ほぼ時刻通り、9時半に黄山着。列車も満喫し、さあこれから黄山観光です!
(取材の終わった私は、そのまま上海へ直帰でしたが)。
目的地までの時間も楽しめる夜行の旅、ぜひご体験あれ!
3段ベッドは下段がお得
下段は座れるが、上・中段は高さがないので寝るだけ!
大荷物は早めに置く
ベッドの下と網棚が荷物スペース。早めに置かないと場所がなくなるかも!?
駅は上海南駅が綺麗
上海駅に比べ、上海南駅は新しくてとても綺麗。両方から便があるなら南駅がお勧め。
※この特集を読んで、ちょっとワイルドすぎるかも……と思ったら、是非豪華な「軟臥」で!
~上海ジャピオン5月25日発行号より