甘い料理が好きな上海人。
その上海人が愛してやまない
前菜の代表格と言えば、
焼き麩の甘辛煮「四喜烤麸 」だ。
レストランで前菜として注文するのはもちろん、
家でお祝い事をする時にも
欠かせない料理の1つと言える。
どこにでもある料理だが、
並んででも買いたいと思わせる味を
提供するのが、大富貴酒楼。
1881年創業の老舗で、上海の下町たる
豫園・孔子廟付近に店を構え、
世代や性別に関わらず
親しまれる料理を提供し続ける。
四喜烤麸 は、
名前に入る数字から分かるように、
麩以外に4種類の具材を使って作られる。
柔らかく、それでいて弾力がある
心地良い口当たり。
この四喜烤麸の主役は、
〝共演者〟を引き立てることを
決して忘れない。
煮込まれることでコクを出し、
共演者たるキクラゲ、ピーナッツ、
ワスレグサ(金針菜)、シイタケの旨みを
最大限に引き出すのだ。
「この何とも言えない甘い味が、
ヤミツキになるのよねぇ」
と語るのは、
毎週のように買いに来る
という地元のおばさん。
麸自体は確かに非常に甘いのだが、
ほかの具と一緒に食べると
まろやかな味へと昇華されるので、
甘い料理を食べ慣れない
日本人の口にも合う。
お酢につけて食べたい、コリコリの
クラゲの和え物
「葱油海蟄皮」(32元/500㌘)や、
夏にピッタリの、
酸っぱ辛い特製漬物
「九製酸辣菜」(32元/500㌘)など、
大富貴酒楼が販売する惣菜は40種類以上。
色々買って食べ比べてみよう。
大富貴酒楼
住所:中華路1409号
電話: 6377-0322
営業:8時~18時
その名も爆発する魚?
美味い部位は尾っぽ周辺
上海最大級の
ファッション関連用品卸売マーケット
「七浦路服飾批発市場」。
流行に敏感な若者が集まる一帯に店を構え、
その若者たちをも惹きつけるローカル惣菜がある。
それは、梅記大塊頭爆魚店の「爆魚」。
字面だけ見ると〝爆発する魚〟
という危ない料理になるが、
中華料理の調理用語で、
「爆」は「高温の油でサッと揚げる」
という意味なので、
中華風魚のフライということになる。
魚は、淡水魚のアオウオが使われ、
好きな部位を注文できる。
価格は部位によって異なり、
中央部は18元、尾びれ部は17元
(各500㌘当たり)で、
頭部は1個5元と格安だ。
オススメの部位について、
常連のおじさんに聞くと
「尾は1番動くところだから、
弾力があって美味しいよ」
という答えが返ってきた。
中央部と食べ比べてみると、
確かに尾びれ部分の方が
弾力が強くプリプリとしている。
料理人が手際良く揚げた魚に施されるタレは、
「原味五香(オリジナルスパイス)」、
「糖酢(甘酢ソース)」、「辣味(スパイシー)」、
「無糖五香(無糖タイプ)」の4種類。
1番人気の原味五香爆魚は、
淡水魚の臭みをしっかり抑え、
ほのかなシナモンの香りが食欲をそそる。
程良くパリッと揚がり、
ひと口噛んだだけで口内に一気に広がる、
ジューシーで濃厚な味わいに、
満足感を覚えるだろう。
1日で350㌔を売り切り、
1時間待ちは当たり前という同店。
その場でアツアツを食べた後は、
家でラーメンに浮かべて、
上海人の愛する「爆魚麺」にするのも一興だ。
梅記大塊頭爆魚店
住所:江西北路245号
電話: 6356-3228
営業: 8時~18時半
夫婦で作る四川名物
好きなモツをセレクト
ここ数年、
中国全土を席巻する
四川・湖南の辛い料理ブーム。
上海も例外ではなく、
ピリ辛料理が家庭の食卓に並ぶことも珍しくない。
牛モツのピリ辛和え「夫妻肺片」は、
その代表的料理で、
スーパーなどで
パック詰めされたものを買う人も多い。
夫妻肺片は、
モツの新鮮さはもちろん、
香辛料の配合率がキモになる。
その絶妙な配合率で、
上海人の胃袋を掴んで離さないのが、
五角場よりさらに北に店を構える
「敦化路夫妻肺片」だ。
閔行区などから、
2時間以上かけて訪れる人もいるなど、
その名は上海中に轟いている。
同店では、
重慶出身の夫婦が
共同作業で夫妻肺片を作り上げる。
ハチノス、ガツ(ブタの胃)、ウサギの耳、
アヒルの砂肝など、
15種類程のモツから好きなものを選び、
奥さんに伝える。
特に要求がなければ、お任せが無難。
その後、
旦那さんが花椒(中国サンショウ)や辣油などの
15種類以上の調味料を、
手際良く混ぜ合わせていく。
常連客は
「(無料の)ピーナッツは多めに。ピリ辛でお願い」
などとテンポ良く伝え、
それを笑顔で聞く夫婦…
その様子にホッコリした気分になることだろう。
味は、お任せにすると、
上海人好みの甘さを加えた味付けになるが、
花椒のピリピリは健在。
コリコリのモツに
パクチーの爽やかな香りなども加わり、
本場四川の味を体感できる。
辛過ぎると感じたら
香ばしいピーナッツに助けを求めるのが吉だ。
夫妻肺片一本で勝負する、
夫婦の〝作品〟を味わい尽くしたい。
敦化路夫妻肺片
住所:敦化路168号敦化野菜市場北
電話: 138-1642-6334
営業: 8時~12時半、14時半~19時
開店後4時間で売り切れ
懐かしさを誘う包み紙
そのまま食べても良し、
野菜と一緒にサッと炒めても良しの、
お手軽惣菜「醤牛肉(牛肉の醤油煮込み)」。
乍浦路美食街を南に下った一帯で、
車の排気ガスに負けることなく
漂ってくる牛肉の香りがあれば、
それは上海牛羊肉公司による
醤牛肉のものだろう。
50年以上に渡り、
清真(ハラール)牛肉・羊肉を
提供する老舗肉店だ。
同店の醤油煮込みは、
いわゆる牛肉(44元/500㌘)以外に、
牛の胃袋・ハチノス「牛肚」(44元/500㌘)、
牛スネ肉「牛肘」(49元/500㌘)を用意。
売り切れと同時に閉店するため、
また、でき立てを求めて、
開店の1時間前には列ができ始める。
砂糖を使わないということもあり、
健康に気を使う高齢者の姿も多く見かける。
人気の秘密について、来店者は
「新鮮で、味付けがバツグン」と口を揃える。
肉には深みのある醤油の味がしっかりと付いて、
噛めば噛むほど、
肉汁と醤油がまろやかに融け合う。
歯ごたえは十分すぎるくらいあり、
特にハチノスは、噛み切れないほどの弾力だ。
少し温めて中国版食べるラー油
「老干媽」と一緒に食べると、
摂食中枢が刺激され、
ご飯も酒も驚くほど進む。
夏はお酢につけて、
サッパリ風味で食べるのもオススメ。
人の手で丁寧に切られ、
昔ながらの茶色の「牛皮紙(ハトロン紙)」
に包んで手渡される牛肉。
どことなくアナログで、
何とも言えない懐かしさ…
人気の秘密はお店の各所に転がっている。
上海牛羊肉公司塘沽路門市部
住所:塘沽路310号
電話: 6324-4417
営業: 8時半~13時頃(売り切れ次第閉店)
圧力釜で一気に揚げる
マーラータンと一緒に
中国でアヒルを使った料理と言えば、
北京ダックの印象が強く、
アヒル料理は北京で愛されるイメージがある。
しかし、ここ上海の家庭でも、
ローストダックが好んで食べられている。
カルフールやウォルマートなどの
大手スーパーの食品売り場でも販売され、
人だかりができるところも少なくない。
そんな中、
ちょっとほかとは違った製法の
ローストダック店が人気を博している。
それは、
襄陽南路沿いにある「皇宮爆烤鴨」だ。
店名は、〝皇帝の宮殿〟
とかなり仰々しいが、
店自体はこぢんまりとしており、
高圧的な感じは微塵もない、
庶民的な店だ。
ここで売られる
ローストダック「爆烤鴨」は、
圧力釜で一気に揚げるため、
皮が、いわゆる北京ダックのような
カリッではなく、サクッとした感じに仕上がる。
また、柔らかいアヒルの肉には
脂のくどさはなく、醤油の味が
隅々まで染み渡っている。
イートインスペースはないので、
家に帰って食べるのがもどかしいという人や、
アツアツを食べたいという人は、
隣にあるマーラータン店
「串串香」に持ち込もう。
刺激的な辛いスープが食欲をかきたて、
ローストダックをペロリと平らげてしまうこと
請け合いだ。
今年の夏は、
アヒルの肉を野菜と一緒にガッツリ食べて、
体力をつけてはいかが?
皇宮爆烤鴨
住所: 襄陽南路311号
電話: 6415-0612
営業: 9時~13時、15時~19時半(金土日は休憩なし)
~上海ジャピオン2012年8月17日号