小小説 第18話 隙2~今日もお風呂に入ったの?~

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12月下旬のある日、母さんから電話があった。
「毎日お風呂に入って服も替えているんだって?
? 夏はまた別として、冬は寒いし、毎日ずっと座って本を読んでばかりで、激しいスポーツを全然やらない。
 汗もかかないくせに…。月夜に提灯じゃないの?」
電話の向こうで母さんは指摘した。
「日本人は一年中毎日お風呂に入り、服を替えるよ」
「そうかもしれないけど、あなたは日本人じゃない」
「陳先生はいつも、日本語を専攻する以上、日本人の習慣にも慣れておくべきだと教えてくれた。
 そして、仕事でほとんど毎日、日本の先生と付き合ったりするから、
 相手に『中国人は夏以外の季節は毎日お風呂に入って服を取り替える習慣がない、だらしないやつだ』という悪い印象をもたれないようにするそうだ」
「しかし、家はシャワーだけじゃないの。そんなに寒い天気で浴槽がなければ風邪を引きやすくなるわ。
 それに毎日取り替えた服を洗えば、服の生地は傷みやすくなってしまう。結局着壊す前に洗い壊してしまうわ」
「心配しないでください。それに、服を取り替えないで着続けたら、自分に迷惑をかけるよ」
「迷惑って…?」
「もし、取り替えないで授業に出たり出勤したら、前の晩家に帰らずどこかで遊んでいたように思われるよ。
 女の子とよからぬことをしていたに違いないとか、周りに変な噂が流れてしまう。
 将来日系企業に行くと決めた以上、この点に気を配らざるを得ない」
「そんなに大げさであるもんか…」
と、母さんは半信半疑に言った。
「本当だよ。新聞にも載っていたぞ」
私は興奮して言いながら、引き出しの中から新聞を取り出した。
それは何日か前に日本語の授業を受けた時、読解の講義稿として先生からいただいたものだ。
作者は、昔新聞記者で当時中国のハルピン理工大学で留学生を兼ねる教師だった。
作者は自分の中国滞在期間の体験と見聞を取材し、中日両国の生活習慣上の違いを書いた。
「聞いて聞いて、うそじゃないよ。じゃ、中国語で読んで差し上げよう」
「いい加減にしなさい。これは市外電話なんだから!」
「あ、そう、そうだね」
「じゃ、毎日そういうふうにしても面倒くさくないなら、どうでも勝手にしなさい」
と、母さんが電話を切った。
 日本語の勉強を始めてから、親とのこんな対話は枚挙にいとまがない。
その都度、結局はうやむやにしてきた。
何故うやむやにしたかというと、誰も相手の考えが正しくないと論証できないからだ。
だから私はほかの人の考えを尊敬しながら、自分の考えを保留している。
他人が習慣や考えを受け入れなかったとしても、他人に強要し、自分の考えを受け入れさせるわけにはいかないと思う。
この〝和して同せず〟という潤滑油は、日本人と中国人との隙だけに当てはまるものだとは一概に言えない。
中国人と中国人との隙にも同じように当てはまるはずだ。

作者:ちょうてつ

~上海ジャピオン5月22日号より

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