歌詞を味わい、腹から声を出す至福の楽しみ
相撲は、いまや世界中で知らない人はいないほど有名な日本の文化だが、相撲と共に発展してきた「相撲甚句」のこととなると、日本人でさえ知らない人は多いだろう。
しかしここ上海には、この相撲甚句をこよなく愛する人たちが集まる「上海相撲甚句会」がある。
お国自慢を携え「巡業」
「アードスコイ ドスコイ」
夕暮れ時の相撲茶屋に、伸びのいい甚句の節回しが響く。
朗々と唄い上げるのは、この日集まった上海相撲甚句会のメンバー約15人。節々に「ホイ」と入る相の手が軽快だ。
相撲甚句とは、もともと相撲界で唄い継がれてきた伝統芸能だが、次第に誰もが愉しめる歌謡へと裾野が広がった。
「甚句は詞が楽しい」と魅力を語るのは、同会会長・岩見正昭さん。川柳風のピリッと風刺が効いた詞が笑いを誘う。
また、詞を自作するのも楽しみのひとつだ。県人会の盛り上げ役としても名を馳せる岩見さんは、福岡県、岐阜県、京都府の「お国自慢」を自作し、県人会で披露した。目下の夢は、残すところ十県ほどとなった県人会の「巡業」だ。
相撲甚句会は、日本国内のほか、海外にも3団体あり、楽しみながら文化の継承を担っている。
詞の深みを味わう
相撲甚句には、伴奏はなく、使うのは拍子木だけだ。この身軽さで、上海でも県人会のほか、開業式や送別会など様々なシーンに華を添えてきた。
甚句への入り口は様々で、メンバーの中には相撲好きはもちろんのこと、民謡から入った人や、日本文化の「粋」に惹かれて始めた人もいる。手に手に譜を持ち詞を詠む表情は、いずれも至福の顔。甚句を唄う心地よさは、一度唄った人を魅了する。今後もここ上海で、日本伝統の「粋」が唄い継がれていくだろう。
唄うのに難しい決まりはない。「とにかく気持ちよく唄えばいいんです」と岩見さん。
「上海相撲甚句会」への問い合わせはiwajinku@hotmail.co.jp
~上海ジャピオン2月16日発行号より