むなしいマートン
私は考える男マートン。最近、哲学を続けていても、真理にたどりつけないのではないか、と感じることがある。そこで今日は癒しを求め、マッサージ店にやって来た。
極楽だ…。こうやって全身をほぐされていると、自分のこだわりなどどうでも良くなってくる。私は少々、哲学や小部屋(トイレ)に執着し過ぎていたのかもな。よし、最後に小部屋(トイレ)で用を足してから、家に帰ってのんびりしよう。
現実歪曲の哲学
ん? 個室内になぜか、恐らく世界で最も有名な実業家の、スティーブ・ジョブズの写真が。アップル社の創業者であり、数々の革新的な製品を生み出した彼は、個性的かつ完璧主義な性格でも知られ、そのカリスマ性から「現実歪曲空間」という言葉も生まれた。これは、実現が難しいと思われることを、巧みな話術やプレゼンで、自身を含む周囲に納得させてしまうことを意味する。
…そうだな。私も、いくら真理透徹への道が困難に思えたとしても、不可能と言うのはバカバカしい。早速、現実歪曲空間を作り出す訓練を始め、ゆくゆくは、小部屋(トイレ)から世界を変革するのだ! ありがとう、いい小部屋(トイレ)であった。
~上海ジャピオン2014年1月24日号