山岳地帯に住む遊牧民 世界最長の叙事詩マナス
キルギス族は、
新疆ウイグル自治区の西部にそびえる天山山脈と、
西に接するキルギスに暮らす。
この地域に住むキルギス族は、
今もキルギス語を話し、
アラビア文字を基調とした独自の文字を使う。
キルギスとは、テュルク語で「40人の少女」、
「40の集落」などを意味し、
アジアで最も古い民族名の1つとして、
紀元前2世紀の史籍にも名を残す。
「キルギス」という言葉は
本来カザフ民族を指すものだったが、
両民族には生活習慣や言語などの共通点が多い。
どちらも遊牧生活を営むが、
草原に住むカザフ族に対し、
キルギス族は山岳地方を好み、
拠点が異なることが特徴だ。
遊牧民でありながら、天幕式住居『ユルト』のほか、
定住用の住居を持つことも
キルギスでは、男が羊を放牧し、
女は乳搾りやバターなどの乳製品を作る。
男たちが草刈りに出かけると、
女たちは羊を囲んで『ベクベケイ』という歌を
歌って狼を遠ざける。
こうした暮らしは、
一体どれだけの間変わることなく続けられてきたのだろう。
長い歴史をもつキルギス族の文化の1つとして
『マナス』という英雄叙事詩がある。
勇士・マナスを始め3代に渡る周辺民族との戦いを
歌ったもので、世界最長の叙事詩という。
文字にして8部、20数万行にもわたる内容を、
千年も昔から口承してきたというから驚きだ。
「マナスチュ」と呼ばれる語り手が、
弦楽器「コムズ」や、
口琴「オオズ・コムズ」による伴奏に合わせ、
数日をかけて語る。
『マナス』の歌い手。
マナスは15世紀の文献に出てくるが、
作られた時期は7世紀とも言われる
コムズを弾く少年。継承者は減りつつある
3000㍍を超える山々に囲まれた荒地もあれば、
なだらかな牧草地も広がる天山山脈。
厳しい天候の日が多いが、
大自然の織りなす壮大な景色に身も心も委ね、
壮大な叙事詩の世界に浸りたい。
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~上海ジャピオン8月12日号