国を越えた恋人たち 上海国際結婚アルバム


世界中の人々が出会う国際都市・上海では、国際結婚という物語も生まれる
その舞台には、〝外国人〟のひとりである我々日本人もまた登場する
国、言葉、文化を越えた恋人たちの姿を、上海の今という瞬間で切り取った

別世界の住人だからうまくいく

コロンビア

 サルサバーで意気投合。話してみれば、お互いの趣味から飼っていた犬の名前までぴったり同じ――それが、森奈央さんとレオポルド・グアリンさん夫妻の出会いの瞬間だ。彼の故郷は、地球の裏側・コロンビア。
 「国が違うことに不安はなかったです。国籍じゃなく、彼が彼だから付き合っていたので」
 さらりと微笑みながら奈央さんは話す。出会う前に、奈央さんがコロンビアを旅していたのも、レオポルドさんの最初の職場が日系企業だったのも偶然だ。付き合う準備をしていたかのようなふたりは、1年の交際後に結婚。今は1歳4カ月の娘と暮らしている。共働きなので、アイさんも強い味方だ。
 「上海は、アイさんが家事・育児を軽減してくれるのでいいですね。国際結婚が特別扱いされないのも楽。でも重要なのは、両方の故郷から離れていることかも知れない。日本でもコロンビアでもない〝外国〟に住んでいるからこそ、互いに個人として付き合えるんです」
 取材中も、日本語をレオポルドさんに訳し、自然に会話に引き込む奈央さん。個人として対等――そんな心地よい関係が伝わる。そこでは文化の違いを意識することはあるだろうか。
 「彼の家族とのつながりの強さには驚きますね。それに、子どもを中心に考える彼のスタンスには影響されています」
 奈央さんが話していると、レオポルドさんが「ラテン系だから怠け者だなんて話してないよね?(笑)」とつっこむ。
 「実は私、大雑把でアスタ・マニャーナ(明日があるさ)的なラテン気質。彼は細かいので、よく逆だと言われますよ(笑)」

 レオポルドさんが言葉をつぐ。「でも全然違う人と暮らすと成長できるよね。特に国際結婚は、お互いの文化の最良の部分を出そうとするから面白い」。
 重なる部分と、逆の部分を持つふたり。その違いは、互いの世界を凹凸のようにぴたりとつないでいる。最後に、奈央さんが照れたようにつぶやいた。「昔上司が、夫婦の性格は反対の方がうまくいくって言っていたんですよ。その言葉を、今になってふと思い出しました」

《森奈央さん×レオポルド・グアリンさんご夫妻》
 結婚歴1年10カ月。プロポーズの言葉は、彼の実家に遊びに行った際の紹介のセリフ「彼女は、僕が結婚したい人です」。式は東京の明治神宮で。「彼の紋付袴が、私の白無垢より似合っていて驚きました(笑)」と森さん。衝突しないための秘訣を訊くと、「気にしないこと」(妻)、「相手の立場で考えること」(夫)。

男女平等、でも惚れたら負け

スウェーデン

「夫に会って、世界の見方が180度変わったんです」
 面白そうに話すカールソン・マリさんが、スウェーデン人のロバートさんと出会ったのは14年前。東京の電車内でふと道を訊かれ、そのまま食事に誘われたのがきっかけだ。
 「ずっと追いかけるばかりの恋愛で、追いかけられて振り向いたのは夫が初めて」
 以前は、日本から出るなんて考えもしなかった自分が、そのまま国際結婚。しかも夫は、国際的な大企業の駐在員。日本の次は香港、そして上海に転勤し、次は世界のどこに住むか予想もつかないインターナショナルな人生が始まった。
 「上海は来るのも嫌でしたが、今はここで暮らせたらどこでも暮らせるって思います(笑)」
 驚いたのは、スウェーデンでは完全に男女が平等な事。男性も料理や裁縫をするので、スウェーデン料理も夫から習った。
 「でも、女性にも男性に頼らない強さを求められるんです。女性も仕事をして当然という考えは、私自身もそのつもりだったので良いのですが……」
 なんと、力仕事まで男女平等。家の改装などは自分達でやるお国柄で、そんな大工仕事も当然のように求められる。
 「スウェーデンの女性は、骨格もしっかりしていて力が強いんですよ。夫も、女性は男性と同じ荷物を持つものと思ってるから、『なんで君は持てないの?』と言われたり(苦笑)」
 そこはきっぱり断わった。意見がぶつかれば、譲るのは夫だ。
 「夫には惚れた弱みがあるから(笑)。結婚は、女が追いかけられている方がいいですよ」

《カールソン・マリさん×ロバートさんご夫妻》
 結婚歴12年5カ月。プロポーズの言葉は、彼の「今日も明日も明後日も一緒にいなきゃダメなんだ」。スウェーデン式披露宴では、花嫁が出席した男性全員とワルツを踊るため、マリさんは数カ月レッスンを受けた。「国際結婚は、お互いにとって第三国に住むことが(対等になるため)大事」とマリさん。

彼は日本文化の継承者

中国

 上海のマンションの一室に「和室」がある。原田優子さんと楊洋さん夫妻の自宅だ。
 「欲しいと言ったのは私で。造るのに2カ月かけました」
 嬉しそうに微笑む優子さんに、洋さんも優しげに声を返す。
 「中国で生活する彼女に、自分の国の雰囲気を少しでも作ってあげようと思って」
 ふたりは6年前、上海の職場で知り合った。お互い仕事に生真面目なところがソックリだった。自然と惹かれ合い、2年の交際を経て結婚。
 時には、「中国文化への不満のはけ口が、中国人である夫になってしまう」(優子さん)こともあったが、なにせ、靴が好きなファッションセンスも、片付けが細かい性格も、食の嗜好も、みな一緒。さほど大きな問題にはならなかった。
 そして、自然な日本語を話す洋さんは、優子さんが驚くほど日本文化への理解が高かった。ふたりの新居を構えた時、洋さんは複数の業者に発注して、この「和室」を造りあげる。
 「私自身も、中国を海外と意識しないくらい、この国に慣れるタイプ。だから、お互いが無理やり合わせているという感覚はないんです」
 取材中も波長ぴったりに溶け合うふたりの会話には、日本の「和」の感覚すらある。日本文化への興味を訊ねると、洋さんははにかむように笑った。
 「実は、中学生の時から、日本のドラマやアニメに夢中だったんです(笑)」
 実家にはマンガも数百冊持っていると言う洋さん。そこで培った感覚も、ふたりの和に一役買っているのかも知れない。

《原田優子さん×楊洋さんご夫妻》
 結婚歴1年8カ月。プロポーズの言葉は、彼の「ずっと一緒にいたいと思っているけど、付いて来てくれますか?」。披露宴はグランドハイアット上海にて日中折衷様式で。国際結婚では「戸惑うことがあっても、その国の文化だと受け入れることが大事」と優子さん。お腹には8カ月になる赤ちゃんがいる。

あんたなんかキンピラや!

中国

 子どもの頃から中国が好きだった。小遣いで買った教本を手に、独学で中国語を学んだ。漂々とした口調で、春名敦貴さんは話す。「ああ、やっぱり俺は中国人と結婚したんだなと、今になってよく分かります」。
 張敏さんと出会ったのは、8年前、春名さんが岡山県の日本料理店で修業していた時代のこと。彼女が、店の社長に中国語を教えていたのが縁となった。交際2年、結婚を決めた。
 「当時は、(互いの国が違うことに)重圧があった。だけどおかしなもんで、結婚してからは、かみさんが外国人だと思ったことは一度もないです」
 結婚後は、日本での独立、広州での5つ星ホテルの料理長勤務を経て、4年前に上海に移住。そんな結婚を決意したきっかけは、3日かけて作った懐石料理を食べさせた時のことだ。
 「食べてすぐ『味が薄くて美味しくない』と。腹は立ったけど、正直な人だと思いまして(苦笑)。気を遣わなくてすむところが逆に気持ちよくてね」
 「そんなにわざわざ作ってたなんて、こっちは知らない訳ですよ!」。隣ですぐさま敏さんが笑いながら抗議する。と、夫妻の間に、関西人のような冗談交じりのやりあいが始まる。
 「毎日退屈しないことは確実ですよ。つっこみ、つっこまれですからね(笑)」
 取材中もぽんぽん軽口を交わすふたりを見て、本気の喧嘩に発展することは? と意地悪な質問をぶつけてみた。
 「でもね、喧嘩してても『あんたなんかキンピラ(チンピラ)や!』とか言うんですよ。笑えるじゃないですか?」

《春名敦貴さん×張敏さんご夫妻》
 結婚歴6年。プロポーズの言葉は秘密。もうすぐ5歳になる娘のひとみちゃんと3人暮らし。春名さんは、現在「うどんすき河むら」の料理長を務める。「プチ戦争」になるほどの夫婦喧嘩はしょっちゅうだと言うが、「喧嘩は終わればそこで止め。1日たてば、また次のが始まるから(笑)」(敏さん)。

それぞれの結婚スタイル


上海で国際結婚を営む日本人男女18組にアンケート

《●結婚式と披露宴》
「5~6時間踊りまくる」(夫はメキシコ人)。「朝昼晩違う人が来て(妻も知らない人多数)白酒・ビールの一気飲み×3日。何がなんだか分からないうちに終わった」(妻は中国人)。
《●家庭の共通語は……》
「英語6割、日本語4割」(夫はカナダ人)。「中国語と英語」(夫はシンガポール人)。「夫婦間は英語、夫→子はスペイン語、私→子は日本語、家族→アイさんは中国語」(夫はコロンビア人)。子どもの母国語では、日、英、中、バイリンガルなど、それぞれの選択があった。
《●上海暮らしの長短》
長所で多いのが、国際結婚が目立たず同じ立場の知人もできやすい、海外食材が入手しやすい、アイさんがいて助かる、など。「自由に生活スタイルを選択できる」(夫は中国人)。
 短所には、環境問題が挙がったほか、「私が中国人に見られ、いつも店員が私に話しかける」(夫はメキシコ人)。
《●カルチャーショック!》
欧米の男女平等に驚く声多し。「妻が夫より優秀な方が自慢になるとか」(夫はカナダ人)。ほかに「家族への電話が頻繁」(夫はメキシコ人)。「親の庇護を当てにし過ぎ」(妻は中国人)。
《●衝突しないための心がけ》
「ありがとうを欠かさない」(夫はメキシコ人)。「違う常識を理解する」(夫はドイツ人)。「誤解が生じないよう、同じ内容を色々な言葉で言い換える」(夫は中国人)。
《●ここが楽しい国際結婚!》
色んな経験で視野が広がる、との声多数。「夫婦同伴の席が多く、人間関係が広がる」(夫はカナダ人)。「外国に住んだり海外へ飛んだり、生活が変化に富む」(夫は中国人)。「日本の良さを再認識できる」(夫はドイツ人)。「そんな考えがあったかと納得できる」(夫は中国人)。
 最後に、トラブルがあるから楽しい、という頼もしい意見を。「ニュアンスが完璧に伝わらない(から良い)」(夫はシンガポール人)。「共通語を話す相手以上に、深い部分で話し合える」(妻は中国人)。「予想不可能な事が度々起こるので刺激的」(妻は中国人)。「苦難をふたりで乗り越える機会が多く、絆が深まる」(夫はカナダ人)。

■女性回答者(10人)の配偶の国籍は、中国(4人)、カナダ、コロンビア、シンガポール、スウェーデン、ドイツ、メキシコ(各1人)。
■男性回答者(8人)の配偶者の国籍は、中国人(7人)、韓国人(1人)。
■ちなみに回答者の平均年齢は36.1歳、結婚までの交際歴は平均2年6ヶ月でした。

~上海ジャピオン6月8日発行号より

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