世界遺産・西湖を巡る
女「前に杭州へ行った時は、大雨で景色を楽しめなかったから、今回の旅行でリベンジよ」
男「今回は社員旅行の下見で、僕は報告書とかあるんだぜ。ちょっとは気を使ってくれよ?」
女「そんなの後で勝手にやりなさいよ。まずは楽しまきゃ、人に紹介できないでしょ」
男「まあね。杭州と言えばやっぱり西湖十景かな。僕のオススメは柳浪聞鶯だね①」
女「どんな所なの?」
男「しだれ柳が風流で、日頃のストレスを癒してくれるのさ」
女「あら、あなたにもストレスなんてあったのね」
男「そう、今まさにね。君は西湖新十景の霊隠寺でやさしさを養って来なよ④」
女「あなたは落ち着きを学ぶといいわね。それより、十景とか新十景とかって何なの?」
男「西湖十景は宋の時代からの名所で、杭州の観光業振興のため、1984年に新西湖十景、2002年に西湖新十景が…」
女「ふーん」
男「自分で聞いといてなんだよ。で、君はどこが見たいの?」
女「そうね。まずは1元札に載ってる三潭印月かな。この子も遊覧船に乗せたら喜ぶわよ②」
男「じゃあ対岸に着いたら岳廟に行こう」
女「ストップ。岳廟って何よ?」
男「南宋の武将で救国の英雄と謳われた岳飛(がくひ)の墓さ。世界史で習っただろ?」
女「知るわけないでしょ。もっと私の楽しめそうな場所は?」
男「それなら白堤はどう? 今の季節なら自転車を借りてサイクリングしたら最高だろうな。あとは絶景スポットの九渓煙樹とか、縁結びで有名な黄龍洞とか③⑤」
女「今さら誰と縁を結ぶのよ」
男「僕は何度でも君と縁を結びたいと思ってるけど?」
女「まったく、調子がいいわね」
おいしい水の源流へ
男「これだけ回ってのどが渇いた、そんなアナタに絶好の休憩スポットをご紹介!」
女「急になんか始まったわ」
男「鎮江の中冷泉、無錫の恵泉に次ぐ中国三大名泉の1つ、虎跑夢泉さ。風光明媚な湧水地で、冷たい水をご賞味あれ!⑦」
女「湧き水がタダで飲めるの?」
男「そう、湧き水を汲んで、自由に飲める場所があるんだ」
女「じゃあ空のタンクを持って行こうかしら」
男「えっ!? 誰が運ぶんだよ」
女「あら、お姫様を働かせたりしないわよね、ダーリン?」
男「人使いの荒いお姫様だぜ…」
龍井村にて緑茶で一服
男「冷たくておいしい水でのどを潤したら、熱いお茶で一服したいと思わない?」
女「そうね」
男「そこで次に向かうのが龍井村。中国の代表的な緑茶〝龍井茶〟の産地、ここにあり!⑥」
女「中国茶っていうとプーアル茶とか鉄観音の印象が強いけど、上海からこんなに近いところに緑茶の産地があるのね」
男「色、味、香り、茶葉の形の4点から高評価を得ているんだ」
女「この子にも山の空気とお茶をプレゼントしたいわ」
男「そして、このエリアで見逃せないのが満隴桂雨。なんと、秋に花見ができるんだ⑧」
女「秋で花見? …コスモス?」
男「いや、秋桜とは書くけども。明の時代からキンモクセイが有名で、ちょうど9月下旬から10月が見頃なんだぜ」
女「へぇ」
男「キンモクセイのジャムやお菓子、それにお茶もあるんだ!」
女「あなたはいつからそんなにお茶好きになったのよ」
男「前に会社の同僚と中国茶芸を見に行ったことがあるんだけど、それがまた…」
女「あーハイハイ、それはまた今度聞くわ」
男「うーん、なんだか最近扱いがひどい気がする。あ、昔からか」
休憩後はショッピング
女「せっかくの旅行なのにショッピングが入ってないわ」
男「じゃあ、駅近くの河坊街なんてどう? 中国の古い街並みを再現した観光街で、杭州のお土産屋はもちろん、漢方や美術品の老舗店もあるんだぜ⑨」
女「へぇ、面白そうね。私は武林広場に行ってみたいわ」
男「杭州のショッピング街だね。すぐ近くにアパレルショップが建ち並ぶ武林女装街もあるぜ」
女「最高じゃないの!」
男「いやいや、武林広場の魅力はまだ終わらないよ」
女「もったいぶらないでよ」
男「実は夜になると夜市が開かれるのです⑩」
女「へぇ、朝から晩まで買い物三昧ね♪」
男「それは僕が保たないけどね」
少し変わった民宿
男「そういえばまだ泊まるところを決めてないな」
女「良さそうなはある?」
男「そうだな、馬灯部落なんか良さそうだよ。レトロな雰囲気の民宿で、ランプの灯で内部を照らしてるんだ」
女「あら、食事もおいしいみたいね、ネットで話題になってるわ」
男「あとは、日本風の民宿・飛鳥集もオススメだね⑪」
女「日本風?」
男「そう、オーナーが日本に留学したことがあるし、奥さんは日本人なんだって」
女「国際結婚か。憧れるわね」
男「そんな歳…すみません、ごめんなさい、痛いから足どけて」
女「わかればよろしい」
男「ふぅ。民宿は1階にカフェがあって、まったり出来るのさ。畳のスペースもあるんだぜ」
女「迷うわねぇ」
男「どっちも人気だから、泊まるなら早めに予約しないとな」
杭州グルメを食べよう
女「杭州ってどんな料理があるの?」
男「一番有名なのは豚の角煮『東坡肉』だな⑬」
女「脂っこくないかしら?」
男「店によるけど、『楼外楼』って店で食べた知人の話だと、しつこくない程度に抑えられてて、すごくおいしかったってさ⑯」
女「ふーん。楼外楼は…西湖孤山の近くにあるから、白堤でサイクリングした後に行くといいわね」
男「ほかには、さっき話した河坊街にある『状元館』、『皇飯児王潤興酒楼』なんかも、老舗杭州料理店として有名なんだぜ⑰⑱」
女「杭州料理って東坡肉だけなの?」
男「もちろんまだまだあるさ。西湖で獲れるソウギョを黒酢で煮込んだ『西湖醋魚』とか、龍井の新茶で和えた『龍井蝦仁』とかも有名だよ⑫⑭」
女「へぇ、あとはこの子にも食べられるスープなんかがあればいいんだけど」
男「その言葉を待ってたぜ!」
女「そんなピンポイントに待ってないでしょ」
男「まあそう言わず、僕のイチオシ、『西湖牛肉羹』を紹介させてよ⑮」
女「随分と自信があるのね」
男「うん、ベースは牛肉に卵、キノコ類で、アッサリしたものと、濃厚な味のものがあるんだ」
女「どっちがおいしいの?」
男「僕はどっちも好きだけど、個人的には濃い方かな。ご飯にかければ、何杯でもいけるぜ」
女「そのドヤ顔がイラッと来るけど、そこまで言うなら食べてみたいわ」
男「あちこちでご飯にする予定だから、両方食べたらいいよ」
女「そうと決まったら、旅行グッズを買いに行くわよ。荷物お願いね、ダーリン♪」
男「お手柔らかに頼むよ」
~上海ジャピオン2014年10月10日号