害虫撃退

害虫戦線異常無し



蚊との空中戦、ゴキブリとの白兵戦。苛立ちや悲鳴を乗り越え、安堵を手にする。
夏になると、そんな戦いが日々繰り返される。
まずは敵を知ること。その上で有効な戦略をとり、撃退していこう。

【蚊】

ステルス戦闘機のようにひと目を掻い潜って忍び寄り、血を吸う。襲ってくる猛烈な痒み――。夏は蚊との戦いだ。そして今夏、その戦いが空前の激戦を迎えようとしている。
というのも、今上海では蚊が大発生中。その数は例年の2倍とも3倍とも言われる。蚊にとって上海は、セミやトンボなど蚊を捕食する昆虫が少なく繁殖しやすい環境。これに輪をかけて、ことしは暖冬や緑化政策の影響で蚊が住みやすい状況がさらに整ってしまった。また、中国には日本脳炎を運ぶデンジャラスな蚊が生息していることも覚えておこう。

蚊が卵からボウフラを経て成虫になるのに必要な期間は10日~約2週間。ただし、近年の上海ではこの期間がさらに短くなっているようだ。
蚊は普段花の蜜や草の汁を吸っているが、メスに限り繁殖のため1日に体重と同じだけの血を吸う。標的を探すときに、蚊が頼るのが二酸化炭素や温度など。その感知能力は30㍍にも及ぶ。

業務用の蚊取り機器の販売も扱う藤野商事貿易有限公司によると、蚊対策には、
①外部を除虫すること
②外部から侵入を防ぐこと
③個々で自分の身を守ること
の3つが必要となる。
忘れてしまいがちだが、重要なのは蚊の絶対数を減らすこと。マンションや居住区単位で協力し、周囲の定期的な除虫をしっかりと行うのが一番効果的。その後で、網戸を取り付けるなど外部からの防衛ラインを固める。そして最後に、各部屋や各人で、蚊取り線香や虫除けスプレーなどを使用するのが理想だ。
「蚊取り線香や蚊取りマットなど、どれも効果が期待できます。ただし、これらには人体にも影響のある『ピレスロイド』が含まれています。妊娠中の方や幼稚園や子どもさんのいる家庭では、使用時には換気に注意するのがベターです」と、同公司はアドバイスする。
痒みからの解放と平和な睡眠のため、夏の蚊対策を怠ってはならない。

平和を脅かす害虫たち


【ゴキブリ】

カサカサッと高速移動を繰り返し、時にベババババッと羽音と立てて飛んでくる害虫界のエース。特にローカルアパートや学生寮に住んでいる場合、遭遇するケースが多い。
 彼らは巣を持ち、基本的にはそこでじっとしており、夜になると活動を始める。好むのは「暗・狭・暖・湿」な場所。電化製品の陰などは狙われやすい。雑食性なので人間の食物だけでなく、落ちている髪の毛さえも食べる。
 蚊に比べると身体的な害は少ないように思えるが、汚物の上を歩いた足で食器などの上を歩き回り、病原体を運ぶという非道ぶり忘れてはならない。また、精神への破壊力は圧倒的で、見つけた人を妙なテンションにしてしまう。
 戦略としては、彼らの侵入を防ぐことが第一。ただし、彼らは1㌢ほどの隙間があれば侵入して来る。まずできることとして、侵入ルートに良く使われる排水溝、特に台所の流しなどは使わない時には蓋をしておこう。ほかにエアコンの排水パイプや、排水パイプと壁の間の隙間からの侵入もよくあるパターン。排水パイプの外の出口には目の細いネットや不要なストッキングを被せ、パイプと壁の隙間がある場合は殺虫剤を噴霧した布などを詰めておくのも有効だ。
 もし侵入を許しても、清潔で食料のない環境なら、彼らも住み着かない。ゴミや洗い物をためず、普段から部屋を掃除しておくことが大切だ。
 最後に、彼らと面と向かって勝負するときは、前方から叩くのがベスト。彼らの尻には風を感知するセンサーがついている。武器がないときは、ジャピオンを使ってもらっても構わない。

【ダニ】

高温多湿の梅雨。この頃よりダニは、布団や絨毯を中心に勢力を広げ始める。好物は人間のアカやフケ、食べ物の残りカスなど。実際ダニは目に見えない大きさで、身の回りに何万~何十万といるので、根絶やしにすることはできない。害のない程度にまで減らすことを目標にしよう。
人を刺すダニは、実は全体の数%程度。ただし、刺されると赤いポッチリと、根強い痒みが生まれる。これだけでも十分憎いのだが、彼らの本当の怖さは、アレルギーや喘息の発症・悪化を引き起こすところだ。
手っ取り早い戦略が湿度管理。彼らは湿度70%前後で活動が最も活発になり、50%以下である程度死滅する。まずは通気と除湿を心がけよう。その後、定期的に布団を天日干して湿気を抑えるのが肝心。
 上海は日本ほど対ダニ用グッズが充実していないので、普段からの防衛が重要になる。

【衣料害虫】

またの名を〝タンスの虫〟。その正体は、カツオブシムシやガの幼虫だ。ウールや絹などの動物性繊維の服自体が食料となる。特に食べこぼしやシミのついた部分を好んで食べ、発見した人に服の値段やお気に入り度に比例したガッカリ感を与える。また、綿や麻などの植物性の繊維、合成繊維の服もターゲットになる場合がある。
 彼らは、もともとタンスで待ち構えている訳ではなく、外出時に服に卵が付着し、それがタンスのなかで孵化したもの。ただし、服を食べるのは幼虫時のみ。暗く風通しの悪い環境を好む。
 応戦する際は、防虫剤が有効。タンスやクローゼット、収納ボックスは詰め込みすぎにならないよう整理し、防虫剤をひとつ入れておくだけでも効果がある。そのほか、コートなどは長期的にしまう前に、クリーニングに出しておこう。

兵器を駆使して敵を討て

【上海網戸事情】

害虫との戦いは、まずその侵入経路をシャットアウトすることに始まる。日本では標準装備されている対害虫バリケード=網戸(中国語では「紗窓」)だが、上海ではあまり見かけない。しかし、注文すれば取り付けは可能。この盾を装備しない手はない。さらに、網戸に虫除けスプレーなどを噴射しておけば、より強固な対害虫バリアーとなる。
 とは言っても、こちらの住宅事情では取り付けに対する不安もあるだろう。網戸用レールもなければ、高層階の部屋も多い。しかしそんな心配は杞憂だ。
「網戸は部屋の内側に設置するので、ほぼ全てのお宅で1時間程度で取り付けられます」と、アドバイスをくれたのは、網戸の販売を手がける上海岩崎環保科技有限公司の総経理である岩崎氏。
 上海における一般的な網戸の価格は200元前後。この価格には基本的に取り付け費用、網戸のレール代など全て含まれている。安いものなら100元以下から、高級商品となると500元近いものまであり、そのラインナップは幅広い。しかし、迷うことなかれ。対害虫装備が目的の我々にとっては、網目の大きさが16~24メッシュあれば十分だ(20メッシュ=網目幅1.00㍉)。さて、基本情報を抑えたら、早速取り付けに入ろう。

【網戸取り付け手順】


取り付けの流れはいたってシンプル。申し込み後の流れは次のとおり。
①採寸の日取りを決める
②スタッフが採寸に自宅へ
③1時間程度で採寸終了
④採寸時に取り付けの日取りを決める
⑤スタッフが取り付けに来る。1時間程度で完了
①~⑤の手順は会社によって異なるが約1~2週間で完了する。また、採寸は会社によって有料・無料と分かれるので、確認するのが望ましい。
 この夏、網戸という強固な防御ラインを張り、快適な夏ライフを送ろう。




~上海ジャピオン7月13日発行号より

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