上海ルームシェア図鑑

気になることはすぐ伝える
家賃8000元の3LDKを、
フィリピン系アメリカ人のブライアン(29歳)と
マレーシア華僑のトミー(24歳)と
3人でシェアしている井上さん(24歳)。
高校卒業後に上海の大学に留学し、
以来ずっとルームシェアを続けている
ルームシェア大好き人間だ。
3人で話す時は、英語を使うとのこと。
「一緒にご飯に行ったり、仕事や恋愛、
色んな話ができて楽しいです。
『男性と一緒で抵抗ない?』とか
『恋愛関係になったりしない?』
なんて聞かれるけど、全然! 
2人とも優しくて、兄弟みたいなもんですよ」と、
井上さんは語る。
シェアする上で大切なのは、
「思いやりを持ちつつも、気を遣い過ぎないこと」と
井上さん。
「お互い気になることがあったらすぐ言い合うので、
全然トラブルとか起きないですね」。

相手の人柄もよく見よう
また、こんなエピソードも。
「友だちとリビングでDVDを観ていた時、
夜になってトミーが寝るから静かにしなきゃと
思って音量を下げたんです。
そしたらブライアンが、
『僕の部屋、使っていいよ』と言って、
自分はリビングで過ごしてくれました」。
ブライアンも「トラブル以上に楽しい部分の方が多い。
一緒に暮らす中で、
相手の性格なんかを見ながら合わせていけばいい」と、
ルームシェアを楽しんでいる様子。
それぞれ無理せず、
自然な思いやりを持って暮らしている3人。
でも、だからこそルームシェア選びで大切なのは
「相手の人柄」と井上さんは言う。
「シェア相手と交流したいなら、
下見の時に部屋よりも相手の人柄をよく見ること」
とのこと。
井上さんは信頼できる相手と出会え、
ルームシェアライフを楽しんでいるようだ。

5人と1匹の大家族
最近、上海での大学生活を終えたばかりという丸山さん(25歳)
の住むシェアハウスは、
人民広場まで徒歩数分という絶好の立地。
日本人、中国人、在日韓国人の3カ国5人で
賑やかに暮らしている。
「部屋探しをしていた大学4年生のとき、
当時この家に住んでいた友人に頼んで
とりあえず短期間のつもりで住み始めました。
そしたら立地もいいし部屋も広くて快適で、
完全に気に入ってしまったんです。
この螺旋階段も素敵でしょう」と語る丸山さん。
家賃は部屋全体で6500元。
丸山さんが1900元、
在日韓国人の李さんと中国人のミンミンさんが、
それぞれ2300元だ。
李さんはもうすぐ日本に帰国予定で、
その後入居予定の平野さんと2人で1部屋を使っていて、
ミンミンさんは婚約者のスーさんと2階で同棲中。
さらに、ご近所さんから預かっているワンちゃんの
Bobi貴恵も加わり、ちょっとした大家族状態だ。

上海に「帰ってくる場所」
人数が多いと、パン焼き器やコーヒーメーカー、
ポップアップ式のトースターなど、
各自の持ち物を共有することができる上、
料理をまとめて作ってみんなで食べたりすることもできる。
ミンミンさんには、
紅焼肉など上海の家庭料理を振る舞ってもらえることもあるそう。
また、友人づてに新しい入居者を入れているので、
日本に完全帰国した後でも、再び遊びに来れるのだ。
「いつかまた旅行で上海に来ても、
この家に泊めさせてもらえる。
帰って来る場所があるんです」と笑顔で語る丸山さん。
ルームシェアのおかげで、
上海にいつでも戻れる実家のような居場所ができた。

シェアでも1人暮らし感覚
この家に住む後藤田さんは、
地鶏料理専門店「鳥伴長KIZUNA」の店長。
「普段は仕事でほとんど店にいることが多い。
家には寝に帰るだけなんで、
だったらルームシェアで家賃を抑えようと思ったんです」という。
1年3カ月ほど前、
店のお客さんだった小林さん(33歳)に
お願いして住むことになった。
昼間サラリーマンとして働く小林さんは、
「2人の生活時間が全然違うので、
感覚的には1人暮らしと何も変わらないんですよ。
家賃が半額になっただけで、良かったです」という。
2人が一緒に会うのは、1カ月に数回程度だそうだ。
男2人のルームシェアだが、室内はわりと片付いている。
小林さんが、
毎月150元で週1回アイさんを呼んでいるからだ。
「これ、大きいです。
男2人だったら絶対アイさんがいた方がいい」
と後藤田さん。
掃除や洗濯の分担を決める必要がなく、
共有スペースも快適に使える。
掃除は週1回でも、
「家では出前とカップラーメンぐらいしか食べないので、
キッチンも大して汚れないから気にならない」とのこと。
家賃は家全体で3200元で、
それを2人で折半。
古北エリアで飲みにも出やすい立地などを考えると、
確かにリーズナブルだろう。

困ったときは助け合う
ルームシェアのメリットについて後藤田さんは
「オレ中国語が苦手なんで、
大家さんとの交渉を全部相手にやってもらえる」、
小林さんも「この前風邪引いたとき、
熱さまシート勝手に借りちゃいました」と語る。
2人とも「あまり細かいことは気にしない」タイプなので、
トラブルになるようなこともないという。
1人の時間も大切にしながら、賢くシェアを続けている。

シェア相手が入れ替わる
西山さん(30歳)がこの家に住み始めたのは、
今から半年ほど前。
以前は500㍍ほど近くの別のアパートに暮らしていたが、
「ある朝、大家さんに突然叩き起こされ、
『この家の買い手が見つかったから、
アンタは24時間以内に私の持っている別の家にさっさと引っ越し!』
と鬼の形相で言われてしまったんです」と、
西山さんは引っ越しした経緯を振り返る。
部屋全体の家賃は知らされていないが、
西山さんの払っている金額は毎月1700元。
最近少し値上げされたそう。
今は中国人男性の張さん(26歳)とルームシェアをしているが、
まだ一緒に住み始めてからわずか1カ月足らず。
というのもこの家では、
大家さんの都合によって
頻繁にシェア相手が入れ換わるのだという。
「部屋が空くと、大家さんが即座に新しい住人を探してくるんです。
朝起きたら、
地方から出てきたと思しき中国人家族4人が、
リビングでゴザを敷いて寝ていたこともありました」。

中国式の目覚まし
中国人と身近に同居することで、得られるものも大きい。
「以前中国人の老夫婦が住んでいたときは、
よく家庭料理を作ってご馳走してくれました」。
作っているところを隣に立って眺め、作り方も覚えられた。
さらに意外なメリットも。
「今、うちは目覚まし時計がいらないんです。
毎朝6時半になると、
洗面所から大音量で『カァー!』という
ものすごい音が聞こえてくる。
同居人がタンを吐いているんですが、
目覚まし効果はバツグンですね。
これを機に朝型に切り替えることができました」と、
笑って語る西山さん。
どうやら、この一風変わった共同生活を、
大いに満喫しているようだ。

~上海ジャピオン8月05日号

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