トラを喰らう民族?? 炭焼き料理のほろ苦さ
雲南省南西部の山岳地帯に住むラフ族。
その昔、山から下りてタイ族の村を襲うトラに、
ラフ族が弓矢や刀で立ち向かい、
タイ族には「狩人」を意味する
「ムソー」という名で呼ばれ、
その勇敢さを讃えられているという。
また、一般的に呼ばれる「ラフ」の
〝ラ〟は「トラ」、
〝フ〟は「焼いて食べる」ことを指す。
そんな勇猛果敢なラフ族の料理を味わえる
レストラン「拉?酒家」は、
閔行区に店舗を構える。
店に入るとすぐに、
飾られたひょうたんの数々が目に入る。
神話によると、
ラフ族の祖先はひょうたんから生まれたとされ、
今では、生活に欠かせないアイテムと
なっているのだ。
また、踊り好きなラフ族愛用の
楽器の数々も展示される。
その展示を見た後に、
料理を運ぶラフ族のウェイトレスを見ると、
踊っているかのような、
軽やかな足取りに見えてくるから不思議だ。
メニューには、
さすがに民族名の由来となった
トラの肉を使った料理はないが、
焼き物料理が充実する。
ティラピアを炭火で焼いた「拉?炭?魚」(38元)
や焼きナスの和え物「拉?炭?茄子」(18元)は、
炭焼きのほろ苦く香ばしい味に、
後からやってくる辛味が混ざり合う。
ほかにも、
あっさりしたスープビーフン
「過橋米線」(28元)や、
雲南のきのこが入ったしっかり味の茶碗蒸し
「拉?白参?蛋」(22元)など、
雲南名物も目白押し。
雲南の自然の恵みがたっぷり詰まった
民族料理に、舌鼓を打ちに行こう。
店内でパオがお出迎え? 〝赤〟と〝白〟の食べ物を
モンゴル――広大な草原や遊牧民、
「源義経=チンギス・ハーン」伝説、
蒙古斑など、
日本人にも馴染み深い文化を持つ民族だ。
ただその食習慣は日本と全く異にし、
「赤い食べ物」と呼ばれる羊肉料理と、
「白い食べ物」と呼ばれる乳製品をメインとする。
その食文化を堪能できるレストランが、
オシャレストリート・泰康路近くの
ショッピングモール「日月光中心」の
地下にお目見えした。
その名も「遊牧部落」というお店の中には、
遊牧生活に欠かせない移動式住居・パオ(ゲル)
が備え付けられている。
馬頭琴や狩猟用品など、
モンゴル文化を直に体感できる
グッズが所狭しと並び、
500元のミニマムチャージが掛かるが、
中で食事も可能。
パオに入ってしばらくすると、
あまりの心地よさに、
知らず知らず横になって寛ぐ自分に気付くだろう。
ここで食べたい料理は、
やはり、前述の「赤い食べ物」と「白い食べ物」。
とろける脂身と、
超絶な柔らかさを誇る羊のスペアリブ
「?羊排」(180元)は、
口内に程よいスパイスが漂い
夢見心地になること必至。
濃厚なチーズ「原味?酪」(22元)
は歯ごたえよく、
お菓子感覚で食べられる。
ニンニクの効いたサラダ「干肉色拉」(38元)も、
箸休めにオススメだ。
塩味のクリーミーなミルクティー
「蒙古?茶(ツァイ)」(48元/ポット)や、
馬乳を使った酒「馬?酒」(15元/杯~)
などを飲みつつ、
遊牧民的な優雅なひと時を過ごしたい。
幸せ呼ぶ赤いひも? 昆虫に孔雀肉の料理も
毎年4月の「?水節(水かけ祭り)」
で有名なタイ族は、
雲南省の最南端に当たるシーサンパンナや
同最西端の徳宏自治州一帯に居住する。
礼儀を重んじる民族であり、
外部から客が来た時、
家長は客に木の枝で
軽く水をかけて歓迎の意を表し、
客が着席すると、
その腕にヒモをゆわえ、客の幸福を祈る。
そんな客人としての歓待を受けられる
レストランが、普陀区にある。
その名も「?家村」。
席についてしばらくすると、
健康や幸福を祈り、
店員が手に赤いひもを結んでくれるのだ。
そのまま気分よくメニューを
めくっていくと、
日頃見かけない料理が目に飛び込んでくる。
サソリなどの虫料理の盛り合わせ
「昆虫彩?」(398元)や、
徳宏自治州の愛称にもなっている
〝孔雀〟の肉の甘煮「一品孔雀」(88元)など、
怖いもの見たさで注文したくなるものばかりだ。
実際に注文し食べてみると、
サソリはパリパリしていて香ばしく、
孔雀肉はパサパサした鶏のササミのようだが、
甘い醤油ベースの餡と絡み
優しい味わいへと昇華されている。
ほかにも、セロリや大根、パプリカ、
ニンジンなどを使ったタイ族の漬物
「香壇子」(10元)は、
舌がビリビリする辛さで、
食欲をかきたてる前菜としてベストチョイスだ。
また、約15分おきに行われる
ダンスや楽器の演奏はテンポよく、
一緒に踊りだす外国人観光客の姿もチラホラ。
たまには、他の〝客人〟と一緒に、
食後のダンスを楽しむのはいかがだろう?
?
東北部から新疆に移動? ハレの日の飲み物を
遼寧省などの東北部と、
新疆ウイグル自治区の二手に分かれて
暮らしているシベ族。
清代に、東北部から新疆の
辺境の守備のため移動したことに由来する。
元々狩猟民族だったシベ族も、
今は農耕や遊牧を営み、
羊や小麦粉、
野菜をふんだんに利用した
特色ある料理を作り出している。
新疆シベ族の女性が、
2010年夏に開いたシベ族料理店
「錫伯族新疆餐庁」では、
現代風にアレンジされたシベ族料理が味わえる。
シベスタイルの肉じゃが
「錫伯沙士肯」(60元)は、
わらびが大量に入り、
ホクホクのピリ辛じゃがいもや
味が染み込んだ肉に身体が温まる。
そして是非とも味わいたのが、
シベ族が好んで食べる魚料理
「錫伯蕉蒿魚?」(78元)。
ヘルシーな白身魚にかけられた
とろみスープは、
甘いニラが隠し味の、
胡椒の効いたカレーのような味わいで、
「錫伯??(ナン)」(12元)
との相性がバツグンだ。
辛い料理も多いので、
ドリンクには、
ハチミツ入りのまろやかノンアルコールビール
とも言うべき「格瓦奇(クワス)」(25元)を。
新疆に住む少数民族の間で、
伝統的に宴席でよく飲まれるこのドリンクは、
少数民族料理を食べるという、
非日常の〝ハレ〟の場には必須の飲み物と言える。
店内は、シベ族の文化的要素に基づき、
ニューヨークのデザイナーが設計。
灰色のレンガ壁や萱葺き、
ひょうたん型ライト、
木製葡萄棚に加え、
シベ族の民族衣装などの服飾品も飾られる。
今までと違った新疆を体感しよう。
貴州の郷土料理に? 赤い〝地獄池〟スープ
〝少数民族の里〟として知られる貴州省。
人口の4割近くを少数民族が占め、
その中でもミャオ族が最大の人口を誇る。
ミャオ族の豊かな音楽性と
独自の様式を持つ歌舞や多彩な飲食文化は、
今なお貴州の文化形成に影響を与え続けている。
特に食文化では、
「酸湯魚」と呼ばれる酸っぱい魚スープが有名で、
ミャオ族の民族料理という枠を超え、
貴州の郷土料理となっている。
貴州に行かずとも、
上海で真っ赤な「酸湯魚」
を手軽に食べられる店が、
虹梅路にひっそりと佇む。
〝貴州の味〟を意味する名を持つ
「黔味小館」では、
「酸湯烏江魚」(36元)が看板料理だ。
運ばれてきたスープは、
グツグツと泡を立て、まさに地獄池。
だが、見た目とは裏腹に辛さはなく、
スープは「毛辣角」と呼ばれる
酸っぱいトマトなどを発酵させて作ったもので、
爽快な酸味が、食欲を増幅させる。
夏場や病気で食欲のない時に、
うってつけの料理だ。
ほかにも、外はパリパリ、
中は柔らかな揚げナス「秘汁茄扇」(16元)は、
咬む毎にサクサクとした小気味良い音が鳴り、
程よく酸っぱ辛い餡との相性も良く、
白ご飯のお供に注文したい。
店内にミャオ族的な装飾は皆無だが、
若者がひっきりなしに訪れて、
賑やかな笑い声が響き、
お祭りのような活気に溢れる。
お祭り気分でお店に行ってみたい。
上海ジャピオン03月23日号