夏の自由研究

自由研究が自然を愛する第一歩

待ちに待った夏休み! 里帰りや家族旅行に気持ちをワクワクさせている子どもたちも多いはずだ。 と、ここで忘れちゃならないのが、夏の自由研究。長期休暇を利用して、せっかくだから、普段は出来ないような自分だけの体験をしてみよう。そこで今回は、上海大自然野生昆虫館の副装経理・張一民さんに、みんなの大好きな昆虫と自由研究のアドバイスについて話を聞いた。

―中国の小・中学校では、一足先に夏休みに入りましたが、こちらでもやはり、自由研究などをする子どもは多いのでしょうか?

 
夏に入ってから、本館を訪れる家族連れも増えてきました。ただ、中国では、虫を飼って観察日記をつけたり、植物の成長の記録をつけたり、採集したものを標本にしたりするのは、学校の課題というよりも、どちらかというと、子どもの趣味や親の教育方針の一環という要素の方が強くなります。

―標本や資料をメインとした通常の博物館と異なり、こちらでは実際に虫に触れたりできる機会を設けていますね。

 
ええ。生きている動物に直接触れることで、子どもたちの観察力や手先の使い方などの能力を育てることができます。直接目の前で触れる虫は、思いのほか綺麗な色をしているんですよ。デザインなどに関する色彩感覚も鋭くなると思います。

―上海のような都市部で育った子どもたちは、おのずと生きた虫に触れる機会が少なくなると思います。実際の虫を見て恐がったりしませんか?

そんなことはありませんよ(笑)。子どもたちの頭は、大人が考えている以上に、柔軟に出来ているものなんです。
私どもの館では、夏になると、実際に市外の山などへ行って、虫を採集するプログラムを行っています。子どもたちに、虫は何を食べ、どのような環境で生活しているのかを、実際の体験を通じて知ってもらうためです。そのほかにも、例えば、今の期間は、館内でカイコやスズムシの育て方を教えています。食物連鎖やカイコの変態など、本で読んで得た知識は、実践を通して再度理解することで、自分だけの経験として記憶に残ります。

―最後に、ジャピオンを読んでいる子どもたちへひと言。

 
人類は昆虫がいなくなれば滅んでしまいます。その逆に、人類がいなくても昆虫が滅びることはありません。私たちの暮らす地球とはそんな星なのです。虫だけでなく、自然を愛する大人になってください。夏の自由研究が、その小さな第一歩になれば良いですね。

(上海大自然野生昆虫館に関する詳しい情報は下記にて)

(写真右上)昆虫と小動物ショーでは、実際に手に触れることができる

(写真左)うさぎに触れる子どもたち。ショーは、毎日数ステージ開催されている

(人物写真)今回話をしてくれた同館の副装経理・張一民さん。獣医師でもある

ことしの夏休みは科学に触れてみよう!

上海科技館

生物、人体、地理、ロボット、宇宙と、科学に関する広範な展示物を、9・8万平方メートルの敷地内に集めたのが、2001年開館の「上海科技館」だ。館内は、テーマ別に12の展示区画から成っている。一年を通じて様々なイベントも開かれる。ことしの夏は、そんな広い上海科技館を制覇して、科学通になってみよう!

「同館の最大の特徴は、来館者が実際に乗ったり、触れたり、遊んだりすることで、科学を体験できるところ」と説明するのは、同館・プレス・オフィスで働く王雪さん。「開館以来、延べ900万人以上の方が訪れています。年間約200万人という入場者数は、屋内施設として国内でも最大級を誇ります」と補足する。
とりわけ夏休みでもある今のシーズンは、家族連れで訪れる人が多く、それに合わせるように、ことしも様々なイベントを開催している。
7月5日~15日までの約一週間、地下1階の円形ホールで開催されていた「バスフの小さな科学者」では、6歳~12歳までの児童が、実際に紙のリサイクルなどの実験に挑戦した。今後も、「極地探索」と題した展覧会や、「科学小講座と題した科学の不思議を利用したゲーム、昆虫の世界を描いた3D映画など、様々なプログラムを開催する。

同館は昨年、2階と3階のスペースを拡張し、展示スペースの広さも約2倍になった。「2階のロボット展示場と3階の宇宙展示場、人体展示場が、特に子ども達に人気です」と、王さん。
 ロボット展示場では実際に、ロボットとオセロで対戦したり、アーチェリーの勝負をしたりする体験型のアトラクションがある。また、ロボットが奏でる音楽や、劇を鑑賞することもできる。
 宇宙展示場では、ロケットや人工衛星のほか、中国初の有人宇宙飛行を成功させた「神舟5号」などを、模型を使って紹介している。さらに、宇宙飛行士が平衡感覚を訓練するために使われているという球状の器具を体験することもできる。
 人体展示場では、人体模型や生命の神秘を科学的に紹介している。運動能力や発育状態、生理状態を測定するプログラムもある。

ほかには、3D・4Dの映画館や、地理、デザイン、自然環境、情報などの展示場がある。3D・4D映画以外の全てのアトラクションとプログラムは、入場チケットを支払えば、全て無料で参加することができる。
 全ての展示場に共通しているのは、世界の様々な不思議を、科学を介して、子どもでも分かるように、易しく説明しているところだ。
館内の各所にはベンチや軽食の取れる喫茶店があり、売店では飲料水やアイスクリームを売っている。朝から訪れても、丸一日、安心して楽しめるのも魅力だ。
 このほかにも上海には、人民広場の「上海博物館」や延安東路の「上海自然博物館」、「上海城市規劃展示館」、「公安博物館」など、魅力的で個性的な博物館がたくさんある。各館ごとに夏のイベントを予定しているので、ひとつずつ制覇してみよう!

夏のイベント情報

「極致探索―穿越科学時空之旅」
8月3日(木)~10月7日(土)まで、同館地下1階に臨時の展示スペースを設けて、宇宙と時空に関する展示会を開催する。上海科技館とドイツのマックスプランク協会との共同主催。
閲覧は無料。

「科学小講台―会変魔法的風」
夏休み期間中の毎週土・日の2日間、同館1階の公共スペースで、科学の原理を利用した各種ゲームを行う。1日3ステージで1回20~30分。

(写真左上)夏のサマーキャンプでパソコンのネットワークなどを学ぶ子どもたち
(写真右中)体験型のアトラクションは大人から子どもまで楽しめる
(写真左下)緑色で統一された同館2階の自然と地球をテーマにした区画

上海科技館

住所:浦東新区世紀大道2000号
アクセス:2号線「上海科技館」から徒歩すぐ
電話:6862-2000(x3182)
開館:9:00~17:15(月曜定休、16:30以降は入場不可)
チケット:60元(学生45元、1.2m以下の児童・70歳以上20元)
URL:www.sstm.org.cn

夏はやっぱり昆虫だ

上海大自然野生昆虫館

浦東の「上海大自然野生昆虫館」では、生きた昆虫や小動物約400種類を展示している。テーマは〝楽しみながら自然に触れる〟。標本や専門書などを展示する普通の博物館とは一味違う、どちらかといえば、昆虫の動物園といったほうが適切な趣きだ。
来館者の多くはもちろん子ども。とりわけ7月6日(木)~8月31日(木)の18時半~21時半で、夜行性の動物や小動物を観察するために「夜行館」をオープンしている。
館内は昆虫、爬虫類、蝶、蛇、亀、蛙、小動物、人口池、ゲーム、小舞台、ショッピングと、テーマに沿って11の展示区画に分かれている。とりわけ標本室では、カブトムシや蝶、玉虫などの剥製や植物の標本などを売っており、希望者には、剥製の作り方も教えている。

また地下の小舞台では、毎日数ステージ、昆虫や小動物に触れることができるショーを開催している。山へ虫取りに行く前に、こちらで虫に慣れておくのもひとつの手だ!

△館内の人口池ではしゃぎながら魚を捕まえる子どもたち。

上海大自然野生昆虫館

住所:浦東新区豊和路1号
アクセス:2号線「陸家嘴」から徒歩5分
電話:5840-0757
開館:9:00~17:00
チケット:35元(高校生以下20元、0.8m以下の児童無料、70歳以上20元、「夜行館」も同料金)
URL:www.shinsect.com

ワクワクの理科実験教室

東進上海スクール

幼児から高校生までを対象とした日系教育機関「東進上海スクール」では、通常の難関中・高受験指導や学校の先取り学習などのほか、毎月1回、理科実験教室「ガリレイクラブ」を開講している。参加対象は小学生。身近な素材、本格的な器具を使いながら、「なぜ?」という疑問を発見、感動に変えることがテーマだ。
「できるだけ子どもたちに驚きを与え、好奇心を刺激するようなプログラムにしたい」と、話すのは同スクールの根本健二先生。例えば、7月7日の同クラブでは、「砂糖と水でフィルムケースが浮き沈み!?」と「白黒模様が色になる不思議なコマ」の題材で、実際に目で見て、手で触れることのできる、生きた知識を伝えた。

△実験の後に、手作りのさくらんぼ飴を作る子どもたち

東進上海スクール

住所:虹橋路1829弄10号(美林閣横入)
電話:6270-0477
日時:毎月1回土曜日に開講(9:00~12:00)
参加費:200元(バス送迎あり)
URL:www.et-toshin.co.jp

カブトムシを飼おう!

子どもと交わした小さな約束から、実際に自ら武漢まで足を運びカブトムシを捕まえているという井上隆生さんは、「虫を飼うことは、子どもの観察力や生命の大切さを育てることに繋がる」と説明する。日本と違い上海では、夏休みに虫を飼ったり植物を育てることが、簡単にはできない。「子どもたちには、普通の勉強とは違う、いわゆる雑学のようなものも教えたい」と、井上さん。
実際にカブトムシを飼育する過程で、子どもたちは多くのことを学ぶ。夏の終わりに卵からかえった幼虫は、秋から春にかけてどんどん大きくなる。5~6月にさなぎになり、夏の訪れとともにたくましい黒い鎧と角を持った成虫へと姿を変える。そして、お盆を前に、その短い一生を終える。その間、子どもは、虫かごを掃除したりエサを与えたり、霧吹きで湿度を一定に保ったりしながら、飼育と観察を通じて、生き物の誕生と死を、身近に感じるようになる。
カブトムシを飼いたい人には、オス・メス一対のカブトムシと虫かご、カブトムシの飼い方に関する簡単な説明書などのセットを80元で販売している。送料は別途。お問い合わせは大山さん(139・1775・7424)まで。

~上海ジャピオン7月28日発行号より

最新号のデジタル版はこちらから




PAGE TOP